THE MUSIC / ザ・ミュージック
「渇望がそこにはある」ザ・ミュージックのロブ・ハーヴェイは来月発売になる自身のバンドの新作『STRENGTH IN NUMBERS』をたきつける精神性を象徴するかのように断言する。「ハングリーさを取り戻したんだ。人々を結束させ、気持ちを昂揚させるってことなんだ。」挑戦的であり、楽観的であり、団結したザ・ミュージックの3作目は、彼等の前向きさ、且つ溢れんばかりの活気が感じ取れる。しかしながら、バンドのフロントマンが示すように、新作を出すバンドにありがちな空威張りとは違う、これは苦労して勝ち取った自信なのである。
まだ20代半ばになったばかりだというのに、ロバート・ハーヴェイ(ヴォーカル)、アダム・ナッター(ギター)、スチュアート・コールマン(ベース)とフィル・ジョーダン(ドラム)は悪戦苦闘の末ここに辿り着いた。彼等は崖っぷちに立ったバンドである。でも、全てが崩れて塵となる前に引き返すことができた。
前作『WELCOME TO THE NORTH』をリリースしてから4年近く経つが、今のザ・ミュージックはこれまで以上に活気に溢れ、確固たる決意を持ち、力強い。しかしこの精神状態は彼等がどん底から這い上がり、『STRENGTH IN NUMBERS』の制作に自分達の全てを注いだ結果勝ち得たものである。
「アルバムが闇から生まれたのは間違いない。ある種の切迫感が根底にある。脈打っている」と新作のシンガーは語る。「随分時間が空いてしまって、その間俺達は多くのことに直面した。だから何か特別なことをしなきゃ駄目だって気付いたんだ。全ての曲が作る価値のあるものじゃなきゃ駄目だって」
『STRENGTH IN NUMBERS』には彼等の確固たる自信が伺えるが、前作をリリースした頃、牽引力を失ったことをバンドは認める。デビュー作で見事なまでにビートとグルーヴとロックンロールのハートを融合させてみせ、その他大勢のバンドとは明らかに一線を画したバンドにとって、残念でならない躓きである。
2001年に彼等は突如として現れた。リーズ東部の3マイル圏内で全員育ち、中には生まれてからずっと顔見知りもいるという結束の固い仲間の少年達だ。高校を卒業して直ぐに彼等はHut Recordsと契約し、とてつもない自分達の力を信じる心と情熱でもって、2002年の最もワクワクさせられる新しい音楽旋風になるだろうと布告された。
彼等の初期のライヴはバンドの野望を祝う過剰な数の好意的な評価を集め、デビュー・アルバムが出る頃にはイギリスで最も熱い才能という評価を不動のものにした。また、彼等の高揚感溢れるライヴのお陰で、ザ・ミュージックは人々の気持ちも考えも変えることのできるバンドとして知られるようになる。まだ全員10代という年齢にも関わらず、彼等は100万枚以上のアルバムを売り上げた。U2、コールドプレイ、オアシス、そしてニュー・オーダーといった他のバンドからも注目を集め、世界各地のスタジアムで彼等の前座を務めて回るようになった。
彼等は全てを持っているバンドだった。人々が信じることのできる本物のバンドであり、謎めいたかっこ良さがあるバンドであり(ピーター・サヴィルやストーン・ローゼーズのように、著名アーティストのニック・カーターが手がけた彼等のアートワークは一貫したテーマがある)、ブリクストン・アカデミーやブラックプールのエンプレス・ボールルームやレディング・アンド・リーズ・フェスティバルの数々のステージでヘッドラインを務めるバンドであり、日本のフジロック・フェスティバルやオーストラリアのビッグ・デイ・アウトといった海外のフェスでもヘッドラインを務めた経歴が示す通り世界に訴える感性をもったバンドなのである。
2作目の『WELCOME TO THE NORTH』が直ぐ後に続いた。おそらく直ぐ過ぎたのかもしれない。過酷なアメリカ・ツアーの連続を、まだ若いバンドは全てを受け止めるのは難しかったと今になって認める。考えてみれば、全員まだ20歳にも達していない中で、高校卒業後の2年間の間にキャリア全てを押し込まれたのである。バンドを結成してから彼等がやり遂げたことは、多くのバンドが一生かかっても成し遂げるのに苦戦するだろう。
「問題だったのは、18歳から24歳っていうのは、普通の会社務めの仕事をしてたって精神的に凄く成長する時期なんだ。それだけでもストレスなのに、自分達はツアーをしながらそこに直面した」とロブはザ・ミュージックが陥った穴について説明する。
初めから情熱と信念が原動力だったバンドにとって、自分達が作った2作目にバンドが満足していないことに気付いたことは決して状況を助けてはくれなかった。「アメリカに対応していくことが一番難しかった」とロブは認める。「あれだけ多くの人達に訴えるものがあるのは当然魅力的。U2やコールドプレイといったそれを達成できたバンドのことを考えると、それは多くのバンドにとっての夢だと思うし、自分達も挑戦した。でも、あの時点では曲がまだ未熟だったこと、そして自分達がどれだけ疲れていたかということに気付いてなかったんだ」
しかしながら、何事もなかったかのようにそのまま黙って、ファンが不満を漏らさないことをいのりながら最後まで行こうとするバンドもいる中、ザ・ミュージックの場合は自分達が信じられるものを作ることへのこだわりと欲求が彼等を切り裂き始めていた。
「自分自身を見失ってしまっていた」とロブは率直に認める。「被害妄想に取り付かれてしまってんだ。だから自分自身を取り戻すのに休養が必要だった。俺達が誤解された一番の要因は、俺達でさえも自分達が何者なのかわかっていなかったからなんだ。物事を変えていく必要があった」
自分達の旧レーベルのヴァージンを離れるということもあった不安な時期を経て、ザ・ミュージックは個人個人として、そしてバンドとして再び前進していた。目的のないジャム・セッションや、他にいいものがないからというだけで気に入らない曲を演奏し続けることをきっぱりと止める代わりに、デビュー作を焚き付け、駆立てた、炎が再び灯ったのである。それに加え、ポリドールと新しい契約を交わしたこともあり、ロブとギタリストのアダム・ナッターが自宅で何度か曲作りのセッションを重ねて行く中で焦点が絞られ、ムダのない、統制のとれた、胸を張ってアルバムに入れることのできる前よりも根本的にいい曲が生まれた。
「2007年に2、3本ライヴをやった中で、シェフィールドでのライヴの後に「バンドを良くするか、解散してみんな普通の仕事につくしか道はない」って話をした」とロブは語る。「解散なんて誰も望んでいなかったから、全員で腰を据えてみんなで頑張ることを決意したんだ。それくらい俺達にとっては大事なことだった」
その最後通達の結果が『STRENGTH IN NUMBERS』だ。アルバムのタイトルは、今のバンドの結束力を意味すると同時に、現在の社会と呼ばれる粉砕された孤独な世界に対する対抗手段も示している。団結することを個々に訴えているが、それは自分の周りの世界ともっと関わりを持つ事、携わる事、繋がりを持つ事、を意味している。
「断固とした態度を持ち、自分自信を受け入れることで明るい未来があることに気付くことなんだ」とロブは語る。「アルバムの多くの曲が個人の精神的な葛藤を歌っている。悲観的な考えに負けないこと」
オービタルのメンバーだったポール・ハートノールとキラーズやU2との仕事で知られるフラッドばプロデュースを手がけている。聞き所としては、バンドのこれまでで最も繊細な瞬間と空をも突き破るアンセムを行き来する”The Spike”、ダンスフロア映えするビートと社会的良心の見事な融合に酔わされる ‘Drugs’、「黙って消えていきはしないぞ」というバンドの強い意志の完全な駆立てられる表明でもある‘No Weapon Sharper Than Will'等がある。総じて『STRENGTH IN NUMBERS』でザ・ミュージックは見事に生まれ変わり、焦点を取り戻し、大衆と再び繋がろうとしている。
間違いを犯し、再出発で躓き、正真正銘どん底を舐めた後、自信を取り戻して再び舞い戻ってきたザ・ミュージックは、自分達が単に聞くだけのアルバムを作ったとは思っていない。『STRENGTH IN NUMBERS』は人生を共にする作品である。
「人々を結束させ、気持ちを昂揚させるってことなんだ。」とロブは繰り返す。「自分達の力では世界を救えないのはわかっているけど、みんなを無意識から呼び覚まし、世界と繋がっていると思える為に自分達なりのことはできると思っている。自分がこれらの歌を歌っている時と同じ気持ちをみんなに感じてもらいたい。切り離されていないその瞬間をみんなに味わってもらいたい。みんなに好きに自己表現してもらいたい。そうさ、自信過剰が帰ってきたのさ!」
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