ジャパン・ツアー初日のライヴレポートと写真が到着

2025.09.13 LIVE

9月12日(金)から全国5都市6公演の来日公演がスタートしたスティング。この2年ぶりの来日公演初日となった神戸GLION ARENA KOBE公演のライブレポートと写真が公開となった。

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<来日レポート>

THE POLICE(以下、ポリス)で世界的な成功を収め、1985年のソロデビューから40周年を迎えるスティング。2年ぶりとなる来日公演「STING 3.0 JAPAN TOUR 2025」が、4月にオープンした神戸の新しいアリーナ、GLION ARENA KOBEからスタートした。今回のツアーはポリス以来となるトリオ編成の新グループでの来日となり、メンバーは長年に渡ってスティングをサポートしてきたギタリストのドミニク・ミラーと、ドラマーのクリス・マース。

開演前からアリーナ全体に期待感が充満するなか、大歓声に迎えられてライブは「孤独のメッセージ」から幕開けた。ベースを抱えて悠然と上手から登場したスティングは“1、2、3”と力強くカウントして歌い出す。曲中で「KOBE!」と声をかけると観客の熱気は一気に上昇し、アリーナの隅々までパワフルなロングトーンを響き渡らせる。2曲目には早くもソロの最新曲となる「アイ・ロート・ユア・ネーム(アポン・マイ・ハート)」が披露される。ボ・ディドリーを思わせるロックンロール回帰的なナンバーで、雄々しきスティングの歌唱と共にダイナミズムあるグルーヴを生み出していた。

「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」では冒頭から観客に向けてコール&レスポンスやクラップを促し、“Be yourself no matter what they say”(=自分らしくあれ)というメッセージをリフレーンで強く印象付ける。

スティングはスタンドマイクは置かず、ヘッドセットタイプのマイクを使用しており、アリーナ全体を見渡すようにステージ上を移動する。Tシャツと黒のスリムパンツというシンプルな装いだが、古希を超えても贅肉のない鍛えられた身体で、そのたたづまいのなんと格好いいことか。歌い終わるとおだやかな笑みを浮かべて、「お~きに」と関西風の挨拶をする場面も見られた。時々両手を大きく広げ、自らクラップしたり、スキャットで掛け合ったりしてオーディエンスとの距離を縮めていく。

中盤にはクリーントーンのギターが引きたつ「フィールズ・オブ・ゴールド」の美メロと芳醇さにあらためて酔いしれる。スリリングな展開で大きな歓声が上がっていた「ネヴァー・カミング・ホーム」。一方で、「マッド・アバウト・ユー」「アラウンド・ユア・フィンガー」といったミディアムからスローテンポの曲ではゆったりと浸らせる。

その後、ライブは終盤に向かって再び熱を帯びた楽曲が繰り出されていく。スティング流のプロテストソング「世界は悲しすぎる」はイントロから畳み掛けるようなギターが速弾きで奏でられ、ドラムのビートが加速。“driven to tears”のリフレーンが熱く胸に刺さり、ここでも大喝采となる。「キャント・スタンド・ルージング・ユー」ではオーディエンスのクラップが高まり、コール&レスポンスで熱気を高めたかと思うと、イントロから歓声が上がる抒情的な「シェイプ・オブ・マイ・ハート」へとつなげたシームレスな流れはまさに白眉であった。そして、本編ラスト2曲は「キング・オブ・ペイン」と「見つめていたい」でしっとりかつエモーショナルに締めくくられた。

鳴り止まないい拍手に応えて、アンコールでは「ロクサーヌ」を赤いライトの下で熱く煽るように歌い、会場全体のボルテージは再び最高潮に。ラストは非暴力へのメッセージが込められた名曲「フラジャイル」。スティングが繊細に爪弾くガットギターの音色が心に沁みこみ、思慮深い余韻を残して幕を閉じた。

今回のステージはステージセットや演出面も洗練されたミニマリズムの美学が貫かれていた。その上でエネルギッシュかつ緻密に、アドリブ的な要素も織り交ぜて魅了した新生トリオでのパフォーマンス。これまで数多くスティングのライブを体験してきたファンやリスナーにとってもきっと新鮮な聴き心地を覚えるのではないだろうか。この後も、東京、名古屋、福岡で開催されるジャパンツアーで伝説を刻み続けるスティングの至高のステージをぜひとも体験してほしい。

文:エイミー野中

Photo by ハヤシマコ