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ルドルフ・ブッフビンダーがドイツ・グラモフォンと契約

2019.04.19 TOPICS

ベートーヴェンの大家として知られるオーストリアのピアニストが
新たな契約のもとで画期的な〈ディアベリ変奏曲〉プロジェクトに挑む

・現代の作曲家11人に、新たに変奏曲の作曲を委嘱
・ブッフビンダーは新作の録音をおこない、2020年の世界ツアーで演奏

Rudolf Buchbinder © Marco Borggreve

高名なピアニストでベートーヴェンのスペシャリストとして知られるルドルフ・ブッフビンダーが、ドイツ・グラモフォンと専属契約を結んだ。その契約にもとづく同社での最初の録音は、ベートーヴェンの記念碑的作品〈ディアベリの主題による変奏曲〉になる予定である。この録音は、ベートーヴェンの生誕250周年を迎える来年に先駆けた、画期的な企画となる。

ブッフビンダーはベートーヴェンの〈ディアベリの主題による変奏曲集〉を、早い時期に録音しているが、今回はディアベリの主題にもとづく変奏曲を現代作曲家11人に委嘱する企画を実現させた。この新しい変奏曲集はドイツ・グラモォンで録音されるほか、2020年のツアーでも披露される予定である。彼が変奏曲を委嘱した作曲家は、クシシュトフ・ペンデレツキ、ロディオン・シチェドリン、ブレット・ディーン、マックス・リヒター、イエルク・ウィトマン、細川俊夫、レーラ・アウエルバッハ、ブラッド・ラブマン、フィリップ・マヌリ、ヨハネス・マリア・シュタウト、タン・ドゥンの11名である。

ブッフビンダーが現代作曲家に新たに作曲を依頼したことは、原曲である〈ディアベリ変奏曲〉の作曲された経緯にも重なるところがある。楽譜出版者で作曲家であるアントン・ディアベリは、32小節からなる〈ドイツ舞曲〉(ワルツの先駆け)を書き、50人を超えるオーストリアの作曲家に送り、原曲の主題をもとに独自の変奏曲を書いてほしいと依頼した。ディアベリの依頼に応じた作曲家の中には、カール・ツェルニー、フランツ・シューベルト、モーツァルトの息子フランツ・クサヴァー、ヨハン・ネポムーク・フンメル、フランツ・リスト(依頼を受けたときは、まだ8歳そこそこだった)などが含まれていた。ベートーヴェンは主題が凡庸だとして作曲を断ったものの、その4年後には、みずから〈ディアベリのワルツにもとづく32の変奏曲〉を書いて出版元に送っている。のちにこの変奏曲集は、指揮者ハンス・フォン・ビューローによって「ベートーヴェンの天才がつくりあげた小宇宙」と讃えられた。

ブッフビンダーの新録音は、2020年3月にドイツ・グラモフォンから発売予定である。そしてこの11曲の作品は、ウィーン・ムジークフェラインで世界初演される予定である。このコンサートでは、ベートーヴェンの変奏曲集、ディアベリのオリジナル曲集から選ばれた作品も演奏される。それに続いてブッフビンダーは、11の新作品を含めたプログラムで世界各地に演奏旅行をおこなう。

ルドルフ・ブッフビンダーは、つぎのように語っている。「60年以上におよぶコンサート活動の中で、私が目標としてきたのは、最終的な演奏解釈の中で伝統と革新性、忠実さと自由、確実さと寛容を、つねに融合させることでした。ドイツ・グラモフォンは、こうした私の価値観を常に認めてくれました。この姿勢は、芸術表現の世界ではみごとな手本と言うべきものです。私は今後もこのような形で手を携えていけることを、楽しみにしています」

ドイツ・グラモフォン社長クレメンス・トラウトマンは、こうつけ加えている。「ルドルフ・ブッフビンダーは、ベートーヴェン音楽の真髄を深く把握しています。だからこそ、ピアニストの中でも群を抜いた形で、これらの作品からつねに新たなものを見いだせるのでしょう。〈ディアベリ変奏曲〉の企画は、ベートーヴェンの記念年にあたって、特別な成果をもたらすと確信しています。ベートーヴェンとその同時代の人びととのあいだに、そして現代の音楽家と音楽ファンとのあいだに橋をかけるのですから」

ブッフビンダーにとってベートーヴェンは、幼い頃からの心の友のような存在だった。1946年生まれで、神童と呼ばれた彼(ウィーン音楽院に5歳で入学し、音楽院ホールに11歳でデビュー)は、ベートーヴェンのソナタ全曲だけを、何十年も勉強し演奏し続けた。1970年代のはじめから、ブッフビンダーは32曲のソナタ全曲演奏をなんと50回もおこなった。彼はベートーヴェンの〈ディアベリ変奏曲〉を最高の難曲と指摘し、「技巧的にも、知的な理解の面でも肉体的な面でも難度が高い」、「登頂がむずかしい巨大な山」と語っている。

2019年から20年にかけてのシーズンにブッフビンダーは、ウィーン楽友協会の150年におよぶ歴史の中で、ベートーヴェンの5作のピアノ協奏曲を、同協会ホールで5つのオースケトラと5人の現代最高の指揮者と共演した最初のピアニストとして、表彰される予定である。その指揮者とオーケストラは、アンドリス・ネルソンス指揮ゲヴァントハウス管弦楽団、ワレリー・ゲルギエフ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、クリスティアン・ティーレマン指揮シュターツカペレ・ドレスデン、マリス・ヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団、リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団である。

ベートーヴェンの生誕250周年を迎える記念年には、ブッフビンダーによる数々の録音計画と世界ツアーに加え、これらのオーケストラによる演奏会が予定されている。


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