「ロックの殿堂」メンバースピーチ日本語訳全文掲載!

2016.04.14 TOPICS

4月8日にアメリカで行われN.W.A.が受賞した「ロックの殿堂」。
N.W.A.の4人のメンバーが行ったスピーチの日本語訳全文を掲載します!


Dr. Dre

ワッツアップ、ブルックリン? ワッツアップ? 美しい言葉をくれたケンドリック・ラマーに感謝を述べたい。ケンドリック・ラマーは最高のラッパーの一人であり、いつの日かこのロックの殿堂のステージに立つことは間違いない。
30年、俺たちがN.W.A.を結成してちょうど30年だ。30年前、俺たちは名背や富のことなど一切考えていなかった。スタジオに入って、レコーディングを楽しむ単なるキッズだった。
今日ここにいるやつらは、ビジネスが絡む以前に、俺がレコーディングした最初の仲間だ。ビジネス絡みじゃないレコーディングを想像してみてくれ。音楽業界の全員、特に音楽を作っているやつらは、そういう時代がいかに素晴らしいかをわかっているだろう。当時、俺達を批判するやつらは大勢いた。それは俺達が言っていたことに原因がある、それはわかっているし、理解している。そういうやつらは、俺達を受け入れる準備ができていなかったんだ。俺達のグル―プ名だけもビビるだろ。Niggas with Attitudes(主張する黒人)だからな。
でも、これは証拠なんだ。コンプトンのようなところで育ったキッズ全員に対し、何だってできるんだってことを証明してるのさ。俺とここに立っているこいつらを見てみてくれ。俺たちは皆と違っているところもなければ、勝っていることもない。ただし、誰もが自分だけの特別なもの、他人と差別化できるところを見つけるべきなんだ。本物の才能、ハードワーク、そして情熱があれば、どんなことだって起こり得る。決して周りに左右されるな!
ごく初期から俺を信じ、俺の才能にかけてくれたやつらの一人、俺はそいつとスタジオでいつも議論をしていた。それでも結局のところ、俺たちは同じ目標、つまり凄い音楽を作るっていう目標を見据えていることに気づいたんだ。そいつというのは、イージー・Eのことさ。イージー・Eのために騒いでくれ。エリック・ライトには感謝をしている。彼無しでは、N.W.A.がロックの殿堂入りして、俺たちが今こうしてこのステージにいることなどありえない。これは本当の話だ。
加えて、俺のキャリアにおいてコラボレーションをしてくれた全てのアーティストに感謝を述べたい。彼らは俺にとって天使のような存在だ。あまりにも多すぎてそれぞれの名前を述べることはできないが、俺が誰に語りかけているのか、本人たちは分かっているはずだ。キャリアを通じ、俺は本当に良い楽曲を作ってこれたと思う。しかし、彼らの素晴らしい声がなければ、こうしたトラックも価値を持たなかっただろう。
そして今、俺の背後に立っているやつらにも感謝を述べたい。アイス・キューブ、MCレン、DJイェラ。素晴らしい思い出をくれた俺の兄弟たちに。俺のリーガル・チームにも感謝したい。皆、どこにいる?ハワード・キング、ピーター・パターノ、邪悪なやつらから俺を守ってくれてありがとう。アシュリー・パーマー、ありがとう。
さて、あまり時間を取りすぎないようにしたいが、俺に命を与えてくれた人、俺の人生を変えてくれた人、俺の命を救ってくれた人にも感謝を述べたい。まずは母親に感謝したい。俺が思うに、彼女はこの地球上で最強の人物の一人だ。コンプトンのストリートに飲み込まれないよう、まっすぐに育ててくれたことをありがたく思っている。俺の人生を変えてくれた、ジミー・アイヴィンにも感謝をしたい。彼の助言やアドバイスがなければ、俺の人生は、全く違ったものになっていたはずだ。そして俺の人生を救ってくれた、妻のニコールにも感謝をしたい。そう、彼女がいなければ、俺は100%ここにいない。ありがとう、愛してる。
最後に、ロックの殿堂に感謝をしたい。俺達の殿堂入りに貢献してくれた全ての人にも。本当に栄誉なことだ、本当に嬉しい。ずって夢みてきたんだ。本当にありがとう、One Love。


DJ Yella

最初に、俺をはじめここにいる全員が、今夜この場に集うことができたことを神に感謝したい。全てのロックン・ロール・グループ、全員だ! とにかく神に感謝したい。
キューブ、レン、ドレー、そして亡くなって久しい俺の仲間、イージー・Eに感謝したい。彼が亡くなった時は、本当に辛かった。彼は素晴らしい友人であり、ビジネス・パートナーだった。彼はもちろん金も持ってたけどな(笑)。それでも、俺たちは凄いことをやってのけた。ここには、誰も買うこともできなければ、嘘やイカサマで忍び込むこともできない友情がある。俺たちは一生モノの仲間なのさ。そして、イージー・Eのスピリットは俺たちと共にある。
今夜は、数人の女性に感謝を述べたい。まず、ここにきているイージーの母親に。こちらへ来てください。彼女は、俺のもう一人の母親なんだ。いつも彼女のことを「母さん」と呼んでいる。母さん、カジノにいく準備はできてるかい(笑)? そしてもう1人のミズ・ライト、タミカ・ライトにも感謝を述べたい。本当にありがとう。それから、俺の妻にも感謝を。結婚して2年半だ。ハニー、写真を撮ってくれよ。彼女は俺にとって、生涯のソウルメイトだ。
N.W.A.は1991年に解散した。しかし、すげえもんだよな。グループが活動を停止してから26年後に、ユニバーサルが映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』で、俺達を叩き起したんだ。役者全員に感謝を述べたい、特に、オシェイ。全ての役者たち、コーリー、ジェイソン、アルディス、そして俺を演じてくれたニール・ブラウン。彼らはあの映画で、本当によい仕事をしてくれた、ありがとう、本当に素晴らしい映画だ。
全てのファンにも感謝を述べたい。俺たちが殿堂入りできるよう、この4年間投票しれくれたファン達だけじゃなく、映画を見て新たにファンになってくれた世界中の人々に。スティーヴ・ヤノの店でレコードを交換していた当時からのファンにも。俺たちを憎んでいた人々、愛してくれた人々、好きでいてくれた人々、彼ら全てに感謝を述べたい。本当にありがとう、全ての人に神の祝福を。そしてロックの殿堂、本当にありがとう。


MC Ren

神に感謝を。ロックの殿堂にも感謝を。N.W.A.のドレー、キューブ、イェラ、そして特にイージーに感謝したい。イージーのヴィジョンがなければ、俺達が今夜、このステージにあがることはなかっただろう。両親、妻のヤスミン、子どもたちに感謝を。そして、俺たち以前に登場し、青写真を作ってくれた全ての偉大なヒップホップ・グループにも感謝を。彼らはインスピレーションであり、俺達、そしてヒップホップ・カルチャーに大きな影響を与えてくれたんだ。彼らにも感謝したい。全てのファンにも感謝を。それからミスター・ジーン・シモンズに言いたい、HIP HOPは永遠に不滅だ!慣れろよ!慣れるんだ! 俺達はここにいるべき存在なんだ。(*註1)


Ice Cube

これは本当にエキサイティングだ。俺達は今夜のこと、とにかく光栄に思っている。業界内でも嫌われていたというのに、ロックの殿堂入りするまでになるとは、俺たちもずいぶん出世したよな。自分を信じ、自分のやっていることを信じれば、誰にも止めることはできないってことが証明されたんだ。自分を止めるのは自分だけ。こうして俺たちはここまで辿り着いた。だから俺は、非常に光栄に思うとともに、謙虚な気持ちにもなっている。
両親のドリスとホージーに感謝したい。そして兄弟たち、クライド、パット、ソフィーにも。彼らは、俺たちのターンテーブルやスピーカーから出るノイズにずっと耐えていてくれた。愛する妻のキンバリーにも感謝を。彼女は良い時も悪い時も、そしてまた良い時も、ずっと俺を支えてくれた。そして子供たち、ダレル、オシェイ・ジュニア、カリマ、シャリフ。彼らは、エンターテイメントの世界にいる俺のクレイジーな生活、クレイジーなスケジュールに耐えてくれた。子供たちは、俺に普通の幸せを与えてくれた。彼らのお蔭で、全てが普通になったんだ。本当に愛している。
殿堂入りは、自分の力だけで果たせるようなもんじゃない。俺にラップの仕方を教えてくれたサー・ジンクスにも感謝を。俺の最初のマネージャーであり、ジェリー・ヘラーには注意しろと教えてくれたパット・シャーボネットにも感謝を。あの頃の俺を助けてくれたマイケル・アッシュバーンにも感謝を。デビュー以来、ずっと一緒に歩み、このイカれた業界で俺を導いてくれたリー・ヤングにも感謝を。ドノヴァン・スミス、ブライアン・ターナー、マーク、ビック・ベース・ブライアンにも感謝したい。そして、後ろにいる仲間にも感謝だ。
まずはドレーから始めよう。本当にありがとう、ドレー。あんたがいなければ、俺は今、ここにいないだろう。15歳のB-Boyだった俺を信じ、学校をさぼらせてくれて、一緒に音楽を作ってくれてありがとう。おっと、学校にはちゃんといかなきゃダメだぞ!
MCレン、いつもルースレスなヴィラン(悪党)だ。レンがN.W.A.の気質となっていた。彼は俺たちの良心だ。彼が、俺たちを進むべき方向へと進ませてくれた。
DJイェラ、ありがとう。見てのとおり、イェラはいつも楽しませてくれた。俺達が世界中から嫌悪されていた時だって、彼は「それがどうした、それよりパーティーはどこだ?」ってな具合だった。そんな部分も含めて愛している。
D.O.C.にも感謝を述べたい。多くのリリックに貢献してくれたのだから、彼もN.W.A.のメンバーだ。リリックはアイス・キューブと言われているが、レン、D.O.C.、ドクター・ドレー、イージー・Eの共同作業だったんだ。だからこそ、長い間一緒にいてくれたD.O.C.に感謝したい。彼がここに来れなくて残念だ。

そしてアイツにも。偉大なる故人。真似されることも多いが、決して真似できない、イージー・マザーファッキン・E。このグループは、彼のヴィジョンから生まれた。彼は、正直で誠実に本音を語ることを俺たちに求めた。俺たちのレコードがラジオでオンエアされるかどうかなど、気にしちゃいなかった。俺たちがメジャー・レーベルと契約できるかどうかすら、気にも留めていなかった。彼が唯一気にしていたのは、俺たちのストーリーを認知させ、聞かせることだけだった。俺たちはイージーを愛している。そして彼を失い、寂しく感じている。いつもイージーのことを考えているんだ。彼は頭のキレるビジネスマンで、人々の動向を読み取ることもできた。だから、これからもイージー・Eを恋しく思うだろう。そして、彼の家族にも感謝している。彼らは、『ストレイト・アウタ・コンプトン』の映画化を快諾してくれた。俺たちは、イージー・Eの人生に関わることできたことを幸運に思っている。彼のことをずっと忘れないでいてくれ。
ここで質問だ。俺達はロックン・ロールなのか?俺はそれにこう答えよう。俺達はロックン・ロールだ、間違いない。ロックン・ロールは楽器のことでもなければ、音楽のジャンルでさえもない。ロックン・ロールはスピリットだ。スピリットなんだ。ブルーズ、ジャズ、ビバップ、ソウル、R&B、ロック、へヴィ・メタル、パンク、そしてHIP HOPと、そのスピリットはずっと続いてきた。そして、俺たち全てを結びつけているのが、スピリットだ。ロックン・ロールとは先達に従うことじゃない。音楽、そして人生で、自分達の道を作り上げること。それこそがロックン・ロールであり、それが俺たちなんだ。(*註1)
ロックン・ロールは同調しない。ロックン・ロールは独創性だ。そして、N.W.A.はロックン・ロールだ。ロックの殿堂入りに寄与してくれた全ての人に感謝を。そして世界中にこう言いたい 「Damn that shit was dope!(クソッ、ガチでヤヴァかったな)」(*註2)



(*註1)N.W.A.はロックの殿堂入りにはふさわしくないとジーン・シモンズが批判していたことに対しての反論
(*註2)楽曲「Straight Outta Compton」の最後にあるリリック