ジャパン・ツアー東京公演初日のレポートが到着。セトリがプレイリストに

2025.09.15 TOPICS

9月12日(金)神戸GLION ARENA KOBE公演からスタートしたスティングの2年半ぶりとなる来日公演。全国5都市6公演の2日目であり東京公演初日となった有明アリーナ公演のライブレポートが公開となった。

また、この来日公演のセットリストがプレイリストとなって公開されている(https://umj.lnk.to/StingJapanTour2025)。

また、来日公演にあわせて世界で日本のみ発売となる2022年のライブ映像(約95分)を収録したCD+ブルーレイの『3.0 ライヴ(ジャパン・ツアー・エディション)』が9月10日(水)に発売されており、この商品を含む対象作品を購入することでスティングに直筆サインが当たる会場即売特典の情報も公開となっている(https://www.universal-music.co.jp/sting/news/2025-09-11-2/ )。

==レポートここから==

スティング、2年半ぶりの来日公演、東京公演の会場は、前回と同じ有明アリーナだった。東雲運河に面した、その美しく近代的な建物に向かって歩いていたとき、ふと、37年前の夏に彼のライヴを観たNY州のジョーンズ・ビーチ・シアターを思い出した。海面から浮き上がるようなイメージで建てられた素晴らしい景観の会場で、そのときスティングは、7人のミュージシャンを従え、自身はほぼヴォーカルに専念する形でステージに立ちつづけていたのだった。

そして2025年の初秋、間もなく74回目の誕生日を迎える彼は、あの当時とはまったく違うトリオ、つまり3人だけのユニットで有明アリーナを埋めた大観衆の前に立った。昨年2024年春から取り組んできた「スティング3.0」のプロジェクトが、ついに東京にもやって来たのだ。

開演時間ほぼちょうどに客電が落ちると、シャープな照明が飛び交うなか、ドミニク・ミラーのギターが響き渡り、そこに、クリス・マースのドラムスが斬り込むように重なる。そしてスティングのベースが加わり、東京初日の1曲目がスタートした。「孤独のメッセージ」だ。最小限の楽器編成によるまったく無駄のないパフォーマンスながら、客席に伝わってくる音圧には凄まじいものがある。どの音も、じつに芯が太い。そう表現したらいいだろうか。

あらためて紹介しておくと、ミラーは、90年代半ばからずっとスティングの創作活動にさまざまな角度から貢献してきたアーティスト。ジャズからハードなロックまでどんなスタイルも自然体でこなすことができる、スティングにとってはまさに相棒的な存在のギタリストだ。

マースはルクセンブルグの出身。2005年ごろからロンドンを拠点に、スタジオやツアーで経験を積み、腕を磨き、パンデミックの時期に出会ったスティングに認められて、「スティング3.0」のプロジェクトに参加することになったのだという。力強く、正確で、しかも表現力に富んだドラムスに刺激されて、そしてなにか大きな可能性を感じてスティングは新たな一歩を踏み出した、というほうが正解かもしれない。

2曲目は、「スティング3.0」としての最初のスタジオ録音作品で、『3.0ライヴ』にも収められていた「アイ・ロート・ユア・ネーム(アポン・マイ・ハート)」。ボ・ディドリーを彷彿させるヘヴィなリズムが貫かれていくこの曲は、3人による今後の活動の方向性を示すものでもあるのだろう。

さて、この東京初日、9月14日のスティングは、丈の短い山吹色のTシャツに、黒い細身のパンツとブーツ。Tシャツの色は使い込まれたプレシジョン・ベースともよくあっているのだが、その右胸のあたりにはヤシの木らしきものが緑色でプリントされていて、いつもながらのシェイプアップされた身体を際立たせていた。

このあと「ルーズ・マイ・フェイス・イン・ユー」、「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」、「マジック」とつづき、数年前からヘッドセット・スタイルのマイクを使うようになっているスティングは(つまり、マイク・スタンドの前に立つ必要がないということだ)、ステージの上を大きな歩幅で動き回りながら、オーディエンスをどんどん引き込んでいく。そして、ここで3人はぐっとテンポを落とし、ドミニク・ミラーの繊細なギターを大きくフィーチャーして「フィールズ・オブ・ゴールド」を聞かせてくれた。イングランド南西部の田園地帯、大麦畑の上を渡る風が感じられるような、あのなんとも美しい曲だ。

ここまで進んできて強く印象づけられたのは、本格的な始動からすでに1年半が経過しているプロジェクトが、日々着実に、意欲的に、スティングの名曲群に対する‘reimagine’を重ねてきたようだ、ということだった。『3.0ライヴ』収録の時点から、すでにバンドはもう何歩か前に進んでいるのだ。その感触をオーディエンスとともに楽しみながら、次の一歩を模索しているということなのだろう。
7曲目の「ネヴァー・カミング・ホーム」では、ジミ・ヘンドリックスが「ヘイ・ジョー」で聞かせたリフをさらりと取り込み、そして「マッド・アバウト・ユー」。つづいて、「アラウンド・ユア・フィンガー」と「フォートレス・アラウンド・ユア・ハート」を情感豊かに歌い上げると、一転して、世界各地から届くニュースに触れるたびに涙を禁じ得ない現実への怒りと悲しみ、喪失感を叩きつけるように歌う「世界は悲しすぎる」。ステージ後方のスクリーンには、PROTESTの文字が何度か映し出される。

さらに「サウザンド・イヤーズ」、「キャント・スタンド・ルージング・ユー」とステージは進んでいき、ここでまたドミニク・ミラーの繊細なギターに乗って歌う「シェイプ・オブ・マイ・ハート」。向かいあってギターを爪弾くうちに生まれたメロディに、スティングがトランプのカードをテーマに書いた歌詞をあわせたという、二人の共作曲だ。これもまた、音の要素を極限までおさえたトリオによる演奏によって、さらに魅力を増したように感じた。

ポリス初期の「ウォーキング・オン・ザ・ムーン」と「ソー・ロンリー」がメドレーの形で演奏されると、照明などステージ上のイメージが大きく変わって、「デザート・ローズ」に。この複雑で大胆なリズムの曲でも、クリス・マースのパフフルなドラムスが光っていた。エフェクト類を駆使して北アフリカの砂漠地帯をステージ上に描き出すドミニクのギターにも素晴らしかった。

ポリス最後のアルバム『シンクロニシティ』から、「キング・オブ・ペイン」と、そして、最近のあの話題にはもちろんまったく触れずに「見つめていたい」を聞かせてくれたあと、3人は手を取りあって深々と頭を下げてから、いったんステージをあとにした。

アンコールは、まず「ロクサーヌ」。オーディエンスも一体となったライヴはこれまでに何度も観てきたものだが、新たなユニットによる今回のパフォーマンスは、さらなる可能性のようなものを感じさせていた。なによりも、じつに楽しそうなスティングの表情が印象的に残った。

最後は、「フラジャイル」。スティングがガット弦のアコースティック・ギターに持ち替え、ドミニクはエレクトリック・ギターのままというフォーマットで彼らは、残念ながら、いつまでたっても「この時代の世界には欠かせない曲」と思わざるを得ない永遠の名曲を静かに、聞かせてくれた。

そして、スティングがふたたび3人で挨拶しようとすると、ドミニクとクリスはもうステージ下手に下がっていたという、ちょっとしたお笑いもあり、有明アリーナでのコンサートは幕を閉じたのだった。

文:大友 博
==レポートここまで==

【来日公演セットリストがプレイリストで公開中】
https://umj.lnk.to/StingJapanTour2025

 

【来日公演情報】
STING 3.0 TOUR
(日時・会場)
2025/9/12(金)神戸・GLION ARENA KOBE 開場18:00/開演19:00
2025/9/14(日)・15(月・祝)東京・有明アリーナ 開場15:30/開演17:00
2025/9/17(水)名古屋・IGアリーナ 開場17:30/開演19:00
2025/9/19(金)広島・広島サンプラザホール 開場18:00/開演19:00
2025/9/21(日)福岡・マリンメッセ福岡B館 開場16:00/開演17:00
公演ホームページ:https://www.livenation.co.jp/sting-2025


Photo by 古渓 一道


Photo by 古渓 一道


Photo by 古渓 一道


Photo by 古渓 一道


Photo by 古渓 一道


Photo by 古渓 一道


Photo by 古渓 一道


Photo by 古渓 一道


Photo by 古渓 一道