BIOGRAPHY
ラファウ・ブレハッチ / Rafał Blechacz
1985年6月、ポーランド北部の小さな町ナクウォ・ナデ・ノテションに生まれた。幼い頃から音楽的才能の兆しを見せ、5歳でピアノを始める。まず、ビドゴシチのアルトゥール・ルービンシュタイン音楽学校で学び、その後、同市のフェリクス・ノヴォヴィエイスキ音楽アカデミーに進学。カタジナ・ポポヴァ=ズィドロンのピアノ・クラスで学び、2007年5月に卒業した。
卓越した技巧と芸術性により、ブレハッチは早くから数々のコンクールで成果を収めた。2002年にはビドゴシチのアルトゥール・ルービンシュタイン国際青少年ピアノ・コンクールで第2位、2003年には浜松国際ピアノ・コンクールで1位なしの第2位を受賞。そして2005年、ワルシャワの第15回フレデリック・ショパン国際ピアノ・コンクールで優勝を果たし、クリスチャン・ツィメルマン以来30年ぶりに同コンクールの頂点に立ったポーランド人演奏家となった。この時ブレハッチは、優勝に加えて同コンクールの4つの特別賞すべてと聴衆賞も獲得し、その圧倒的な存在感を強く印象づけた。
その後、2010年にはシエナのキジアーナ音楽院が、優れたピアニストまたはヴァイオリニストに毎年授与するキジアーナ国際賞を受賞。2014年には、「卓越したピアノ芸術」を認めて4年に一度授与される権威あるギルモア・アーティスト賞を受賞した。正式な受賞歴に加え、先輩音楽家たちからも厚い賛辞が寄せられている。1965年ショパン・コンクール優勝者のマルタ・アルゲリッチは、彼を「とても誠実で、並外れていて、繊細なアーティスト」と評し、アイルランドのピアニストで教育者のジョン・オコーナーは「これまでの人生で聴いた中でも最も偉大なアーティストの一人」と称えている。
ブレハッチは2016年から2017年にかけて演奏活動を一時休止し、ポーランド・トルンのニコラウス・コペルニクス大学で哲学博士号を取得した。博士論文では、音楽の形而上学と美学に関わる諸側面を探究。本人が語るように、哲学研究は「音楽解釈における自由と制約の双方」を理解する助けとなっている。
こうした歩みを背景に、ラファウ・ブレハッチの芸術性は、あらゆる尺度に照らしても稀有なものとして認められている。それは、鍵盤に対する完璧なコントロールと、楽器の持つ表現力を余すところなく引き出す力から生まれる。現在ブレハッチは、バッハ、ベートーヴェンからショパン、シマノフスキに至る幅広いレパートリーに、誠実さと明晰なヴィジョンをもって向き合う演奏家として高い評価を受け、世界屈指のピアニストの一人に数えられている。
2006年5月にはドイツ・グラモフォンと専属契約を結び、クリスチャン・ツィメルマンに続いて、名門“イエロー・レーベル”に加わった2人目のポーランド人ピアニストとなった。