BIOGRAPHY

Semi Precious Weapons / セミ・プレシャス・ウェポンズ


Bio レディー・ガガ に恐れ入る前に、サポート・アクトのセミ・プレシャス・ウェポンズについて少々。
 酔っ払って投げやりになったルーファス・ウェインライトが、ニューヨーク・ドールズのトリビュート・バンドを作るぞ、と決めたとしよう。ところが、酒に頭をやられた彼が採用したのは、空中ブランコで猥褻行為をはたらいてサーカスをクビになったばかりの3人の曲芸師だった・・・と想像してみてほしい。さらに詳しく言えば、シンガーのジャスティン・トランターはウェイン・カウンティの不義の息子・・・あるいは娘かも・・・を思わせる。みだらな言葉使い、ステキに下品なユーモア感覚、最高にイカレた楽曲(”シャンペンでネバネバ!でもOK!今日は彼女の誕生日!”)。一方、その背後で転げまわるバンドは、魅惑のグラムに忘我の境地だ。ベーシストは、逆立ちしてTの字を引っくり返したような姿にならなくとも、その楽器を弾く方法がいくつもあることを、まだ知らない。ギタリストはシンバル飛びという、ありもしないオリンピック競技に向けて練習しているかのよう。ドラマーは単純に異常。
 断っておくが、ここは02アリーナだ。それも、普通のポップ・ショウを観るつもりで、数千人の親子連れが集まった土曜の夜である。トランターが開口一番、「家賃も払えないけど、ボクってファックなくらいゴージャス!」と言い放った時は、仰天してホットドッグを喉に詰まらす音が会場中から聞こえてきそうだった。
 セミ・プレシャス・ウェポンズとはよくいったもので、彼らはバンドというより過激な漫画のような爆発物に近い。彼らの演奏が終る頃には、12歳未満の子供の大半が、「ママぁ、マザーファッカーって何ぃ?」と聞かれて応えられずにイラついた親たちの手でメイン・アリーナから引っ張り出されていたに違いない。そんな連中が公共の場に、あそこまで大々的に放置されているとは、正に破壊的天才の閃きの賜物であり、我々はガガその人に感謝すべきだ。
 トランターとガガは旧友で、初めて共演したのは2006年のニューヨーク。客は12人だった。「だから、ありがとう」と、トランターは02の観客に向かって言った、「ファッキンな12人より大勢いてくれて」。かの女帝がモンスター・ボールの前座をセミ・プレシャス・ウェポンズにこだわったという事実が、根本的な真実を裏付けている。外見はキンキラで、踊る阿呆なポップに浮かれているようでも、レディー・ガガの核心は純然たるパンク・ロックである。モンスター・ボールのテーマは団結の呼びかけだ。奇人も変人も不満分子も、みんなひとつになって「解放」を祝おう、と。ガガも話していたが、突き抜けた変わり者には行き場がない。「みんながドアに鍵をかけちゃってるからよ!」 ディスコのキンキン・ギラギラに隠れたガガ王国は、スミス王国とそっくり同じ。はみ出し者たちが手を携えて得た勝利なのだ。