教えてポール!『ポール・イズ・ライヴ』

 
6月28日、ポール・マッカートニーの公式サイト”PaulMcCartney.com”の「教えてポール!」で再発を発表したライヴ盤の中から『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』、『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』に続き、『ポール・イズ・ライヴ』について、ポール自身が質問に答えた内容を翻訳して紹介します!

▼PaulMcCartney.com掲載ページ(英文)
https://www.paulmccartney.com/news-blogs/news/you-gave-me-the-answer-paul-is-live
 

我々は多くの時間をインターネットに割いてます。実際、ネットサーフィンに数多くの時間を費やすことが我々の仕事だとも言えるのです! その中で、時折面白い説や噂話などに触れて、このような話はいったいどのようにして“流行”するのだろうかと思うこともあります。そして、そのような陰謀説の一つに、“ポールが本当のポールではない!”という噂があります。彼は1960年代に亡くなっていて、ビートルズでは替え玉がやっていたという説です。仕事によっては、技術を要するものの、他の人に交代可能なものもあります、例えば、会社でのお茶汲み当番のような! でも、安易に代わることの出来ない仕事もあるのです。音楽の歴史の中で最も成功したソングライターチームの片割れになるということなどはそのいい例でしょう。

ポールは現在行なっているアメリカでの〈Freshen Up Tour〉に合わせて7月にライヴ・アルバムをリイシューします。我々はすでに、『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』と『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』についてポールに話を聞きました。そして今回は『ポール・イズ・ライヴ』についてです。

1993年のアルバム『オフ・ザ・グラウンド』を提げたアメリカおよびオーストラリアのツアー中に録音した音源で作られた『ポール・イズ・ライヴ』は、ポールの5枚目のライヴ・アルバムです。ツアーと同年にリリースされたこのアルバムは、この“ポールは死んだ”という噂話を逆手に取って、タイトル、そしてアルバムのジャケット写真などにいくつかのヒントを入れた、様々な意味で有名なアルバムとなりました。今月の「教えてポール!」では、ついにあの噂について本人を直撃しました。 


〈The New World Tour〉について、一番印象に残っていることは何ですか?

あれは、大きなワールド・ツアーだったね。観客の数も多かったし、バンド編成もとても良かった! ツアーは楽しかったし、他の人たちも皆、楽しんでいたと思うな! 当時は、あとで聴き返したときに特に素晴らしいコンサートがあれば、そこからの音源を使おうという気持ちで、とにかくなるべく多くの場所でライヴを録音していた。例えば、コロラド州のボルダーでの演奏がその例だ。ここでの音源をたくさん使ったよ。それにニューヨークのコンサートも特に良かったし! そのように、ツアー中の音源から最高のテイクを選んだんだ。

ツアー全体を記録しておこうという考えだったのですか?

基本的には、それぞれの曲で一番出来のいいものを選ぼうとしたんだ。レコーディングという意味でも、観客のリアクションという意味でもね。わかるだろう、ある晩、その曲をやって、翌日も同じ曲をやったとしても、前日よりも出来が良くない場合だってあるよね。だから、一番うまく出来た日のものを選びたかった。

タイトルですが……。“例の”噂について話していただくことは出来ますか?

ああ、『ポール・イズ・ライヴ』ね。だからこそ、わざわざアビイ・ロードをうちの犬と一緒に渡っているアルバム・ジャケットにしたんだ。あの噂を広めた主はアメリカ人のDJだった。オリジナルのアビイ・ロードを渡っている写真で、僕だけが裸足だったことからなんだ。裸足だった理由は、あまりに暑かったからだったんだけどね。僕は撮影時にサンダルを履いていたんだけれど、いくつかのショットだけ、サンダルを脱いで撮影した。そうしたら、サンダルを履いていない写真がジャケットに使われたんだ。そして当時は皆が“どうして、彼だけ一人裸足なんだ?”と騒いだ。僕だったら、“きっと暑かったから、サンダルを脱いじゃったんだろ!”と言うところだけどね。でも一部の人たちは、昔のマフィアでは裸足は……というように深読みしたんだ!

そして、ここでも[アルバム・ジャケットの車を指差して]ちょっと皮肉っていますよね。オリジナルの『アビイ・ロード』では、ナンバー・プレートが“28 IF”でしたが、こちらでは車のナンバーを“51 IS”にしています。

当時はあのナンバーを“彼がもし[IF]生きていたら28歳になる!”と読んで、“だから彼は死んでしまったんだ!”って言われていたからね。

『アビイ・ロード』が発売されたときにあなたはまだ27歳だったんですよね! 当時から死亡説が出たのは知っていましたか?

噂話はすべて知っていたよ。それについて聞かれたからね! 誰かが電話してきて“君は死んでいるのか?”と尋ねる。僕が“いや、今、電話で話しているじゃないか”と言うと“でも君が本物かどうかはわからないし”と相手は言う。そういうことで自分でも少し混乱したよ。“自分が自分であることをどうやって証明すればいいんだ?!”とね。しばらくしたら、“この僕のそっくりさんは、かなりまともな曲を書いているじゃないか。本人じゃなければ、どうやって彼に曲の作り方を教えたんだろう?”と思うようになったよ。

実際にはウィリアム・キャンベルか、ビリー・シアーズが替え玉ではないかと言われていましたね。今でも“Fake Paul[偽ポール]”からの造語の#Faulというような様々なハッシュタグがオンラインに存在しています。

皆、ドラッグのやりすぎさ! きっとドラッグをやりすぎて、答えを求めて間違った場所を探しているんだ!

このアルバム・カヴァーは、そのような噂をあざ笑うような意味があったのですか?

いやいや、あざ笑うつもりはまったくなかった。あの噂をネタにしただけ。ライヴのアルバムを出そうと思ってタイトルを考えていたら、通常は“ポール・マッカトニー・ライヴ”となる。そしてそこで“ポール・マッカートニーは死んだ?![Paul McCartney is dead]”という噂を思い出して、じゃあ、元々噂として言われていた“Paul is dead”[ポールは死んだ]”というフレーズをもじって“Paul is Live”[ポールのライヴ、ポールは生きている]としたら面白いと思ったんだ。僕の人生は、とにかく何でも楽しくやろうよ、がモットーだからね。それでないとやっていることに飽きてしまうから。音楽については素晴らしすぎて、まったく飽きることはないけれどね!ただひたすら音楽を大量生産し続けている人もたくさんいるけれど、僕は“音楽があるから人生がより良くなっている”と思っている。だからいつも同じようなものをひたすら量産しているわけではない。同じような曲をプレイしているかもしれないけれど、常にその中に新たな楽しみを見出そうとしているんだ。曲の中に新たな要素を再発見しようとしている。今でも曲から学ぶことがあるし。“ああ、こういうことが出来るんだとか、こうしてみよう”とか、いろいろと工夫している。

演奏するときに少し変更を加えたりもしているのですか? 曲を違う観点から捉えたりすることもありますか?

うん、意識しなくても、結果的に変わっていっているね。自然と変化している。リマスタリングの確認のためにこのアルバムの曲を聴いて、そう感じたよ。例えば「レット・ミー・ロール・イット」にしても、今の弾き方とは若干違っている。大きく違うわけではないけれどね。でも今はプレイの仕方を変えている。「レディ・マドンナ」も今は、少し違っているね。

『ポール・イズ・ライヴ』の方がテンポが早いですね。

そうなんだよ! このヴァージョンはかなり早いよね。それはそれでいい感じだね。今の方がオリジナルのテンポに近いな。


我々は、ポールが今でも自分の曲を新たに、そして楽しい方法で演奏するために色々と学んでいるという発言を興味深く感じました。そういう彼に敬意を表して乾杯したい気持ちです。人生を楽しく過ごそうと思う気持ち以上に楽しいことはないはずですから!

『ポール・イズ・ライヴ』は、アビイ・ロード・スタジオで新たにリマスターされました。本アルバムはCD、2枚組180gのブラック・ヴィニール盤、そして限定版のカラー・ヴィニール盤(LP1はベイビー・ブルー、LP2はピーチ・ホワイト)で発売予定です。

 
40年に亘るポールのライヴ・アルバム『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』、『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』、『ポール・イズ・ライヴ〜ニュー・ワールド・ツアー・ライヴ!!』、『アメーバ・ギグ』


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