現代女性の憧れ!「強くてしなやかな女性」を代表するテイラー・スウィフトの、初の政治的発言の背景

 11月6日のアメリカ中間選挙を前に、テイラー・スウィフトは先月、初めて政治に関する意見をインスタグラムに投稿した。結構な長文は、「これまでは自分の政治的意見を公に出すのを避けてきましたが、過去2年間に私の人生や、この世界で起きたさまざまな出来事を鑑みて、今ではそれは違うと考えています」という動機の説明から始まる。
フォロワー数が1億超えのSNSだけに、政界を巻き込む論争に発展、トランプ大統領までが「テイラーの音楽が25%嫌いになった」と訳のわからない発言をし、その映像が国内外で放映されて、日本でも話題になった。

 アメリカでは俳優やアーティストなどの有名人が支持する政党や候補者を明らかにし、応援するのは珍しくない。社会的影響力がある人間の果たすべき役割と考えられているからだ。ケイティ・ペリーやビヨンセ、レディー・ガガは、2年前の大統領選で初の女性候補、ヒラリー・クリントンを応援し、キャンペーンに協力した。

 その時テイラーは、コメントを控える立場を貫いた。それがまた批判の対象になったりしたわけだけれど、そんな彼女が今回共和党候補者を批判し、民主党への投票を明らかにしたのだ。

 

■自身のインスタグラムで、何を語ったのか?

 テイラーは、マンハッタンやビバリーヒルズなど数か所に邸宅を所有しているけれど、住民登録しているのはテネシー州ナッシュビル。カントリー・ミュージックの聖地であり、14歳の時に家族と移住し、自分の音楽を磨いた街でもある。そのホームタウンの共和党候補者は、マーシャ・ブラックバーン議員。テイラーは、「これまで出来る限り女性に投票するようにしてきた」と前置きをしつつ、ブラックバーン議員が女性の同一賃金に関する法案や、家庭内暴力、ストーカー、デートレイプから女性を守るための法律の改正に反対していたこと。LGBTQの権利を否定する発言をしてきたことを議会の記録を調べることで知り、民主党候補に投票すると明言したのだ。

 投稿ではLGBTQについても、「LGBTQの権利のための闘いを信じているし、性的指向やジェンダーに関する差別は、どんなカタチであっても間違いだと信じています」と言及し、コンサートでは「自分らしく、自分のアイデンティティを生きる勇敢な人達に愛と敬意を表したい。カミングアウトに踏み切れていない人も、自分のタイミングでやればいいと思う」とエールを送っている。

 インスタグラムではさらに、候補者のことを調べる大切さ、投票するためには事前に登録をする必要があること、その締切日までを記載して、11月6日に投票所に行くことを呼び掛けた。それにより若年層の事前登録が急増し、中間選挙への関心を高めることになっている。


https://www.instagram.com/p/BopoXpYnCes/?hl=ja&taken-by=taylorswift
テイラー・スウィフト インスタグラムより

 

■勇気ある行動に隠された、リスクある背景

 アメリカ中西部のテネシー州は、“バイブルベルト”と呼ばれる地域で、トランプ大統領が勝利した州のひとつだ。キリスト教を信仰する白人が多く暮らし、保守志向の彼らが好む音楽がカントリー・ミュージック。そこで、民主党支持を発言するのはリスクを伴う。

 同時多発テロ後の2003年にはこんなことが起きた。当時人気絶頂だったカントリー・ミュージックの女性3人組、ディクシー・チックスがブッシュ大統領のイラク侵攻を海外公演のステージで批判すると、裏切り者のレッテルを貼られたうえに、ラジオ局が一斉に彼女達の歌を放送しないというバッシングを受けたのだ。そのこと自体は、世界的に問題視されたけれど、こういう前例があるので、カントリー・ミュージックの人達は、政治的発言を避ける傾向がある。

 今ではポップ・スターとして知られているテイラーだけれど、2010年の3rdアルバム『スピーク・ナウ』まではカントリーに分類されていたし、本人も自分のルーツは、カントリー・ミュージックにあると語っている。その大切なファンを敵に回すかもしれないなかでの勇気ある投稿だった。話題になる背景にはこういった社会構造も関係している。

まだカントリーのサウンドが印象に残る3rdアルバム『スピーク・ナウ』

 

■自分を信じ続けてきた結果、手にいれたもの

 テイラーは、子供の頃から友達の意見や風潮に流されず、信念を貫くタイプだった。高校時代は、音楽にしか興味がない、変わった子として扱われていた。でも、自分は絶対に歌手になると信じ、家族の愛情深いサポートを受けながら、自ら行動を起こすことで道を拓いてきた。しかもメジャー・レーベルにスカウトされた際に、自作曲を歌うことにこだわり、せっかくのチャンスを諦めてまで自分の音楽を理解してくれる人を探し続け、設立されたばかりの名もないインディー・レーベルと契約して、現在の成功を手に入れた。

 また、2010年に2ndアルバム『フィアレス』でグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞した後、さらなる飛躍を求めて、ポップスに転向するかと思われたけれど、「カントリーでまだやりたいことがある」との強い思いから、デビュー作から組んでいるプロデューサーと、3rdアルバム『スピーク・ナウ』を制作。2012年の4thアルバム『レッド』で初めてヒットメーカーのマックス・マーティンと組み、あの大ヒット曲「私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない」が生まれて、全世界的に知られるアーティストになった。

大ヒット曲「私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない」が収録されている4thアルバム『レッド』

 

■「強く、しなやかな女性」に成長し続けるテイラー・スウィフト

 世界的なポップ・スターは、常に自分と向かい合い、今何をすべきかを考えている。セルフプロデュース能力にも長けているけれど、成功より直感や信念を優先させてきた。それが進化というカタチでアルバムやツアー、ミュージック・ビデオ、さらに生き方に反映されている。泣き寝入りしないと決めたのもそのひとつだろう。

 2015年に自分のお尻を掴んだDJに対するセクハラ裁判を起こしたこと、2009年のMTVミュージック・アウォードで、自分のスピーチを中断させたカニエ・ウエストとの闘いも、泣き寝入りをしないためのもの。それも社会的影響力のある人間として、セクハラや誹謗中傷で悩む立場の弱い女性達を代弁するために行ったことでもある。

 16歳でデビューして、現在28歳。年齢を重ねるとともに成長しなくてはいけない、強くならなくてはいけないと、テイラーは、自分を奮起させているように見える。それが出来るのは、自分を信じ、常に正しい判断をしようと努力をしているからこそ。それがまた彼女をますます輝かせることになっている。

 

服部 のり子(音楽ライター)