ザ・ローリング・ストーンズ/ライヴ・アルバムの歴史

2017.11.22 TOPICS

『オン・エア』発売記念企画
ザ・ローリング・ストーンズ/ライヴ・アルバムの歴史

 
1963年6月7日、英デッカ・レコードよりチャック・ベリーのカヴァー曲、「カム・オン」でデビューしたザ・ローリング・ストーンズ。それから54年を経た2017年の今、メンバー全員が齢70歳を超えたわけだが、いまだにライヴ活動を続けている。ここまで活動を続けられること自体まさに驚嘆に値するが、こうしたエネルギーを支えているのは、やはり彼ら自身がライヴ演奏、そしてライヴの場が好きだということが挙げられるだろう。
 かつて(そして今でも)「世界最高のロックンロール・バンド」と称された彼らは、ライヴ活動で実力を付けてきたわけで、そして今なおライヴ活動に対する情熱は失われていない、ということなのである。
 こうした彼らの50年以上にわたる功績を知るために、オリジナル・アルバムを聴くことはもちろん重要なことだが、彼らの原点を探る上でもライヴ・アルバムにも注目していくべきだろう。
 彼らが正式にリリースしたライヴ・アルバムは、全部で10枚(1枚はEP盤)である。この他に配信のみでリリースされた作品や、「From The Vault」シリーズのようにアーカイヴから発掘した映像作品もあり、意外と彼らのライヴ作品に触れる機会も増えている印象である。なお、本稿ではスペースの都合もあるため、正式にリリースされたライヴ・アルバムについて言及し、補足として発掘作品の一部に触れることで、彼らのライヴの魅力に迫っていきたいと思う。

テキスト:藤井貴之


1.『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット!』EP盤 1965年発売

 彼らが最初にリリースしたライヴ盤は、英国で65年6月にリリースされたEP盤『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット!』である。メドレーを含む5曲が収録されたこのEP盤はたった10分足らずの作品だが、彼らの初期のエネルギーを最もダイレクトに感じることが出来る好盤だった。このEP盤に収録された音源は65年3月の英国ツアーで録音されたもの。オリジナル曲は一切含まれていないが、観客を熱狂の坩堝に巻き込むこの迫力は後のライヴ・アルバムには感じられないもので、ストーンズ・ファンは必聴である。またこの後のストーンズのライヴ作品では定番となっている、スタジオにおけるオーヴァーダビングなどは一切されておらず、純生ライヴが楽しめる作品である。

2.『チャーリー・イズ・マイ・ダーリン』2012年発売(収録は1965年)

65年秋のアイルランド・ツアーを収録した映画『チャーリー・イズ・マイ・ダーリン』は、当時ライヴ盤としてはリリースされなかったが、2012年に映像とともに正式にリリースされた。そのスーパー・デラックス・エディションには、サウンド・トラックCDと『ライヴイン・イングランド’65』と題されたCDが入っており、
前者には6曲のライヴ・テイク、後者は11曲の純生ライヴが収録されており、当時の熱狂的なライヴを体験するには外せない。

3.『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット!』 1966年発売

 66年秋の英国ツアーでの音源を主体にしたライヴ盤が、66年11月に米国のみでリリースされた先の英国盤EPと同タイトルの『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウィント・イット!』である。当初このアルバムは66年9月23日、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでの録音と宣伝されたが、後のリサーチでこの日の録音は収録されておらず、66年秋の別の会場での録音や、さらには65年の英国ツアーでの録音が含まれていることが判明した。その上スタジオ録音に歓声を被せた“疑似”ライヴ音源までが含まれているのだ。この作品をさらにミステリアスにしているのは、CD化に際してアナログ盤では使われなかったマスターが使われていることだ。オリジナルのアナログ盤ではステレオ盤とモノラル盤でマスターが異なっていた上、さらにCDで異なるマスターが使われたため、3種類もの同じ名前のアルバムが存在することになり、後のストーンズ研究者の頭を大いに悩ませることとなった。ちなみにオリジナル・アナログ・マスターでのCD化は現在もされていないため、入手が困難となっており、CD化が待たれるところである。

4.『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト!』1970年発売

 続いてリリースされたライヴ・アルバムは、69年11月にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで収録された録音を中心とした『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト!』だ(ちなみに4曲目の「むなしき愛」のみボルティモアでの録音)。このアルバムはブライアン・ジョーンズに代わり、ミック・テイラーが参加した初の米国ツアーを収録したもので、生まれ変わったストーンズの生の迫力をうまく捉えている。これに先立つこと4か月前にロンドンのハイド・パークで行なわれた、ミック・テイラーのお披露目、そしてブライアン・ジョーンズの追悼となったコンサート(英国のテレビ局によって収録され、映像作品としてまとめられている。コンサート記録ではなく、ドキュメンタリーの側面が強い作品である)ではそのアンサンブルに不安定さが見られたが、このアルバムに於ける演奏はその点が見事に解消され、さらなる昇華を感じさせる。なお09年には40周年記念盤がリリースされ、本アルバムに収録されなかった5曲が陽の目を見た。

5.『ロックン・ロール・サーカス』

『ゲット・ヤー・ヤズ・アウト』に収録された69年の全米ツアーに先立つこと約1年前の68年12月に、ミック・ジャガーの発案によりTVショー『ザ・ローリング・ストーンズ・ロックンロール・サーカス』が収録された。当時は結局お蔵入りし、放送もされなかったが、収録から28年後の96年にDVDとCDでリリースされている。ストーンズは5曲を生演奏しており、ブライアン・ジョーンズ在籍時のカラー映像は大変貴重なもの。しかし残念ながらストーンズの演奏の方は生彩を欠いている印象で、これがミックがお蔵入りにした理由だという。収録が1日で行われており、ストーンズの演奏場面の収録が夜中になったこともあって、メンバーが疲れていたようだ。ここに収録された「無情の世界」は発表の1年前の演奏ということで完成前のヴァージョンで、ブリッジ部分がない。

6.『レディース&ジェントルメン』

72年の米国ツアーを収録した映画『レディース&ジェントルメン』は2010年に映像のリリースが実現し、今ではCDも単独でリリースされており、容易に入手が可能になった。演奏の乱れなどもそのまま収録されており、オーヴァーダビングはされていないようだ。また73年秋のヨーロッパ・ツアーで録音された『ブリュッセル・アフェア』も11年に配信リリースされた。この2つのライヴ音源はミック・テイラー在籍時という絶頂期のライヴを体現出来るものとして、ファンなら是非とも押さえておきたい音源である。

7.『ライヴ・ユー・ライヴ』

 公式にリリースされた次のライヴ・アルバムは77年9月にリリースされた『ラヴ・ユー・ライヴ』で、75年と76年のツアーでライヴ収録された音源から構成されたものだった。75年の米国ツアーはロン・ウッドが初めて参加したもの(当時のロン・ウッドは正式メンバーではなく、ミック・テイラーの脱退に伴うサポート・メンバーの扱いだった)で、ミック・テイラー在籍時とは一味違った、ユルいグルーヴが体現出来る。

8.『女たち – ライヴ・イン・テキサス ‘78』

78年の米国ツアーの音源は当初ライヴ・アルバムを作る目的で録音されたが、当時はリリースされず、2011年になって映像とともに『女たち―ライヴ・イン・テキサス’78』としてリリースされた。こちらは今年になって単独CDとしてもリリースされている。映像版と比較すると、CDの方は曲間のカットなどが行なわれているようだが、パンキッシュでタイトなストーンズ・サウンドが堪能出来るアルバムだ。

9.『スティル・ライフ』

 81年の全米ツアーを収録したアルバム『スティル・ライフ』は、82年6月のリリース。この年のツアーはこれまでにない大規模なもので、大きなスタジアムでのコンサートも増え、演奏自体も2時間を超えるようになるなどツアー自体が巨大化した。しかし本アルバムはそのコンサートを40分ほどにコンパクトにまとめており、かえって非常に中身の濃いアルバムとなったのである。ファンなら映画『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』も必見だ。

10.『フラッシュポイント』

 86年のアルバム『ダーティ・ワーク』ではツアーに出なかったストーンズだが、89年の『スティール・ホイールズ』発売に合わせた米国ツアーで、7年振りにステージに復帰した。ミックとキースの不仲説が流れた後だけにファンは感激に涙したが、その後の90年2月には初めて日本の土を踏み、この日本で録音された曲も収録されたライヴ・アルバム『フラッシュポイント』が91年4月にリリースされた。スタジオ録音の新曲2曲も収録されたこのアルバムは初来日の感動も新たにしてくれた。

11.『ストリップト』

 94年リリースの『ヴードゥー・ラウンジ』に伴うツアーの成果として、95年11月にリリースされたのが『ストリップト』だ。このアルバムは、ヴードゥー・ラウンジ・ツアーでのライヴ録音と、ツアーの間に訪れた東京(当時赤坂にあった東芝EMIのスタジオ)やリスボンのスタジオでの録音を交えた少々変則的なアルバムだった。当時は「ストーンズ初のアンプラグド作品」などと宣伝されたが、それはスタジオ録音曲に限ったことだった。しかしながらスタジオ内でリラックスした雰囲気で一発録りされたアンプラグドの演奏はそれなりに新鮮で、企画としては成功したアルバムだったといえよう。

12.『ノー・セキュリティ』

97年、アルバム『ブリッジズ・トゥ・バビロン』リリースに合わせたツアーからは、『ノー・セキュリティ』がリリースされた。本アルバムの特徴はヒット曲を外し、隠れた名曲にスポットを当てた作品、ということだ。したがって聴きようによっては地味だが、渋めの選曲がコアなファンにはたまらないアルバムだったといえる。なおこのアルバムは現時点で再リリースされていない。

13.『ライヴ・リックス』

 02年からの全国ツアーで収録された音源をまとめたのが『ライヴ・リックス』で、2004年11月のリリース。ヒット曲とレア曲のバランスをうまく取ってCD2枚組に収録している。ただ一つのコンサートを疑似体験できるような編集はなされておらず、全体を通して聴くと若干散漫な印象だが、レア曲の収録が歓迎された作品だった。

14.『シャイン・ア・ライト』

 08年にリリースされた『シャイン・ア・ライト』は、マーティン・スコセッシ監督の映画作品のサウンドトラック盤としてリリースされたアルバム。収録は06年10月29日と11月1日にニューヨークのビーコン・シアターで行なわれている。ストーンズのライヴ・アルバムとしては初めて1枚ものと2枚組の2種類の形態でリリースされた(ただし日本では2枚組のみのリリース)。日本盤はボーナスとして配信のみでリリースされた「Undercover Of The Night」を収録しており、買い求めるならば日本盤を手に入れたい。