<ライブ・レポート>ハリウッド・ボウル公演

2018.07.04 TOPICS

6月20日に1万7500人の観客を前にロサンゼルスのハリウッド・ボウルで行ったライヴ・レポートが到着!
LA在住エンタテーメント・ライター/翻訳家のD姐による臨場感溢れるレポートです。

 
世界的テノール歌手、アンドレア・ボチェッリの歌声に1万7500人の観客が酔いしれた。昨年秋から始まった北米ツアーでは、すでにニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン2デイズを含め大成功を収めているが、満を持して再開された西海岸を中心とした公演もいよいよ終盤となったのが、カリフォルニア州南部最大の常設野外コンサート会場、ハリウッド・ボウルでのコンサートだ。

 あの有名なハリウッド・サイン東側に頂くハリウッド・ヒルズの中腹に位置するハリウッド・ボウルでは、地形を利用してその名(Bowl=お椀)の通り、すり鉢状に並んだ客席の開放的な環境の中、本格的なクラシックコンサートが多数行われることでも知られ、世界各地で熱狂的なファンを持つアンドレア・ボチェッリのコンサートにうってつけの場所であり、必ずと言っていいほどロサンゼルス公演はこの老舗ヴェニューで行ってきた。会場入り口のマーキーには当然のように「ソールド・アウト」の文字が掲げられている。この日は過去に共演もしたシンガーのアッシャーや、「007シリーズ」の俳優ピアーズ・ブロスナン、人気女優エマニュエル・シュリーキーといったセレブたちも来場したようだ。

 初夏の訪れを感じさせつつある6月下旬、ようやく太陽が沈みかけようかという午後8時20分過ぎに指揮者ユージン・コーン率いるロサンゼルス・フェスティヴァル・シンフォニーによるクラシック・メロディーの演奏が始まり、アンドレ・ボチェッリの登場を待つ。指揮者に伴なわれて、ステージ上のオーケストラと合唱団で優に100名を超える楽団の前に現れた青いタキシードに蝶ネクタイ姿のアンドレアに、会場からは割れんばかりの拍手と歓声が起こった。

 オープニングはプッチーニの代表作の一つである『トスカ』からの「Recondita armonia」(妙なる調和)。この曲は三枚目のアルバムで国際的なオペラ歌手として認知された若きアンドレアが、この地位を不動のものとした大ヒット・アルバム『ARIA – THE OPERA ALBUM / アモーレ~オペラ・アリア集』(1998)にも収められ、翌年アンドレアはオペラ歌手でありながらグラミー賞の新人賞にノミネートされるという快挙を成し遂げた。円熟味を増した彼のテノールの歌声が最大限に発揮される壮大なアリアだが、続いてリゴレットから「風の中の羽のように~女心の歌(La donna è mobile)」のパフォーマンスでは、オペラ歌曲で史上最も愛され続けるこの楽曲を軽快かつ荘厳に歌い上げた。

 今公演は2部構成となっていて、1部では「ラ・ジョコンダ」や「アイーダ」と言ったオペラの名曲レパートリーからの選曲でまとめられ、女性ソプラノ歌手のアナ・マリア・マルチネスも登場。「おお麗しの乙女よ(「ラ・ボエーム」)」や「ロメオとジュリエット」からの楽曲「Va! Je T’ai pardonné… Nuit D’hyménée!」と言ったデュエットで聴かせてくれた、愛する男女の情熱的で妖艶な掛け合いは、その美しさと情緒溢れる歌声に心が震え、思わず鳥肌が立つ。また男女のクラシックバレエ・ダンサーによる官能的なパフォーマンスがあったり、ステージ中央の巨大スクリーンには曲に合わせた歌劇シーンやイメージ映像も映し出されると言った趣向も凝らされて、個々の音楽の作り出す世界観を観客に訴えかける。

 そして2部ではアンドレアの真骨頂とも言える、オペラティック・ポップやイタリアのカンツォーネによる集大成となった。彼の前作である映画音楽のラブソングを歌い上げた『シネマ~永遠の愛の物語』からの楽曲である「愛のテーマ 」(『ゴッドファーザー』)、「マリア 」(『ウェスト・サイド・ストーリー』)といった映画音楽の名曲を映画の都ハリウッドで、しかもアンドレアの世界最高峰のテノールで聞く気分は格別としか言いようがない。

 また彼が敬愛する故ルチアーノ・パヴァロッティの十八番としても知られる「オー・ソレ・ミオ」のパフォーマンス中にパヴァロッティの映像が映し出されると、観客からは一段と大きな歓声が上がり、会場が一つとなってイタリアの太陽を浴びたかのような暖かい空気に包まれた。ゲスト・シンガーとして登場したR&B/ゴスペルシンガーであり、ミュージカル『アイーダ』でトニー賞最優秀主演女優賞も受賞した実力派アーティストのヘザー・ヘッドレイとは、セリーヌ・ディオンとのデュエットで大ヒットした「祈り」などをデュエット。威厳に満ちたアンドレアの歌声とグルーブ感のあるパワフルなヘザーのヴォーカルによるパフォーマンスは、アンドレアが確立したクラシック・クロスオーバーを新たな異次元レベルに昇華させる見事なものだった。

 そしてこの日のコンサートでツアー初パフォーマンスという嬉しいサプライズとなったのが、10月26日にリリースされると発表になったばかりの14年ぶりとなる全曲オリジナルソングのアルバム『Sì~君に捧げる愛の歌』(原題:Sì)からの先行シングルである「イフ・オンリー ~愛しいあなたへ」(原題:If Only)。アンコールで登場すると「僕にとってコンサートで一番難しいのは、英語で話しをすることなんですが(笑)。『Sì~君に捧げる愛の歌』という全曲オリジナルのアルバムを作りました。新作からの一曲です。聞いてください」と、この日の最初で最後のMCではにかみながら紹介した。母国語のイタリア語で歌唱された「イフ・オンリー」は、永遠に再び会えることのない愛する人への思いがより一層にエモーショナルに響き渡り、優しくも真摯なアンドレアの歌声が心に染みる。そしてコンサートは遂にクライマックスへ。世界中から今尚愛される名曲中の名曲「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」、「誰も寝てはならぬ」(『トゥーランドット』)というお馴染みの曲で、2時間あまり20数曲に上る珠玉のコンサートは観客のスタンディングオベーションと「ブラボー!」という掛け声が止まない中、幕を閉じた。


D姐
LA在住エンタテーメント・ライター/翻訳家。
米国ハリウッド在住。セレブやエンターテイメント業界のニュースを独自の切り口で紹介する、アクセス総数5億ページ超の大人気サイト『ABC振興会』を運営。多数のメディアで音楽やセレブに関する執筆、現地ロサンゼルスでのテレビやラジオ、雑誌用のセレブやアーティストのインタビューやレッドカーペット等の取材をこなす。

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