BIOGRAPHY

YIRUMA / イルマ


イルマ(1978年生まれ)は大韓民国に育ち、10歳で渡英。名門パーセル・スクールに通った。作曲は幼い頃から始めていたという。「メロディらしきものを初めて書いたのは9歳の時です。覚えた曲を、しょっちゅうピアノで弾いていました。」その後、キングス・カレッジ・ロンドンで師事したサー・ハリソン・バートウィッスルからは、その「ユニークな色彩」を評価され、イルマ曰く「西洋音楽に合わせた作曲はしないように、とアドバイスされた」のだという。こうして、イルマの書く曲には、徐々に韓国の伝統音楽や詩といった、みずからのルーツが取り入れられるようになる。「韓国文化に中国と日本の影響は欠かせません。というのも、これら3国は地理的に最も近い国だからです。僕の作曲における伝統音楽とのつながりは自然の結果であって、そうしようと考えてやっているわけではありません。僕の音楽の中心にはメロディがあり、それらはたいてい優しく、心に寄り添うものです。僕が大好きな詩(ポエム)のように」

2001年、ファースト・アルバム『Love Scene』をリリース。同2001年、セカンド・アルバム『First Love』をリリース。Classic FM から「21世紀の〈月の光〉」と称された「River Flows」はチャートの1位に輝いた。「When Love Falls」はその後の韓流ブームの火付け役となった韓国ドラマ『冬のソナタ』のサントラにも収録された。『冬のソナタ』はアジア全土で大ヒットし、イルマの音楽も一躍脚光を浴びた。ポエムへの興味は4枚目のアルバム『Poemusic』を生み出し、国内ツアーも行なった。2015年、『ピアノ』のリリースとともにアジア、そして全米ツアーをスタート。10枚目となるスタジオ・アルバム『frame』は、ストリーミングという新たな手段を得て、これまでよりもさらに広い世界各地にイルマのファンを増やした。今日では、再生回数は200億万回以上だという。

イルマの音楽からは、西洋のポスト・クラシカルと韓国のフォーク・ポップスの両方が感じられ、イルマ本人も自らの作品を「ジャンルでくくるのは難しい」と言う。「僕のハーモニーはクラシック的だと呼べるでしょう。ただし即興的な部分は、本来ジャズやポップス的だと呼ばれるものです。」イギリスでの体験が曲になったケースもある。最新曲の一つ「Berrylands Rd」(『Room with a View』収録)のタイトルは、大学への通学で毎日歩いていた道にちなんでいる。ポップスとの接点ということでいえば、イルマは韓国国内ではソングライターとして、2AM、エイリー、ペク・チヨンといったトップ・アーティストたちがチャートに送り込むシングルを何曲も手がけている。自分のラジオ番組も持ち、2013年MBCエンターテイメント・アワードではRadio DJ ルーキー賞を受賞した。

しかしそんな中でもイルマが最も心を寄せるのは、インストゥルメンタル・ミュージック、とりわけソロ・ピアノだ。ライヴ演奏とレコーディングを行なうのに加え、ファンのために、自らの楽曲の楽譜を積極的に提供している。その意味では、イタリア人ピアニスト兼作曲家ルドヴィコ・エイナウディの先例にならっていると言える。(実際、イルマの初期作品、例えば、ピアノの中音域、密でテンションを用いたハーモニーが顕著な「River Flows In You」はエイナウディに通じるものがある。)イルマのサウンドの基本はメロディだ。そこに静かに波打つさざなみのような伴奏が伴われる時、それはミニマリズムというよりは、ポップスのソングライティング・テクニックからの影響が大きい。センチメンタリズムを隠すことなく、非常にロマンティック(といってもロマン主義ではない)な音楽と言える。

EP『Room with a View』はユニバーサル・ミュージック・グループ・コリアとイルマの、グローバル・パートナーシップの第一弾となる。イルマにとっては20年ぶりとなる古巣だ。UMGコリアのCEO、BJ Yangは今年は「イルマのキャリアにとって新たな、エキサイティングな一章」だと読んでいる。2月には『The Best: Reminiscent, 10th Anniversay』が全米ビルボード・クラシカル・チャートでナンバーワンを獲得。韓国では、1回のコンサートでの観客動員数の記録と、単独アーティストとしてのコンサート開催数の記録をイルマが保持しており、未だ破られていない。