BIOGRAPHY

SHADOWS FALL / シャドウズ・フォール


Bio マシュー・バックハンド (G&Vo)/Matt Bachand - guitar/vocals
ジェイソン・ビットナー (Ds)/Jason Bittner - Drums
ジョナサン・ドネイズ (LG&Vo)/Jon Donais - lead guitar/vocals
ブライアン・フェア (Vo)/Brian Fair - vocals
ポール・ロメンコ (B)/Paul Romanko - bass

 

=アルバム・バイオバイオグラフィー=

 14年間に6枚のアルバムをリリースし、敬意を込めてニュー・ウエイヴ・オブ・アメリカン・メタルと呼ばれる集団の頂点に登り詰めたマサチューセッツ州出身の5人組、SHADOWS FALLは、考え抜いた末に決断を下した。これまでのように厳しい締め切りに間に合わせるためツアーの合間を縫って曲を書き、慌ただしくレコーディングを行うのではなく、1年間ツアーを離れて新しいアルバムに意図的に集中することを選んだのだ。その理由は単純なものであった:彼らは、アーティストとしてバンドのメンバー全員を満足させるのみならず、スタイル面でも形態でも、妥協することなくSHADOWS FALLの最高の姿を形にしたい、そう望んだのである。

 「俺は自分達のゲームを常にステップ・アップし続けたい、と望んでいるが、10年以上も活動を続けている、それが最も困難なことになるんだよ。長年やっていると、自分を追い詰めて新しいアイディアを生み出すことがね」

ヴォーカリストのブライアン・フェアは言う。

「俺達は安全策は採りたくなかったし、安全圏に留まり続けるのも嫌だった」

 「ラジオでかけてもらえるチャンスを増やすために曲の長さを一定の範囲内に留めることなど考えず、自分達に書きうる最高の曲を書きたかった」

ギタリストのマット・バックハンドが付け加える。

「デス・メタル・ヴォーカルも至る所に入れたし、ツーバスも全面的に使っている。メロディもたっぷりあるけどね。俺達は非常にメロディアスなパートと、非常にヘヴィなものをミックスする新しいやり方を見つけるのが大好きだから。俺達のただ一つ真の目的は、俺達みんなが聴きたいと思うアルバムを楽しんで作ることなんだ」

 このやり方は報われた。それも予想以上に。SHADOWS FALLにとって7作目となるフル・スタジオ・アルバム、「FIRE FROM THE SKY」は様々な側面を持つ宝石のような作品だ。カミソリのように研ぎ澄まされ、暗い絶望的なものから前向きで多幸的なものまで、幅広いサウンドを提供する。そのサウンドの中には、スラッシュ・メタルやスウェーデン・デス・メタル、ハードコア、1980年代のコマーシャル・メタル、ネオ・クラシカル及びクラシカル・ロックまで、様々なサブ・ジャンルが含まれている。複雑なリズムを持つ曲は予想も付かない展開を見せるが、まとまりを失うことはなく、常にキャッチーだ。グラインドなサウンドを展開する時ですら、SHADOWS FALLは常に最も効果的なポイントを見つけだし、ブルータルでありながら即座に受け入れることの出来る曲を作り出すのだ。

 「FIRE FROM THE SKY」の収録曲は、信じられないほど多彩だ。突進するビートに載るギター・ハーモニーでアルバムの幕を開ける”The Unknown”は、メロディアスなグロウル・ヴォーカルを動力に雷鳴のごときスラッシュ・ナンバーへと発展し、クロスオーバーなプリ・コーラスを経て、確固たるビートと凄まじい早さのギター、そしてフックに満ちた痛々しげなヴォーカルによって煽られていく驚異的なコーラスでピークを迎える。タイトル曲は遅めのテンポで、より黙示録的だ。重い足取りのごときツーバスのドラムと幾層にも重ねられたマイナー・キーのギター・メロディが混ざり合い、粉砕するような呪われたリフの上に貪欲なヴォーカルの叫び声が載る。こうして曲がその半分まで進んだところで、曲は怒りとカフェインで高揚したようにスピードと激しさを倍にした後、再びミッド・テンポの踏みならすようなビートへ戻っていくのだ。”Save Your Soul”は、恐らくこのアルバムの中で最もキャッチーな曲と言えるだろう。クリーンなクラシック・メタル風のヴォーカルと、ハードコアの吠えるような叫びを混ぜ合わせ、空に拳を突き上げるようなリフと速弾きのギター・ソロがそれに絡む。”Nothing Remains”ではTESTAMENTを匂わせるメロディック・スラッシュと、気持を盛り上げるギターのアルペジオ、そして優しく舞い上がるヴォーカルと、喉が張り裂けんばかりの咆吼という究極のハイブリッドが一つになっている。

 

 「曲同士も、同じ曲の中でも、たくさんのコントラストをつけたいんだ」

と、バックハンドは言う。

「どの曲も同じテンポにはしたくなかった。アルバムには起伏があるべきだし、山もあれば谷もあるべきだ。カンザスの真っ平らな平原をドライヴするのではなく、ジェットコースターに載っているような冒険であるべきだ」

 「ヴォーカルという観点から言うと、初期のデモの段階から今回の曲には色々な手法を駆使出来る余地があった」

と、フェア。

「彼らは1つの曲でリフは1つか2つ、というような曲は書かない。もっと複雑に入り組んでいる。おかげで、それぞれの曲に様々な雰囲気を込めることが出来る」

 彼らのサウンドを調整するプロデューサーを探す時がやってきた。彼らの選択対象はたった1人、彼らのよき友人でKILLSWITCH ENGAGEのギタリスト、アダム・デュトキエヴィッチだ。アダム・Dと彼らの歴史は、SHADOWS FALLのギタリストのジョン・ドネイズとアダム・Dがマサチューセッツの革新的なメタルコア・バンド、AFTERSHOCKで共にプレイしていた1990年代初頭までさかのぼる。当時、フェアとKILLSWITCH ENGAGEのベーシストのマイク・ダントニオもまた、AFTERSHOCKと近い感覚のバンド、OVERCASTで大地を揺るがせていたものだった。長年、一緒にツアーをしたり、共に遊んだりしていたものの、これまでSHADOWS FALLはデュトキエヴィチにアルバムをプロデュースしてもらうチャンスがなかなか得られなかった。

 「俺達はずっとアダムと一緒にレコーディングをやりたかったんだけど、KILLSWITCH ENGAGEがツアーにでていたり、アダムが他の人とスタジオに入っていたりで、実現しなかったんだよ」

バックハンドは言う。

「でも今回はちゃんと実現するように、尽力したからね。デモを作った後、俺達はアダムと一緒に時間をかけてありとあらゆる部分をチェックし、不必要な部分を削っていった。彼はアレンジにとても秀でているし、曲を筋の通ったものにしてくれるんだ。彼はパート全体やリフを書いたりする訳ではないけれど、深みを加えていく手助けをしてくれるんだよ」

 「アダムには随分しごかれたよ。でも、彼とは長い付き合いだし、いい友達だから、そうなることは承知していた」

と、フェアが付け加える。

「彼は、曲の持つものを総て形にし、アルバムを出来る最高のものにするためにこっちが全力を出すよう叱咤してくるんだ。それじゃうまくいかない、と当人に伝えることを恐れないやつだし。彼は俺にこう言うんだぜ。『そんなのバンドですらない。まるで間違ってる』って。俺が『間違ってるってどういう意味だよ? 俺はこう感じてるんだ』と言い返すと、彼は『お前の感じ方が間違ってるんだ』と返事をするんだからね。いい耳の持ち主で、自分達より楽曲に対して距離を保てる人間が、たまに断固たる裁断を下してくれるのはいいことだよ。彼はそういう役目を背負うことを明らかに恐れていないんだ」

 デュトキエヴィッチは個々の楽曲のパートで最適のヴォーカル・スタイルを見つけられるようフェアを手助けしたのみならず、それまでフェア自身も自分が使えると知らなかったスタイルや、何年も遠ざかっていたスタイルを導入したり、新しいテクニックを実験してみるよう、フェアを激励した。

 「彼は俺の中から特徴的なヴォーカル・スタイルをいくつも引き出したよ。これは、彼のおかげで自分のやっていることを考えすぎずに済んだ結果さ」

フェアは言う。

「中にはOVERCASTでやっていたようなロックっぽいスタイルで歌っているところさえあるし、SPLIT LIPやENDPOINTといった1990年代のメロディック・ハードコア・バンドから影響されている部分も多い。全部を壁に投げつけてみて、その中で壁の上に残ったものを使った、という感じだな。もちろん、いつもやっているとおり、ヘヴィなパートの上にメロディを重ねることはやっているけれど、そこに至るまでの様々なステップも総て入れたい、と思ったんだ」

 

 SHADOWS FALLは、まずマサチューセッツ州ウエストフィールドにあるジング・スタジオで「FIRE FROM THE SKY」のドラム・パートを録音し、そこからデュトキエヴィッチの自宅のスタジオへと移動、両方のスタジオを合わせて合計6週間かけてレコーディングを行った。実際にスタジオに入るずっと依然に、基本的な足取りは決め手いたので、手早く、効果的に作業を進めることが出来た。それでも、彼らは作業に長い時間をかけ、レコーディングが終了するぎりぎりのところまで新しいパートを作り続けた。

 

 「俺達はしばらくの間”Divided And Conquer”という曲にあれこれ手を入れていたんだが、どうしてもうまくいかなくてね。仕方がないので、後回しにしたんだ」

バックハンドが振り返る。

「でも、レコーディングが終わりに差し掛かった時点で、『くそっ、曲が足りない』という話になってさ。どうしてももう1曲、それもすぐに必要になったんだよ。俺はジェイソン(ビトナー)がドラム・トラックのレコーディングを勧めている間も、ジング・スタジオの控え室でラップトップをいじくって、頭の中から曲を引っ張り出そうと頑張っていたんだ。プレッシャーがかかっている時こそ、俺は最高の仕事が出来るタイプで、その時もこれだ、というものが出てきてね。殆ど曲を書き上げるところまでいったんだ。そうこうするうちにジェイソンがドラムのレコーディングを終えたので、俺達は『じゃあ、スタジオに入ってこの曲を試してみよう』ということになり、20分くらいジャムったんだけど、そこでコーラスをどうしたらいいかわからなくなってしまった。そこへジョンがドアを開けて入ってきて、しばらく俺達のプレイに耳を傾けた後、やおら自分のギターを取り出すと『コーラスが浮かんだぞ』と言って、いきなりあのリフを弾き出したら、バン!出来上がり、だよ。1時間の間に、文字どおり2,3のリフから曲になったんだ、完全な曲になるなんて考えも付かない状態だったのにね」

 

 ことの成り行きに相応しく、”Divided And Conquer”の歌詞はこのアルバムの中で最も高揚した雰囲気のものとなった。この歌詞は、世界中で起こっている派閥同士の対立に対する反応として、フェアが昨年書いたものだ。

 「この曲は俺の若者達の団結支援ソングみたいなものだ」

と、彼は言う。

「二大政党制の結果であれ、社会的地位の違いであれ、人々がばらばらになっていけばいくほど、コントロールを取り戻すこともどんどん難しくなってゆく。この曲は、座り込んで通り過ぎる人を眺めながら文句を言う代わりに、団結してよりよい未来のために戦おう、という曲なんだよ」

 

 同じく政治的な内容を持つ”Blind Faith”は、支配層のエリート達にあまりに多くのコントロールをゆだねてしまっている社会という、似たようなアイディアに基づいている。「FIRE FROM THE SKY」の歌詞の多くは、暗さを増していく現実を扱っている。”The Unknown”は憂鬱と戦う代わりに、憂鬱に屈する誘惑を歌っているし、アルバムのタイトル曲は恒星が爆発して超新星となり、世界を飲み込んでしまう様子を歌っている。”Walk The Edge”や”Nothing Remains”は麻薬依存症にまつわるものだ。

 「依存症という悪魔に捕まったがために、ヘヴィ・メタルのコミュニティでも何人もの素晴らしい人達が若くして世を去った」

フェアは言う。

「どの話も結末はいつも同じだが、最近は特にこういう話をよく耳にするんだ。特定の人物について書いた訳ではないけれどポール・グレイ(SLIPKNOTのベーシスト)やザ・レヴ(AVENGED SEVENFOLDのドラマー)といった人達のことが俺の心の中にはあった。彼らのことはとてもよく知っていたし、彼らと一緒にいくつもの楽しい夜を過ごしたよ。そういう楽しかった時間を考えている時に、一瞬にしてそういう時間が奪われてしまうこともあると思うと恐ろしいよね。楽しい時間を過ごしたいと思うのと同じくらい、コントロールを失わないようにしたい、と思うね」

 

 音楽業界が変化の時代に深く沈み込み、新たな模範が古い煉瓦とモルタルで作られたシステムにとって変わろうとしている時代だからこそ、メタルのシーンもSHADOWS FALLのように先のことを考えているバンドがもっと必要だ。業界で過ごした17年という歳月が、慣例を無視して自らの本能に従い、他の人達がみなツアーをしている間に自分達はスタジオで自らの音楽を完璧に仕上げるのだ、ということを教えた。そして、ラジオを目指す代わりに自分達の心に従って曲を書き、自らの強力な労働倫理と音楽をプレイすることへの愛情を頼りに、時にその圧力を増す波を乗りこなせ、と教えたのだ。

 

 「俺達を取り巻くビジネスの状況が、アルバムの黙示録的な雰囲気に寄与した、と言っても過言ではないと思う」

フェアは言う。

「政治的争いであろうと、気候変動であろうと、とにかく混沌とした状態にある世界全体を、小宇宙に反映させたかった。マヤ暦の終わりが忍び寄りつつある今、世界の終わりに関してありとあらゆるアイディアが噴出している。でも、闇があれば、光もあるんだ。人は自分が追い詰められた時、出口を求めて戦う人間なのか、諦めて闇に屈する人間なのかが解る。俺達は戦う人間達だ、と繰り返し証明してきた、と俺は思うな」