神はサイコロを振らない

初の日本武道館公演「Special Live for Double Anniversary Year 2025

“神倭凡庸命 -カムヤマトボンヨウノミコト-” at 日本武道館」オフィシャルライブレポート公開!

 

会場に足を踏み入れた瞬間、驚くほどシンプルなステージが目の前に広がっていた。豪華なセットもアンプなどの機材もない。真っ黒なその空間にはドラム、ギター、ベース、そしてマイクスタンドが並べられているだけ。装飾の一切を排した殺風景とも言える空間で、天井に掲げられた国旗がいつもより鮮やかに目に飛び込んでくるほどだ。

 

今年で結成10周年、メジャーデビュー5周年を迎える4人組バンド、神はサイコロを振らないが2月11日の建国記念日に、東京・日本武道館で初のワンマンライブ『Special Live for Double Anniversary Year 2025 “『神倭凡庸命 -カムヤマトボンヨウノミコト-” at 日本武道館』を開催。「ダブルアニバーサリーイヤー」のスタートとなるこの記念すべき日を祝福するため、全国からおよそ7500人のファンが駆けつけた。

 

定刻となり、暗転する会場にアンビエントなシューゲイズサウンドが鳴り響く。ゆらめく光の束がステージ上のスモークを照らし、まるで宇宙空間へ放り出されたかのよう。と同時に、なぜここまでシンプルなステージにしたのかも一瞬にして理解した。派手な演出もギミックも必要ない。神サイはこの晴れ舞台を、光と映像、そしてサウンドだけで表現し尽くすつもりなのだ。

 

ステージ背後の巨大なLEDパネルが白く光り、そこに柳田周作(Vo、Gt)、吉田喜一(Gt)、桐木岳貢(Ba)、黒川亮介(Dr)のシルエットが映し出されると、どよめきにも似た歓声が会場いっぱいに響き渡る。そして、この日の開幕を告げたのはなんと「秋明菊」。2016年の1stミニアルバム『anfang』に収録されたこの曲は、緩急自在なリズム隊と幾何学的なギターアンサンブル、そして柳田の伸びやかでエモーショナルなボーカルが入り乱れる、まさに神サイの「原点」だ。

 

モノクロの歪んだ映像と、降り注ぐフィードバックノイズに立ち尽くす間もなく「火花」へ。横並びだった4人のフォーメーションは、気づけばいつもの立ち位置に。赤いライティングの中、扇状に広がる象形文字が徐々にステージ上空へと昇っていく。それが、やがて太陽か神鏡のような全貌を表し、ヘヴィなミクスチャーサウンドとシンクロしながら圧倒的なスケール感を生み出していく。

 

その勢いのまま、次なる楽曲「修羅の巷」へ。浮世絵の波もしくはゴッホが描く雲のようなモノクロの模様がスクリーンいっぱいにのたうち、〈自由も正解も 安らぎもない修羅の巷で〉〈無様にいこうぜ 愚か者と嘲笑われたって〉と歌うこのスリリングな楽曲を視覚的にも盛り上げる。柳田の透き通るようなファルセットと、それに応えるように咆哮する吉田のギターソロが印象的だ。

 

「調子はどうですか武道館!」そう柳田が叫び、披露したのは「少年よ永遠に」。赤く煙る幻想的な空間でエイトビートのオルタナティブサウンドが鳴り響き、観客がクラップハンズでそれに応える。最後のサビではシンガロングも起こり、早くも武道館は一体感に包まれた。

 

「改めまして、神はサイコロを振らないです。よろしくお願いします」と、ここで最初のMCタイムとなるが、感極まった柳田の涙声にこちらの涙腺も一気に緩む。

 

「この日のために、もう去年の夏からずっとずっとこの景色を想像していました。でも、想像なんかよりもマジですごい……! 見たこともないし、聞いたこともない熱量を感じながら、今日このステージに立っています。まずはメンバーに、ありがとう。心の底から最大級の『ありがとう』を伝えたいです」そう言って、メンバーに深々と頭を下げる柳田の姿に、会場からは温かな拍手が鳴り響いた。

 

「僕はもともと一人で音楽をやっていました。シンガーソングライターとして活動していて、20歳の時にこいつらと出会ったんです。音楽を始めたのは、もっと昔のこと。中学1年の時に、ばあちゃんにアコースティックギターを買ってもらって、中学2年のお年玉で初めてエレキギターを買いました。それが、これです」と、手にしたサンバーストのエレキギターを掲げる柳田。「14歳の僕が初めて買ったこのギターを、30歳になった今、武道館で鳴らせることを心から嬉しく思います。メンバーとスタッフチーム、そしてもちろん、ここにいるみんなのおかげです。ありがとう」

 

感動の余韻を抱えたまま始まった「Baby Baby」を、オーディエンスとともに掛け合いで作り上げていく。「キラキラ」を経て「巡る巡る」では、柳田がギターを置きハンドマイクでステージ狭しと駆け回る。熱狂に包まれながらジャケットを脱ぎ捨て「1on1」のメロディを歌い出すと、待っていましたと言わんばかりにタオルを取り出したオーディエンスが、一斉に振り回す光景は圧巻だった。

 

ここでメンバーの一人ひとりが武道館への思いを言葉にする。

 

「みなさん、本当にありがとうございます。おかげさまで、最高の時間を過ごせています」と吉田。「俺たち神サイは、大学の音楽サークルで出会い、そこからバンドを結成して10年。長いようであっという間だったし、正直、内面は子どものままかもしれない(笑)。でも、これまで積み重ねてきたもの以上に、今日は俺たちの純粋さや泥臭さ、人間味をしっかり届けたいと思っています」と意気込みを述べた。

 

一方、黒川は「武道館って下から見ると大きく感じるけど、ステージに立つと意外とお客さんの顔が近くて、後ろのほうまでしっかり見えています」と、息を整えながら語りかける。「まさか、柳田と2人で始めたバンドに吉田と桐木も加わり、10年続けてこられるとは思わなかったし、何よりここまで俺たちの音楽を信じてついてきてくれたみんなのことを、心の底から誇りに思っています。マジでありがとう」と感謝の言葉を述べた。

 

「今日のライブが始まってから、最初の頃のことを思い出してたんだよね」そう話し始めたのは桐木。「最初は『自分のための音楽』としてバンドをやっていました。でも、活動を続けるうちに、『あなたたちの音楽が生きる糧になっています』っていうDMやメッセージをたくさんもらうようになって。いつの間にか、俺たちの音楽は、俺たちだけのものじゃなくなってきました。むしろみんなの応援が、俺たちのバンドの生きる糧になってるんだなって、今日この武道館に立って改めて実感しました」と語った。

 

そんな桐木の言葉に、再び言葉を詰まらせる柳田。「俺、今日一日ずっとグッときてるんですよ。なんなら昨日から(笑)。昨日の朝、目が覚めたら今日と同じ晴天で、『武道館前日の朝って、一生に一回しかないんだよな…』って思ったら、もう感極まってしまって。しかも、今日の朝6時に起きて外に出たら、朝焼けがめちゃくちゃ綺麗だったんです。その景色を見ながら、これまでのいろんな思いが込み上げてきた。そして今日、こんなにたくさんの人が神サイを見に来てくれてる……」と、しみじみと語った。

 

「今日はもう思う存分楽しんでほしい。みんな、歌う準備できてますか?」と呼びかけ、アカペラでサビを観客とともに歌い出したのは「LOVE」。柳田のアコースティックギターが鳴り響き、シンプルながらも力強いバンドサウンドをキラキラと包み込む。両手を掲げハートマークを作ったオーディエンスの、嬉しそうな笑顔が印象的だった。

 

ここからステージは幻想的な空間へと変貌する。「カラー・リリィの恋文」では、スクリーンに降りしきる雪の映像が映し出され、それに合わせて淡い桃色の光がステージを包み込む。まるでファンタジー映画のワンシーンを観ているかのような美しさの中で、思わずため息が漏れた。そして神サイのデビューシングルであり、その名を知らしめた名曲「泡沫花火」を切々と歌い上げる柳田。さらに「胡蝶蘭」「夜永唄」そして轟音とともに武道館の空気を揺らした「シルバーソルト」では、LEDスクリーンに歌詞が大きく映し出され、柳田が紡ぐ狂おしいほど切ない歌詞の世界観に存分に浸った。

 

気づけばライブも後半へ。ファンキーチューン「揺らめいて候」に続く「タイムファクター」も、鉄壁のバンドアンサンブルにエレクトロを融合した神サイならではの楽曲だ。

 

「もともと「タイムファクター」は、初めて日比谷野音に立ったときの景色を想像しながら作ったんです。神サイは2020年にメジャーデビューして、でもその年に世界中がパンデミックに見舞われてしまいました。ライブも制限され、当たり前のこともできなくなって……。でも、だからこそ『いつかこの声を響かせる日が来る』と信じて、みんなと一緒に歌える曲を作ろうと思ったんです」と、この曲の制作秘話を語る柳田。「そして今日、この景色。みんなの歌声が、まるで雪融けのように武道館いっぱいに広がっていくのを感じました」と喜びを言葉にした。

 

「最近、SNSを見ていると、人の悪意が毎日のように飛び交っています。そういうのを目にするのがしんどくて、SNSをやめたり、ニュースを極力見ないようにしたりしていて」と柳田。「ニュースをつけても、悲しい出来事ばかりじゃないですか。でも、俺は、この4人で、そしてみんなと一緒に、できるだけ笑っていたい。ここにいるみんなには、どうか優しくあってほしい。優しい世界であってほしいと思っています」と訴えた。

 

「俺たちは、決して強い人間じゃない。不器用で、不完全で、足りない部分を4人で補い合いながらここまでやってきました。だから、もしみんなに足りない部分があるなら、俺たちの音楽がそれを補えたらいいなって思う。もし孤独を感じたり、寂しさや悲しみに押しつぶされたりしそうになったら、俺たちの音楽がそばにいてあげられたらいいなって。逆に、俺たちもみんなにめちゃくちゃ支えられています。SNSで『神サイの音楽が生きる理由になっています』とか、『武道館のライブまでは頑張って生きようと思った』とか、そんな言葉をもらうたびに、どれだけ励まされてきたか……」と、振り返る柳田。

 

「俺たちも間違えることもあれば、失敗したり後悔したりもする。だから、無理に前を向けなんて言わない。でも、もし歩けないときがあったら、俺たちと二人三脚でのんびり進めばいい。これからも、ずっと神サイと一緒にいてくれたら嬉しいです。どうか、これからもこの4人をよろしくお願いします」

 

「無理に生きてとは言わないけど、生きてたらまた会えるぜ!」そう叫びながらラストスパートへ。「ジュブナイルに捧ぐ」では、バンドがひとつの生き物のように塊となり、凄まじいエネルギーを放つ。「夜間飛行」では、高層ビルの夜景がスクリーンに映し出され、〈I wanna be a Rockstar〉を全員でシンガロングした後、都市の夜景からはるか宇宙の彼方へと移動したスクリーンの下で「illumination」を披露。観客はスマホのライトを灯し、無数の光によって、武道館全体がまるで宇宙のような光景が広がる。回転する星座や、顕微鏡で覗き込んだ細胞のような映像が交互に映し出されるなか、疾走感あふれる「クロノグラフ彗星」を、残りの時間を惜しむかのように演奏した。

 

ここでついに、『神倭凡庸命 -カムヤマトボンヨウノミコト』という不思議なタイトルの由来が柳田の口から説明される。

 

「俺たちは、決してロックスター然としたバンドじゃない。普通の大学生みたいな4人が、そのまま30歳になっただけ。だから、そんな自分たちを表す言葉として『凡庸』がピッタリだなと。そこから『神倭凡庸命(カムヤマトボンヨウノミコト)』と名付けることにしたんです。今日、ここでちゃんと答え合わせできてよかった!」と嬉しそうに叫んだ。

 

そして最後に、本公演に向けて制作された新曲「スケッチ」を披露。モニターに4人の笑顔とオーディエンスが映し出され、多幸感に包まれるなかこの記念すべき武道館ライブを締めくくった。

 

「この先も、きっといろんな困難が待っている。でも、この4人なら乗り越えていけると思っています」最後のMCでそう挨拶した柳田。この日の武道館は決して「到達点」ではなく「通過点」であり、今後も神サイはさらなる進化を遂げていくことだろう。

 

◆SETLIST

  1. 秋明菊
  2. 火花
  3. 修羅の巷
  4. 少年よ永遠に
  5. Baby Baby
  6. キラキラ
  7. 巡る巡る
  8. 1on1
  9. LOVE
  10. カラー・リリィの恋文
  11. 泡沫花火
  12. 胡蝶蘭
  13. 夜永唄
  14. シルバーソルト
  15. 揺らめいて候
  16. タイムファクター
  17. ジュブナイルに捧ぐ
  18. 夜間飛行
  19. illumination
  20. クロノグラフ彗星
  21. スケッチ

 

◆Release情報

New Digital Single「スケッチ」On Stream

https://kamisai.lnk.to/sketch

 

◆LIVE情報

 

神はサイコロを振らない Live Tour 2025

2025年6月13日(金)【埼玉】サンシティ越谷市民ホール 大ホール 

2025年6月22日(日)【大阪】グランキューブ大阪メインホール 

2025年6月28日(土)【新潟】新潟県民会館 大ホール 

2025年7月13日(日)【愛知】愛知県芸術劇場 大ホール 

2025年7月20日(日)【福岡】福岡市民ホール 大ホール 

2025年7月27日(日)【宮城】若林区文化センター 

2025年8月29日(金)【北海道】札幌市教育文化会館 大ホール 

2025年9月 4日(木)【東京】TOKYO DOME CITY HALL 

2025年9月 5日(金)【東京】TOKYO DOME CITY HALL 

2025年9月13日(土)【岡山】岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場

 

【Official Fanclub「KAMISAI Children」チケット最速先行受付】

◎W会員(超スーパー最速先行)

エントリー期間:2025年2月11日(火・祝)18:00~2025年2月19日(水)23:59

◎年額会員(スーパー最速先行)

エントリー期間:2025年2月22日(土)17:00~2025年2月28日(金)23:59

◎月額会員(最速先行)

エントリー期間:2025年3月5日(水)17:00~2025年3月11日(火)23:59

 

詳細はこちら

https://kamisaichildren.jp/mob/news/diarKijiShw.php?site=KMC&id=285409