<連載>全3回にわたって『オルゴールで聴く 東京ディズニーリゾート®』の魅力に迫る連載記事の【パート1】を公開。音源制作を手がけた浅倉大介さんのコメントを掲載!

2025.11.20 TOPICS


 『オルゴールで聴く 東京ディズニーリゾート』は、その名の通り、東京ディズニーリゾートから生まれた名曲の数々をオルゴールでアレンジしたアルバム。音源制作を手がけたのは、ミュージシャン/音楽プロデューサー/作・編曲家として数え切れないほどのヒットを放ち、大のディズニー好きとである浅倉大介さん。細部までこだわり抜いた、これまでにないオルゴールサウンドが楽しめます。このアルバムの魅力を、浅倉さん本人へのインタビューを交えつつ、3回にわたってご紹介。今回はそのパート1「音色へのこだわり」について。

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 「ディズニーのオルゴール・アルバムを作ってほしいというお話をいただいて、まず頭に思い浮かんだのが、1992年にリリースした僕のソロアルバム『D-Trick』に収録した「1000年の誓い」という曲でした。オルゴールのイントロで始まるのですが、そのために実物を分解し、1音1音マイクで拾ってサンプリングしたんです」という浅倉さん。オルゴールの音色へのこだわりは、すでにここから始まっていました。

 オルゴールと聞いて多くの方が思い浮かべるのは、美しい箱に収められたシリンダー式のものでしょう。ゼンマイを回すとシリンダーが回転し、その表面についている突起(ピン)が、クシの歯のように並んだ金属の板(櫛歯)をはじいて音が出る仕組み。浅倉さんは「1000年の誓い」の制作当時、1本1本の櫛歯の音だけでなく、ゼンマイを巻く音や、シリンダーの回転音もサンプリングしたといい、その音が30年以上の時を経て、『オルゴールで聴く 東京ディズニーリゾート』に使用されています。

 今回のアルバム収録曲は、浅倉さんが大好きなパークミュージック。しかも、東京ディズニーリゾートのショーやアトラクションから生まれたオリジナルソング限定で、原曲自体に凝ったアレンジが施されているものが多いのです。それをオルゴールで表現するにあたって、自身でサンプリングした音だけでなく、公開されている音源ライブラリのなかから、魅力的な音源を探し回ったそう。

 「ヴィンテージなものから、シンセサイザーで音の揺らぎまで調整できるように作られた最新式のオルゴール音源まで、7~8種類は使ったかな。さまざまな音色に触れ、それを使ってどんな表現ができるかを考えているうちに、オルゴールの世界ってこんなに奥深かったのか!と、すっかりハマりました」。

 世の中にはオルゴールのアルバムがあふれていますが、そのほとんどが1音色だけで作られていることを考えると、本作がいかに特別か、お分かりいただけるのではないでしょうか。

 そんな個性豊かなオルゴールの音色を、曲に合わせて使い分けているのですが、浅倉さんによると、オルゴールはその特性ゆえに、表現がとても難しいのだとか。

 「音には“高さ”と“長さ”と“強さ”の3要素がありますが、オルゴールはピンが櫛歯を機械的にはじくので、強弱はつけられない。1回はじいたら余韻を途中で止めることができないので、音が響く長さも変えられません。そこで、曲や(そのオルゴールが奏でる)パートに合わせて、ライブラリから適切な音色を選び、それぞれの個性を活かしたアレンジをするようにしました。たとえば、細かいフレーズが多いパートには、余韻の短いオルゴールを使ったり、1音ずつポ~ンと響かせたいパートには、ふくよかな余韻を持ったオルゴールを使ったり。最初は試し試しでしたが、だんだんと音色の使い分けが上手くなった気がします」。

 わかりやすい例として浅倉さんが挙げてくれたのが、アルバム10曲目に収録されている「エヴリ・ウィッシュ・ディザーヴ・ア・ドリーム」。東京ディズニーシーのナイトタイムエンターテイメント「ビリーヴ!~シー・オブ・ドリームス~」のテーマソングとして知られるこの曲では、音色の異なる3台のオルゴールがアンサンブルを奏でています。

 「右側で細かくアルペジオを刻んでいるのは、小柄なオルゴールで余韻も短め。左側は比較的大きめで余韻の長い、温かい音色のオルゴールで、コードを弾いています。メロディは中央で、幻想的な響きを作り出すシマーリバーブというエフェクトをかけ、奥行きを出しました」。

 オルゴールの大きさはあくまでイメージですが、聴けばなるほど!とうなずいてもらえるはず。ちなみに、定位(オルゴールをどのように配置するか)も浅倉さんがこだわったポイントのひとつなので、ぜひ一度、ヘッドホンやイヤホンでじっくりと聴いてみてください。

 さらに!浅倉さんならではの型破りなアイデアに驚かされるのが、アルバム2曲目の「ジャンボリミッキー!」。ご存じのように、原曲は誰もが踊り出したくなるダンスナンバーで、“ズンズン”や“ハッハッ”といったかけ声も印象的。ただでさえ音数が多いうえ、オルゴールが不得意とする同じ音のリズミカルな連打が含まれています。普通の発想なら、曲調を変えてスローなアレンジにするところですが、浅倉さんは意外な音を使って、原曲の持つ遊び心やグルーヴ感を表現してくれました。

 「何かオルゴールの音色じゃないものを入れたいなと思って。そこでひらめいたのが、ゼンマイを巻く音と(オルゴールが入っている箱の)フタを開閉する音。それをパーカッションにしちゃえ!と。オルゴールでも踊りたくなる曲に仕上がったので、振り付けを覚えている方はぜひ」。

 踊れるオルゴールの曲なんて、他の誰にも作れないのでは? 曲のバックには、シリンダーが回転するジーっという音が聞こえますが、フタを閉めるとその音も止まる。そんな細かいところにもこだわりを感じます。

 パート2では、アレンジの魅力にフォーカスします。お楽しみに!

●浅倉さんのお宝オルゴール


1998年にミッキーマウス70周年をお祝いして制作されたトリビュートアルバム『We Love Mickey〜ハッピー70thアニバーサリー』(現在は廃盤)に参加したとき、記念にプレゼントされたもの。箱はもちろん、メカ部分の美しいこと! ちなみに、このときは2曲のみの参加でした。「ディズニーの公式アルバムに携わるのは今回で2回目ですが、フルアルバムの世界観を任せてもらえたのは、とても光栄で幸せです!」

《取材・文:エンターテインメントライター うきたひさこ》


【商品情報】

オルゴールで聴く 東京ディズニーリゾート
発売日 :2025年11月19日(水)
CD仕様 :1CD(通常仕様/浅倉大介による全曲解説つき)
CD品番 :UWCD-6074
CD価格 :税込3,300円
ダウンロード価格 :各ストアに準じます

 
音源制作:浅倉大介(あさくら・だいすけ)

音楽プロデューサー、作曲家、編曲家。貴水博之さんとのユニットaccessのキーボーディスト。⼤のディズニー好きで、ミュージシャンならではの観点からディズニー作品の魅力を各メディアで紹介している。

≪収録楽曲≫
1. ハッピー・ソング(「ベイマックスのハッピーライド」より/オルゴール・バージョン)
2. ジャンボリミッキー!(オルゴール・バージョン)
3. イッツ・ベリー・ミニー!(オルゴール・バージョン)
4. マイ・フレンド・ダッフィー(オルゴール・バージョン)
5. ジャーニー・トゥ・ファンタジースプリングス(オルゴール・バージョン)
6. ファンタジースプリングス組曲(オルゴール・バージョン)
7. リビング・イン・カラー(オルゴール・バージョン)
8. イッツ・ユア・ソング(「ミッキーのマジカルミュージックワールド」より/オルゴール・バージョン)
9. Reach for the Stars(オルゴール・バージョン)
10. エヴリ・ウィッシュ・ディザーヴ・ア・ドリーム(「ビリーヴ!~シー・オブ・ドリームス~」より/オルゴール・バージョン)
11. ナイトフォール・グロウ(オルゴール・バージョン)
12. ミート・ザ・ワールド(オルゴール・バージョン)

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