BIOGRAPHY

ザ・ドライヴァー・エラの作る音楽は、そのバンド名同様、明日を見据えながらもどこか伝統的な響きがある。曲の大半を書き下ろし、演奏し、プロデュースするのは、ロスとロッキーのリンチ兄弟。予測不可能に展開する彼らのポップスはまた、あらゆるロマンチックな関係を彷彿させながら、開かれた道へと突き進む。そこにあるのは、無限の可能性や、脱出のスリル、1秒たりとも同じ場所に留まるものかという強い意志だ。
デビューシングル「Preacher Man」で、そのほとばしるような創造性を、ポップミュージック史上最大ともいえるテーマ、つまり“存在の危機”へと注いでみせたザ・ドライヴァー・エラ。ロックンロールのむき出しのエネルギーと、ゴスペルのような熱量を備えたこの曲は、威勢の良いリズム、重厚なピアノリフ、そしてフリースタイルの告白から野獣のようなうめき声へと自在に変化するソウルフルなヴォーカルによって繰り広げられる。だが、そのどこか神聖なサウンドとは裏腹に、「Preacher Man」から漏れ伝わるのは、疲労にまみれた絶望感や、信仰の欠如からくる不安だったりする(例えばこんな歌詞も:「僕の口はあまりにも干からびすぎて、祈りの言葉を発することもできない」)。
「『Preacher Man(直訳:伝道師)』というタイトルからして、この曲に宗教的な意味合いが込められているんじゃないかと思われるかもしれない。だけどむしろ、無神論的な要素のほうが強いんだ」とロスは言う。
壮大なサビや非の打ちどころがない完成度の高さを備えた、「Preacher Man」をはじめとする数々の楽曲が証明するもの。それは、ロスとロッキーがR5で長年にわたり磨きあげてきた、ミュージシャンとしての確固たる技量だ。R5とは、2017年リリースの自主制作EP『New Addictions』が「鮮やかに組み立てられたポップ・スイーツであふれている」と『ローリング・ストーン』誌から称賛された5ピース・バンド。そのR5のメンバーとして、先だって行なったワールドツアーの最中、ロスとロッキーの2人は、自分たちのより実験的な性向を掘り下げられそうな新プロジェクトの発足を思い描き始めたという。
「僕ら2人には、しばらく溜め込んでいた曲が山ほどあった」と明かすロッキー。2人は新バンドを始めるにあたり、自分のたちのビジョンを特定のサウンドや型に縛りつけないようにしながらも、自ら制約を課すことなく音楽を作ること、また常に革新的な音を求め続けることを固く決意した。
そんな2人がR5について聞かれたとしたら、きっと彼らは、これでR5が終わるわけではなく、新しい何かが始まるのだと答えるだろう。R5がメジャー・レーベルより初作品をリリースしてから5年。その間、彼らは非常に多くの面において進化を遂げた。芸術面に限らず、彼らのものの見方や世界観もまた広がった。「現時点で僕らは、各々の人生においてそれぞれ全く異なる考えや目標を持っているんだ」とロス。「当然、僕らは日々成長しているわけだし、新たなサウンドや展望を持って前に進むのはごく自然なことだろ」とロッキーも続ける。
美しくうねる夢のようなポップナンバー「Afterglow」から、自信みなぎる粋なR&Bソング「Flexible」に至るまで、ザ・ドライヴァー・エラの最初の作品群を聴けば、彼らが生来の素質を発展させながら、同時にあえてジャンルを曖昧にしていることがうかがえる。「今や誰もが、ありとあらゆる種類の音楽に接することができる時代だ。カントリーであれ、パンクであれ、ヒップホップやポップスも然り。僕はトラップをよく聴くけど、クラシック音楽もたくさん聴いてる」とロス。「大事なのは、とにかくできるだけ最高の曲を書くことさ。どのカテゴリーにあてはまるかなんて、気にしちゃいない」
数々の新曲に磨きをかけたり、早々にそれらのリミックス制作に取りかかる合間にも、ザ・ドライヴァー・エラは「Preacher Man」用にザラついた映画のようなシーンを撮影し、彼らにとって初となるミュージックビデオを完成させた。撮影は場末のモーテルで行なわれた。ネオンランプで作られた十字架のけばけばしい光によって部分的に照らされた映像からは、いささかくたびれた享楽的生活が伝わるし、ロスの評判高い演技の才も見て取れる(彼は最近、連続殺人鬼の伝記映画『My Friend Dahmer』でも主役を演じ、絶賛を博したばかりだ)。一方で、制作活動を活発に行なっていない間も、2人はしばしば外に出て、車であちこち走り回りながらミックス済みの音源を聴き直したり、曲のアイデアを出し合ったりと、常にザ・ドライヴァー・エラにおける可能性を広げることに余念がない。
「少し前に、ある本を読んでいたんだ。もしも自分ともう1人別の人間が、とことん深くつながり合うことができれば、自分たちは第三の意識を形成したも同然だといったことが、そこには書かれていた」とロス。「ロッキーと僕はある程度、その域に達しているんじゃないかな。僕ら2人のうちどちらか一方だけが、これまで長い時間をかけて、創作面においてかなりの力を蓄えてきたと感じているわけじゃないと思うんだ。そう思うと、ただもう本当にクールな気分だよ。すべてのことが、こんな驚くべき方法でもって僕らの心を開放したんだから」