ベストアルバム「ユーミンからの、恋のうた。」Director’s note公開

2018.04.11 TOPICS

ユーミンが創った、日本のPOPS 45年間の軌跡
松任谷由実45周年記念ベストアルバム「ユーミンからの、恋のうた。」
Director’s note

UNIVERSAL MUSIC LLC. / EMI Records 南雲 隆行

 

 

 100万枚を超える大ヒットを記録した前作「日本の恋と、ユーミンと。」に続く、ベストアルバム二部作の完結編となる今作「ユーミンからの、恋のうた。」は、ユーミン自身が今この時代にこそ聴いて欲しいと自らが選曲した45曲が、3枚のディスク毎のテーマに沿って収録されている。

デビュー45周年を記念し制作された今作を、より楽しんで頂く為に、完成に至るまでの”時間”に纏わるエピソードを、いくつか紹介したい。

 

70年代から2010年代まで、すべての年代で首位を獲得した唯一のアーティスト

荒井由実時代から、45年という月日の間に38枚ものアルバムをリリースし、シンガーソングライターとして実に600曲余りに及ぶ作品を手掛けてきた。

また、松任谷由実としての作品以外に呉田軽穂の名義でも、多くのアーティストに楽曲を提供し、誰もが知る国民的ヒットソングをユーミンが生み出していることは、すでに多くの人が知るところだろう。

70年代から2010年代まで、すべての年代でオリコン1位を獲得した唯一のアーティストであり、時代を象徴する社会現象や若者のブームには、いつもテーマソングのようにユーミンの歌が鳴り響き、世代を超えて多くのリスナーに愛され続けてきた。

 

ユーミン、そして松任谷正隆氏の音楽的挑戦の軌跡

14才から作詞作曲を始め、コンポーザーとして天才的な才能を発揮したユーミンのサウンドを語る上で、デビューアルバム「ひこうき雲」の演奏を支えたティン・パン・アレイのメンバーであり、数々のヒット曲やコンサートの総合演出を手掛け、公私共にパートナーであるプロデューサー/アレンジャーの松任谷正隆氏は、ユーミンの一翼を担う欠かせない存在だ。今作で選曲された楽曲群は、45年間に渡り妥協なく継続された松任谷正隆氏によるプロデュースやアレンジメントによる楽曲制作の側面と、初回限定盤の映像特典「観るベスト YUMING SUPER PERFORMANCE 2 + SPECIAL INTERVIEW」に収録された数々の伝説的なコンサートの演出という側面でも、常に革新的なユーミンのクリエイティブを支えた、その音楽的挑戦の軌跡を収録した作品といえる。

 

各時代の最先端のエンジニアリングによるサウンド・クオリティ

ユーミンの楽曲が色褪せない魅力を宿している理由として、詞曲の素晴らしさや先鋭的なサウンドアレンジは勿論、エンジニアリングによるサウンド・クオリティの魅力があることは間違いない。

一流のエンジニア達がその才能に惚れ込み、作品作りに参画してきており、国内は勿論、海外制作においてもMichael Jacksonを手掛けたMatt Forgerや、Princeを手掛けたTom TuckerをはじめとするU.S.のエンジニア陣が、常に最新のサウンドを意識してレコーディングやミックスを手掛けてきたことも大きい。

 

オリジナル・マスターから最大45年の時を経て再生された貴重な音源

また今作の収録楽曲は、70年代に制作されたマスターテープを始め、最大45年間という物理的な経年を踏まえたデリケートな作業工程を経て、当時のオリジナル・マスターから音源が起こされている。

時代によって収められたマスターテープのフォーマットも多岐に渡り、中には国内に再生機が現存しないデジタルテープも含まれた為、それらの作品はL.A.のBernie Grundman Mastering Studioに空輸搬送し、当時オリジナル・マスターが産み落とされた出生地と言えるその場所で、長い歳月を経て再生された貴重な音源も含まれている。

 

サウンドエンジニアGOH HOTODA氏による、楽曲が3Dになったような”現在”のサウンド

そして、サウンドエンジニアのGOH HOTODA氏の見事なリマスタリングにより、歌声から伝わる時代ごとの歌詞の世界や、声質の微妙な変化は聴く人をノスタルジーに誘いつつ、艶やかに仕上げられた音像や迫力ある音圧によって、当時のユーミンの遊び心や制作者たちの熱量の伝導率を増した”現在”のサウンドになっている。

リマスタリングを経て、プロデューサーの松任谷正隆氏は「楽曲が3Dになったような感覚」、ユーミンは「自画自賛の仕上がり」と語る。

 

その当時を思い出させてくれるタイムマシーンのような作品

今作を「自分にとって、その当時を思い出させてくれるタイムマシーンのような作品」と語ったユーミン。

108Pに及ぶアルバムのスペシャル・ブックレットは、自らの”備忘録”と題し、各ディスクと各曲ごとにユーミン自筆の言葉が添えられている。それは本人にとって備忘録だが、リスナーにとってはユーミンからのメッセージなのかもしれない。この作品を聴けば、ユーミンと共にあなた自身のタイムトラベルがきっと楽しめるはず。

 

最後にユーミンから、あなたへのメッセージを紹介したい。

 

“脳のお産”を繰り返し

生まれて来た

私の大切な子供たち。

 

彼らが長い歳月を超えることを

可能にした

松任谷正隆との出逢いに

感謝するとともに

 

同じ時代を生きる、

敬愛するあなたに、

この作品をお届けできる幸せを、

また、これからの力に

変えてゆきたいと思っています。

 

2018年4月 松任谷由実