BIOGRAPHY

DREAMERS / ドリーマーズ


人生における生きがいというのは一つの思いつきから生まれるものだが、その夢を叶えるには、努力、創造性と希望を注がなければならない。それを正に体現しているのがドリーマーズである。フロントマンのニック・ウォルドの「ロック・スターになりたい」という到底無理そうな夢から生まれたプロジェクトだ。「もともとは18歳の時にジャズを学びにニューヨーク大学に行ったけど、その途中でもっと分かりやすく、自分らしい形で人に伝えたいって気づいたんだ」と彼は語る。それを受けて2014年に彼は週1で働きながら毎日5時間ギターの練習ができるよう、ブルックリンのブッシュウィックにある薄汚れた練習部屋に転居する。「シャワーのために20ドルでジムの会員になった。部屋はネズミと落書きだらけだったけど、今にして思うと、自分にとっては凄く充実した時間だった。初めて毎日24時間曲作りに没頭することで、それまでできなかった、自分なりの表現を見つけることができたんだ」

幸運にも、ちょうど曲が出来始めた頃、ニックはベーシスト/キーボーディスト/ヴォーカリストのネルソンと出会い、二人は共に活動することにする。「ネルソンと出会った時、彼は多くのバンドに在籍してきて経験豊富だったけど、音楽を続けるか悩んでいるところだった。だからまたとない絶好のタイミングだったんだ」とニックは語る。そこから彼らは、バンド名の通り、驚く程の速さで夢を実現していく。その年の後半にはセルフ・タイトルのデビューEPをリリースし、ドリーマーズのデビュー・シングル「Wolves (You’ve Got Me)」は新人としては異例の快挙となるシリウスXMのAlt Nationでローテーション入りを果たした。そしてバンドは再び幸運に恵まれる。2015年に拠点をLAに移した後、初代ドラマーの後任としてドラマー/ヴォーカルのジェイコブ・ウィックが加入し、本格的にツアー活動を開始する。翌年にはFairfax Recordingsより、ヒット曲「Sweet Disaster」を収録したデビュー・アルバム『This Album Does Not Exist』をリリースする。続いて、バンドは2018年に『LAUNCH』 と『FLY』の2作のEPをリリースする。

DREAMERSはデビューから5年間で多くの貴重な経験をしてきた。ストーン・テンプル・パイロッツの2015年全米ツアーの前座に抜擢され、アリーナ・ロックの壮大さを経験し、Meadows Music & Arts FestivalではJay-Zやゴリラズと並んで出演を果たした。それと同じくらい、恋人との別れや個人的な苦悩などのどん底も味わった。その二面性がバンドのセカンド・アルバム『LAUNCH FLY LAND』にそのまま表れている。「先の2枚のEPは自分に起きた大きな別れがテーマになっていて、今作の曲はその後に書いた。ある意味、このアルバムは僕が自分を再発見している音なんだと思う」とニックは語る。周りに馴染めないはみ出し者の気持ちを歌う、甘いシンコペーションの効いた「Vampire In The Sun」から、孤独と切望が漂う「Insomniac」まで、アルバムの随所に疎外感が内在する。

その一方で、ファースト・シングルのクセになる「Die Happy」といった曲で見事にバランスをとっている。「失恋の心理的負担を乗り越え、またラブソングを好きになり始めた頃に「Die Happy」を書いたんだ。とにかくザ・ビートルズが好きでたまらなくて、特に喜びに満ちた初期の作品が好きで、ああいうノリの曲を書きたいと思ったんだ。「生きていて良かった。これで幸せに死ねる」と思えるちょっとした瞬間についての歌だよ」同様に、「Someway, Somehow」についてもニックは自分がこれまで書いた最も率直なラブソングだと語る。「恋した時のときめきだったり素敵な気持ちについて歌っているんだけど、最後の歌詞が「なんらかの形で、どういうわけか、君を失望させてしまうだろう」となっている。美しいと同時に切ない曲なんだ」演奏に対する瞑想的なアプローチと、新しい物の考え方に彼を目覚めさせた砂漠での幻覚的体験によってニックの世界観はさらに広がった。その体験から方向性は「Celebrate」といった曲に表れている。

バンドは当初2018年の『LAUNCH』とそれに続く『FLY』ともう一枚、3作連続でEPをリリースする予定だったが、三部作の完結編に向けてあまりに多くの曲が出来てしまったため、3作目のEPはバンドにとっての2作目となるフル・アルバムに姿を変えたのだった。レコーディングはバンドのライヴのサウンド・エンジニアを長年務めてきたタイラー・テデスキが行った。ネルソン曰く、「このアルバムの取り組み方は僕にとって新鮮だった。実質2年かけてじっくり曲作りをし、可能な限りたくさんのアイディアを出し合ったんだ。それまでは、限られた時間の中で、常に締め切りとの戦いだったから、今回は時間を掛けられた分、自分たちもより深く掘り下げて曲作りができた」制作中、ドリーマーズは盟友であるジョイウェーヴのヴォーカル、ダニエル・アームブラスターの手も借りた。「オルタナティヴというのは、もはやロックの楽器編成にこだわる必要はないんだ。メインストリームとされる音楽より、少しだけ深く掘り下げたものだったらいいんだ」とニックは語る。

我々のほとんどは、ストーン・テンプル・パイロッツの亡きフロントマンのチェスター・ベニントンにツアー中バンの中で寝なくていいようホテル代を出してもらったというような経験はしていないかもしれないが、『LAUNCH FLY LAND』に込められた歓喜と悲劇の感情は誰もが抱えているものである。これらの曲でそういった経験を全て肯定する形で、ドリーマーズはトンネルを見事に抜け出したのだ。「ツアーに出て、これらの曲をみんなの前で演奏するのが待ちきれない。言ってしまえば、そのためにやってるわけだからね」