BIOGRAPHY

ダスティン・ベイツ Dustin Bates (Vo, Key)
ロン・デシャント Ron DeChant (B)
ブロック・リチャーズ Brock Richards (G)
アダム・ギルバート Adam Gilbert (Ds)

 

送信信号を受信。スターセットの新たな音源『Vessels』は、未来主義が現実となり、想像力が好機となる図式に基づいている。スターセットの立役者ダスティン・ベイツが手がけたこの2枚目のアルバムは、サウンドのデータストリームであり、そこではベイツの悲痛なうめき声が、この情報過多の時代に「機械仕掛けの神」と化している。これは日増しに複雑化しながらも、究極的なヒューマン・マシンである亡霊の嘆きだ。

2014年に<Razor & Tie>からリリースしたデビュー作『Transmissions』は、スターセットというバンドだけでなく、謎に包まれたアノニマスのようなグループで、手に負えなくなったテクノロジーとディストピアの危険性を訴える、現実世界に根ざした科学者たちの集団、スターセット結社(The Starset Society)の存在も紹介していた。それからたった2年後の今、ベイツの科学的空想が科学的事実となる様子を我々は目の当たりにしつつある。先ごろベイツが自費出版した小説『The Prox Transmissions』で完全に具体化されているが、太陽系外惑星の発見とその植民地化というリリカルなテーマは、3-Dプリントなどテクノロジーの急速な進歩の影響と相まって、スターセットが非常に先見的なマルチメディア集団であることを明らかにしている。

『Transmission』は確かに画期的なアルバムだった。記憶に残る「My Demons」(43週の間ロックチャートを席巻)などシングル曲がヒットしたことで、アルバム、ストリーミング、ダウンロードをあわせて25万以上のセールスを記録した。故に今回ベイツは、限界を押し上げようと、並外れた意思を持って『Vessels』に臨んだのだ。

再びロブ・グレイヴズ(ヘイルストーム、レッド)がプロデュースし、ベン・グロース(ブレイキング・ベンジャミン、フィルター)がミックスを担当したこの作品は、結果がすべてを物語っている。雰囲気たっぷりのオープニング「Back To The Earth」から、ファースト・シングル「Monster」、キャッチーでプログレッシヴに近い「Frequency」まで、ベイツはラジオから流れる定型ロックの重力から逃れることに成功し、それどころか、ハンス・ジマーがレディオヘッドやトレント・レズナーとむすびつく場所として、ジャンルを超えたヴィジョンを再び思い描いている。

『Transmission』の包括的なコンセプトは、死にかけた地球にとって未来の避難所である惑星Proxからのメッセージに焦点を合わせていたが、『Vessels』では、その物語を、それぞれ4つの危険な映像を相互接続したインターゾーンに分けている。惑星Proxへの帰還から、近い将来、人工知能の進歩が愛や生死に関する都合の良い概念をはねつけるだろう、遺伝子工学の危険性に対する警告まで、ベイツ(電気工学の博士候補生で米空軍のために研究を行ってきた)はファースト・アルバムで交わした印象的な約束を果たしながら、スターセットの支持者たちを挑発する音声のアンソロジーを指揮している。

因習を打ち砕いているだけでなく、スターセットのライヴ「デモンストレーション」は、これまでと変わらず溶け合った野心とテクノロジーとむき出しの感情に心を満たされるものになっている。300回以上のショーをこなしてきたベイツと宇宙服のクルー(ベーシストのロン・デシャント、ギタリストのブロック・リチャーズ、ドラマーのアダム・ギルバート)は、ブレイキング・ベンジャミンやイン・ディス・モーメントといったバンドとツアーをしながら名をあげ、ロック・オン・ザ・レンジなどアメリカのメジャーなフェスティバルで聴衆を沸かせてきた。とはいえ、スターセットの約束を望遠鏡の焦点にレーザーで当てたのは、州立コロラド大学ボルダー校のフィスク・プラネタリウムや、ニューヨークのロングアイランドにあるヴァンダービルト・ミュージアムのプラネタリウム等で2015年に行った、4ヶ所のプラネタリウム・フォーマンスである。

まるで惑星衝突のように始まったサウンド、ヴィジョン、そしてニコラ・テスラやレイ・カーツワイル(別名:特異点の父)らからインスパイアされた因習打破のイデオロギーは、『Vessels』で大胆な一歩を踏み出した。スターセットのメッセージは届き、ダウンロードされたのだ。送信完了。