<レポート>「Yellow Lounge Tokyo 2018」

2018.09.13 TOPICS

© Ryota Mori

 
“世界最高峰のクラシック・ミュージックと究極のデジタルアートの邂逅”をテーマにしたクラシック・イベント「Yellow Lounge Tokyo 2018」が、9月12日にお台場にある「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス」で開催された。

会場となった「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス」内にあるアート「人々のための岩に憑依する滝」には、販売開始からわずか9分で完売したチケットを手に入れたアート/音楽シーンに敏感な女性たちを中心に、さらにメディア関係者を含め約100名が会場に詰め掛けた。

イベントは22時に開演。岩の上に、滝が流れ落ち、花が散っていく作品空間の中で、若手クラシカルDJであり指揮者のAoi Mizuno(水野蒼生)が登場、R.シュトラウスやホルストの「火星」などのクラシック音楽をミックスした「THE LATEST ROMANTIC」で幕を開けた。リヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」の有名な序奏部からホルスト「火星」のミックスによる壮麗なサウンドに包まれると、会場は宇宙空間のような幻想的な世界に変化した。Aoi Mizunoはまるでオーケストラを率いる指揮者さながらのDJプレイで観客を魅了した。

続けてスペシャル・ゲストとしてジャズ・ピアニストの山中千尋が、ベース、ドラムと共に登場。メドレー「Taxi-Gennarino suite」をトリオで演奏を開始すると、会場の空気は一転してディープな世界に様変わり。山中の奏でる軽やかなタッチと、ベース&ドラムの絶妙なセッションで聴衆を心地よい空気が包みこんだ。終盤「八木節」をモチーフにした快速テンポのメロディに移ると山中のピアノは一気に熱を帯び、そのまま一気にフィニッシュ。熱狂的な拍手が巻き起こった。

ここで再びAoi Mizunoが登場、ベートーヴェンの交響曲第9番《合唱》などをモチーフにした「MELODY WITH YOUR DNA」をパフォーマンス。優しく繊細なサウンドで熱気を帯びた会場の空気はクールダウン。そして再び、マーラーの交響曲第1番《巨人》のメロディが登場すると、続けてブルックナーの交響曲第4番やショスタコーヴィチの交響曲第7番《レニングラード》の勇壮なメロディが姿を現わしクライマックスは「第九」の壮大なメロディで、次のステージにバトンを引き継いだ。

そしてドイツ・グラモフォンが誇る一流の演奏家であり、若手随一のテクニックと人気を誇るピアニスト、アリス=紗良・オットが登場。8月にリリースしたばかりのアルバム『ナイトフォール』から、ドビュッシーの「夢想」、サティの「グノシエンヌ第1番」、ドビュッシーの「月の光」を続けて演奏した。二度と同じ瞬間を観ることができない幻想的な空間と、アリスの美しく儚いピアノの音色で、会場はアルバム『ナイトフォール』のコンセプトでもある「逢魔が時」を思わせる特別な空間が現れた。最後の曲「月の光」の演奏が終了すると会場はしばし静寂に包まれた。その様子はまるで消え行く特別な空間を惜しむかのよう。

イベントの最後を飾る世界最高峰のチェロ奏者ミッシャ・マイスキーを迎え、アリスの伴奏と共に、マスネの「タイスの瞑想曲」とサン=サーンスの歌劇《サムソンとデリラ》から「あなたの声に我が心は開く」を披露、甘く切ないチェロの音色で聴衆を包み込んだ。そしてイベントのラストを飾る曲、ファリャのバレエ《恋は魔術師》から「火祭りの踊り」では、マイスキーとアリスのスリリングなアンサンブルが会場を沸かせた。

温かい拍手が起きる中、Aoi Mizunoが再度登場し「REACH OUT TO UNIVERSE」をパフォーマンス。モーツァルトの有名曲「ジュピター」や、ホルストの「木星」、ベートーヴェンの「運命」をベースにした壮大な世界を披露すると、再び会場からは大きな拍手が巻き起こり、イエローラウンジ東京は大盛況のうちに幕をとじた。

本公演にスペシャル・ゲストとして出演した山中千尋はイベントを振り返り、「2001年9月11日の直後、世界中の人々の幸せと平和を願いタクシーという曲を作曲しました。NYタクシーの黄色は多様性と情熱、太陽の色。そしてそれは偉大なグラモフォンのシンボルカラーです。この素晴らしいコンサートで演奏できたことを大変光栄に思います」と語った。

「Yellow Lounge」は、今年創立120周年を迎えたクラシック最古のレーベル=ドイツ・グラモフォンが、よりリラックスした雰囲気でクラシック・ミュージックを楽しめるよう、ドイツのハンブルクでスタートさせたイベント。そんな「Yellow Lounge」が、世界中で賞賛を浴びるウルトラテクノロジスト集団“teamLab”とコラボレーションし、日本に本格上陸を果たした本公演では、日本発祥で世界初の電子楽譜専用端末“GVIDO”も使用された。

本公演の模様は、ドイツ・グラモフォンのオフィシャルYouTubeチャンネルで当日生中継され、現在もアーカイヴ公開されている。

「Yellow Lounge Tokyo 2018」

https://youtu.be/s3eZL7XkuQQ