教えてポール!『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』 

 
6月13日、ポール・マッカートニーの公式サイト”PaulMcCartney.com”の「教えてポール!」で再発を発表したライヴ盤の中から『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』に続き『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』について、ポール自身が質問に答えた内容を翻訳して紹介します!

▼PaulMcCartney.com掲載ページ(英文)

https://www.paulmccartney.com/news-blogs/news/you-gave-me-the-answer-choba-b-cccp

 

ポールの〈Freshen Up Tour〉のアメリカ上陸に合わせて、彼は先月、『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』、『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』、『ポール・イズ・ライヴ 〜ニュー・ワールド・ツアー・ライヴ!!~』、そして『アメーバ・ギグ』の4枚のライヴ・アルバムのリイシューを発表しました。これらのアルバムは7月12日に再び店頭に並びます。先月は、『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』についてポールに話を聞きました。本日は、彼が今までにリリースしたアルバムの中でも少し風変わりな 『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』 について質問しました。時には“ロシアン・アルバム”と呼ばれるこのアルバムには発売にまつわる面白い逸話がありました。 


PaulMcCartney.com :どうしてロシア人のファンのためだけにアルバムを作ろうと思ったのか、その理由は覚えていますか? 

ポール:うん、最初はロックンロールのアルバムを作ろうとだけ思っていた。ロックンロールは前からずっと好きだったし、そういうアルバムを作りたかったんだ。今朝、ここにくる前にうちのジュークボックスの曲を聴いてきた。その中には、昔のロックンロール曲がたくさん入っているんだよ。 

今、そういう音楽を聴いていても、あっという間に10代の頃に戻ったように感じる。すごいよね。リンゴが加入する前、ジョンやジョージと一緒にそういうレコードを聴いていた頃を思い出すんだ。今、懐かしく思いながら聴いていると、昔とはまったく違う観点で曲を捉えていることに気づく。今では自分もレコードを作る側だからね。これらの曲がかなり荒削りだということに気づく。曲がクールな意味で、ラフに仕上がっているんだ。悪い意味で荒削りではなくて、素晴らしいという意味でラフなんだ。逆に、そういうのを狙って作るのは難しい。でも当時レコードを作っていた人たちにとっては、あれが当時のベストだった。そして僕たちはそういうのが大好きだった。そしてそのような曲を聴きながら、僕たちの音楽の好みが形成されていったわけ。今朝聴いたのは、チャック・ベリーの「スウィート・リトル・シックスティーン」や「メイベリーン」、エディ・コクランの「トゥエンティ・フライト・ロック」、リトル・リチャードの「キープ・ア・ノッキン」などの曲。あと、ザ・コースターズの「サーチン」とかも! 初期の頃、僕たちはこういう曲をライヴでたくさん演奏していたんだ。 

そして、この“ロシアン・アルバム”を作ろうと思った当時の話になるけれど、これらの曲に敬意を評して、楽しく演奏したかった。こういう曲が大好きだったから。だから“じゃあ、やろう”となったわけ。当時はレギュラーのバンドがなかったから、何人か人を集めてやろうと思った。うまい人たちを集めて、楽しみながらこういう曲を演奏しようと思った。リハーサルはほんの少しに留めて、とにかく録音する。一曲にあまり時間をかけずにどんどんと演奏した。 

こうして録音が終わった後で、“さてこれをどうしよう? どうやってリリースしよう?”ということになった。通常だといつものレコード会社から普通にリリースされることになるけれど、何かいつもと違うことがやりたかったんだ。僕はよくそう考えるんだ! その方が面白いし、子供の頃こういう曲を聴いて楽しかったことを思い出して、楽しみたいと思って演奏したわけだしね。子供の頃は楽しいだけで済んだ。でも時が経ち仕事をするようになると、僕たちみたいによっぽど幸運でない限り、普通はつまらない仕事に従事しなければならない。そして、ご存知のように、僕は何をするにも楽しみを見出したいと思う方だからね。だからキャンペーンをやっていても“何か馬鹿げたことをやろうよ! じゃあ、屋根の上でやろうか! とか、どこかに行ってみようか!”とか提案しちゃう。だから普通のことをやるのはつまらないと思ったんだ。 

そしてこのアルバムに関しては“じゃあ、ロシアで作ってみたらどうだろう?”と思った。最高に面白いアイデアだと思った。というのは、そのままだったら自然とイギリス、アメリカ、ヨーロッパとかでリリースされて、ロシアのファンの人たちは、他のビートルズのアルバム同様に、輸入盤を手に入れなければならない。だから、それを逆にしてみたらどうだろうと考えた。国有企業のレコード会社であるメロディアで作ったらいいんじゃないかって。なんかロシア人が僕たちのレコードを作るって、最高に素晴らしいアイデアだと思えたんだ!そして当時のマネージャーがメロディアに連絡して“ポール・マッカートニーが、一緒にやりたいと言ってますが……!”と話を持ちかけた。 

PM.com:メロディアのレコードがコレクションにあったのですか? それともどこかでメロディアのことを聞いて知っていた? 

ポール:ううん、確か聞いたことがあったんだと思う。ロシアにはこういうレコード会社があるって。だからちょうどいいと思った! つまりそうすることによって、他の人たちが皆、ロシアから輸入しないとならなくなる。最高に馬鹿げたアイデアだと思った! 

PM.com:本当に逆転させたのですね……

ポール:そう、まさに逆転! 今度はロシアのファンが輸入するのではなく、アメリカ人やイギリス人など西洋の人たちが輸入しないといけなくなった。ある意味、皮肉な感じだろ! 

PM.com:とても楽しいアイデアですね! 

ポール:うん、なんとかやり遂げたよ! これがチャートの1位になるようなものではないとはわかっていたけれど、コレクションになるとは思っていた。“これ聴いた?”という具合に口コミで広がるだろうと思っていたんだ。ロシア国内だけでリリースされたクレージーなアルバム。まあ、こういういきさつで実現したんだ! 


ちょっとしたクイズです。“Choba B CCCP”は、“バック・イン・ザ・U.S.S.R.”のロシア語です。(もしすでにご存知なら、グリフィンドールに10点!)。このアルバム『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』は、初期のロシア国内盤以降、他の地域でも改めてリリースされました。しかし、楽しもうという精神のポールは、今回、オリジナル・ヴァージョンでのリイシューを決めました。ロシア語の文章を校正するのは、なかなか楽しい作業でしたよ! 
 
『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』、『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』、『ポール・イズ・ライヴ〜ニュー・ワールド・ツアー・ライヴ!!』、『アメーバ・ギグ』


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