ニューヨーク在住のライター、中村明美さんによる5月5日(火)実施のザ・ローリング・ストーンズ/ニューアルバム発表イベントのレポート

Photo by Akemi Nakamura
25作目となる最新アルバム『フォーリン・タングス』を7月10日にリリースすると発表したザ・ローリング・ストーンズが、その当日、NYブルックリンのウィリアムズバーグ地区にある歴史的建造物ウェリンでリリース発表イベントを開催した。会場にはレオナルド・ディカプリオやバズ・ラーマン監督などセレブも駆けつけ、今作のプロデューサーであるアンドリュー・ワット、ジャケットを手がけたアーティストのナサニエル・メアリー・クイン、さらに世界中から集まったメディア関係者も参加する特別な日となった。

Photo by Akemi Nakamura
まず上映されたのは、アルバム制作の過程を記録した映像。決して広いとは言えない空間にメンバーたちが集まり、笑い合いながら演奏し、肩を寄せ合うようにレコーディングを進めていく様子が映し出される。巨大なロック・バンドというより、まるで長年一緒に音を鳴らし続けてきた仲間たちの“現在形”を覗き見るような親密さがあり、その空気感からは、今作が単なるレジェンドの新作ではなく、いまなおバンドとして生き続ける彼らの姿そのものから生まれた作品であることが伝わってきた。
続いて、大歓声の中、メンバー3人が登場。Q&Aが行われ、今作についてさまざまな言葉を残した。
すでに60年以上のキャリアがありながら、なお前進し続ける姿勢について、キース・リチャーズはこう語っていた。
「俺たちは、ただ座って“前にやったこと”について話していたいわけじゃないんだよ。『まだこの先に何かあるはずだ』って思うから、こうしてやり続ける。それが俺たちのやり方なんだ。とにかく俺たちは“作り上げる”ことが好きなんだよ。心からね。それに、いつだって“もう一歩先”があると思ってる」
さらにロン・ウッドは、「もし誰かが曲を持ってきたら、俺は挑戦するのが大好きなんだよ。今回のアルバム全体の空気感も、まさにそこなんだ。“もっとハードルを上げよう”っていう挑戦の感覚だね」と語った。
また、ミック・ジャガーがいかにして今なお広い音域のボーカルを最高の状態で保っているのか聞かれると、「まあ、1968年にたくさんドラッグをやってたからね。その効果が出るまでこれだけ時間がかかったってことさ(笑)」と冗談を飛ばした後、「秘訣は練習だと思う。ちゃんと練習し続けなきゃいけない」と真面目な表情で続けた。
キースはリフについて、「リフは向こうからやってくるものなんだ」と説明する。
「アイデアの断片みたいなものはいくらでも頭にあるんだけど、“リフ”そのものはないんだ。ああいうのは向こうから降ってくるものだからね。無理やり作ろうとしてもダメなんだよ」
ロニーは、ギターの関係性についてこう語った。
「幸運だったのは、俺がオープンEを弾いて、キースがオープンGを弾く、そういう“余白”みたいな空間を作れたことだね。ちょうどその中間に、俺たちだけの居場所みたいなものがあるんだ。俺たちはそれを“古代の織物”みたいな演奏って呼んでる。時には、お互い別々の海を渡ってるみたいに交差したりもするしね」
14曲収録された今作について、ミックはこう続けた。
「今回のレコードで面白いと思うのは、ストーンズがやってきたことそのものなんだ。“もう証明するものなんてない”って言われるかもしれない。でも、ストーンズってロックバンドでありながら、バラードも、カントリーも、ダンスミュージックもできる。つまり、あらゆるスタイルを横断してるんだよね。だから、ひとつのスタイルに閉じこもっていない。長い年月の中で、俺たちは本当にいろんな音楽を愛してきた。そして今でも、あらゆる音楽が好きなんだ。その感覚が、そのままレコーディングのやり方や、書く曲に表れているんだよ。
まだこの先に、もっと何かが残っている可能性は十分ある。俺たちはずっとそれを探してる。だから探し続けなきゃいけないし、やり続けなきゃいけない。本当にそうなんだ」
4週間という短い期間、狭いスタジオで行われたレコーディングについて、ミックはこう振り返る。
「前にもそのスタジオでは作業したことがあって、昔から馴染みの場所だったんだけど、かなり小さいんだ。だから全員が視界に入る。目を動かせば、そこにみんながいる。スティーヴ(・ジョーダン)も、キースも、ロニーも、部屋の全員がすぐ見える。誰が何をやってるかも、何を考えてるかも、全部すぐ分かるんだよ。“これをやりたい”“次はあれだ”っていう流れも自然に見えてくる。だから、その部屋は本当にうまく機能した。音も雰囲気もすごく良かった」
さらに、今作に独特の切迫感がある理由の一つは、レコーディング期間の短さにあると語る。
「4週間しかなかったから、自然と切迫感が生まれたんだ。スタジオでは大抵楽しくやってるけど、一方でかなり集中力も必要になる。曲の5分間を、本当に意味のあるものにしなきゃいけないからね」
また、ポール・マッカートニーやザ・キュアのロバート・スミスなど豪華コラボレーターとの経緯についても明かされた。
ミックはポール・マッカートニーについて、「前作の時にポールとセッションをやったんだよ。その時の録音が今回の曲になった。今回のアルバムにはロンドンで録った10曲があって、残り4曲は以前のセッションから来てるんだ」と説明。するとロニーが、「そうそう。彼は本当に俺たちと一緒に演奏したかったんだよ。“これで俺もローリング・ストーンズと演奏したって言えるぞ”ってね(笑)」と冗談を飛ばし、会場を笑わせた。
また、ロバート・スミスとは、ミックが偶然スタジオで遭遇したという。
「ある日ロンドンで、自分のボーカル録りをしにスタジオへ行ったら、背中を向けて立ってる男がいたんだ。長いガウンを着ててね。振り返ったら、口紅だらけだった(笑)。
俺たち、それまで会ったことがなかったんだよ。だから俺が『君がザ・キュアのロバート・スミスか?』って聞いたら、『そう、でも会うのは初めてだね』って。それで俺が、『せっかくここに来たんだから、何かやった方がいいだろ』って言ったんだ(笑)。
コラボって、時々そんな感じで始まるんだよ。それでバック・ボーカルで歌ってもらった」
ロニーは、「でも才能ある人たちが加わると、全部を溶かし合わせてくれるんだよ。スティーヴ・ウィンウッドもそうだ!」と付け加えた。
また、チャーリー・ワッツが演奏した曲が収録されていることについて、ミックはこう語る。
「あれはLAでチャーリーと一緒に録ったんだ。“Hit Me in the Head”っていう、すごく速いパンクロックの曲だよ。チャーリーって、ああいう超高速の曲でも本当に素晴らしい演奏をするんだ。前のアルバムにもチャーリー参加曲があったけど、今回も1曲入ってるんだよ」
さらに、現在ドラムを務めるスティーヴ・ジョーダンについては、愛情とユーモアを交えながら振り返った。ロンが「チャーリーはスティーヴにバトンを渡したんだ」と語ると、キースがさらに率直に付け足した。「チャーリーがくたばった時、あいつはこう言ったんだ。“お前らにはスティーヴがいる”ってね」
デルタ・ブルース曲“Beautiful Delilah”ではフェイドアウトしながら笑い声が聞こえ、“音楽をやる楽しさ”そのものが刻み込まれていることについて、ミックはこう説明した。
「今回は、本当に楽しかったよ。今回よかったのは、制作がダラダラ長引かなかったことだと思う。4週間は4週間だけど、昔に比べたら全然長くないんだよ。昔は何か月も何か月もスタジオにこもって、ほとんど外にも出なかったからね(笑)。まあ、それはそれでまた別の作り方なんだけど」
“Some of Us”でキースがメイン・ボーカルを担当していることについて、キースはこう語った。
「時々こういう作り方をするんだ。つまり俺たちは本当に、“まず音を置いてみる”ところから始めるんだよ。俺たちがやるのは、とにかく静けさの中に入っていくことなんだ。まず何かを外に出してみる。そしてスタジオに入ってから、それがどう育っていくかを見る。今あるものを見て、そこから作業していく。うまくいくものもあるし、いかないものもある。でも大半はうまくいく。もし最初にダメでも、2回目にはうまくいくかもしれない」
――うまくいかない時はどうするのか?
「だから“レフェリー”を呼ぶんだ。ほら、あそこに座ってる。(プロデューサーのアンドリュー・ワットを指さす)あいつは俺たちの尻を叩いてくれるんだよ(笑)。“ロックンロールは最高だ!”ってね」
また、アルバムのジャケットも披露された。ミックは「俺は“ミスター・アグリー”って呼んでるんだ(笑)」と語り、会場にいたアーティストのナサニエル・メアリー・クインは、「バンドのこれまでの旅路を表現している」と説明した。
ミックは続けて、「コンピューター生成じゃないから、本物なんだよね。制作のプロセスがものすごく楽しかった」とアーティストに感謝を述べ、Q&Aは終了。メンバーたちは再び大歓声の中、ステージを後にした。
その後、“In The Stars”のビデオが上映された。思わず胸が熱くなるような映像で綴られた作品となっており、盛大な拍手の中、イベントは幕を閉じた。
Photo by Akemi Nakamura

Photo by Akemi Nakamura

Photo by Akemi Nakamura

Photo by Akemi Nakamura

Photo by Akemi Nakamura