MONOEYES 10th Anniversary Live “Firerunners” オフィシャルライブレポート公開!
「今」を色濃く映した10周年の夜
MONOEYES 結成10周年を記念し、バンド史上最大規模の公演となる「MONOEYES 10th Anniversary Live “Firerunners”」がぴあアリーナMMにて開催。ライブレポートが公開された。
2025年12月21日(日)神奈川・ぴあアリーナMMライブレポート
◆「夢の続き」を超えて独自に進化した10年◆
MONOEYES、結成10周年。スタート直前、スクリーンにはこれまで重ねてきたライブ映像やレコーディング風景などが次々と映し出されていく。「10」の数字からカウントダウンが始まると、何度も目にしたアーティスト写真が古いものから最新のものへと切り替わっていく。とはいえ、みんな驚くほど変わらない。変わったのはスコット・マーフィーの髪型くらい。見た目の若さに感心しながら、振り返ってびっくりしたことがある。10年前、細美武士のバンドといえばthe HIATUSひとつだったのだ。
当時ELLEGARDENは活動休止中。the HIATUSは忙しいメンバーのスケジュールを調整しながら、どんな新しいことが見せられるのか、作品ごとの実験を繰り返していた時期だ。細美が突如シンプルな4人編成バンドを作り、みんなで歌えるポップパンクを携えて全国ツアーを始めたことには、ファンの間で少なからず動揺があったと思う。はっきり書いてしまうなら、MONOEYESはELLEGARDENとどう違うのか、細美が一度終わらせた夢の続きがこれに該当するのではないか、という話である。
◆「型」を踏み出しさらなる高みへ◆
10年も経てばおのずと答えは出る。MONOEYESは独自の進化を遂げていた。少し強引に定義するなら、このバンドが最初に必要としたのは狭小のライブハウスに相応しい「型」だ。スタート一発目となる「My Instant Song」がわかりやすくそのことを伝えてくれる。シンガロングしやすいメロディと、英語がわからない子供でも覚えられる歌詞。一番を細美が歌い、二番をスコットが歌っていたように、誰が歌ってもいい「みんなのうた」がまずあった。それが10年前の話だったよな、と確認した後からがすごかった。
広大なアリーナに相応しい演出の数々。曲ごとにがらりと変わるスクリーン映像、膨大なレーザーを筆頭とする照明も素晴らしかったが、バンドがそのスケールを引き受け、それぞれ個人としてすっと立っていたことが一番印象的だった。何度も書くがMONOEYESの原点は「型」だ。共に騒いで共に歌い、ブレイクではせーので派手なジャンプを決める。4年前の日本武道館公演でもたっぷり見せてもらった光景だが、今回そのシーンは驚くほど少なかった。近い距離で視線を交わすことよりも、いちプレイヤーとして1万2千人のファンと対峙することが主題になっていたのだ。
4枚のアルバムからバランスよく名曲を並べたセットリスト。共にシンガロングできる快感はリリース時期に関係なくキープされるが、最もよかったのは最新作の曲たちだ。作品プロデュースを務めたマイク・グリーンがゲスト・ギタリストとして迎えられる一幕があったが、別に賑やかなコラボというわけでもない。そこでスコットが歌った「Ghosts of Yeasteryear」は癒えない喪失の歌であり、エモーショナルなミドルテンポにはぎゅっと胸が締め付けられるばかり。細美が歌う「世界が眠る日」も然りで、スクリーンに映される雪景色と相まって、終わりを見つめる歌詞がしんしんと沁みてくる。ラスト手前の「アンカー」も名シーンのひとつ。〈あともう少しなんだって/ただの夢じゃないんだって〉と必死に手を伸ばしつつ、〈でも このストーリーの終わりはまだ知らない〉と締める歌詞が、今のMONOEYESとぴったり重なっていく。
冒頭の話に戻るなら、結成当時「細美が一度は終わらせた夢の続き」にも見えたこのバンドは、ELLEGARDENが復活したこと、そして、それとは別に継続してきたことで、急速に「今」にピントが合ってきたのだと思う。ライブハウスで共に騒いで歌うことはライフワークで続けていく。ただ、それができなくなる日もいずれ来る。終活と言うほど差し迫った話ではないが、40代後半、50代前半の覚悟をもって人生と向き合うのだ。一瀬正和がツービートで突っ走るばかりのドラマーではなかったことが大きいし、戸高賢史が分厚いリフよりも繊細なクリーントーンで奥行きを広げていったことも重要だ。この4人だから決まり事は自然に融解していった。あとには歌い手である細美とスコットそれぞれのリアリティが残っている。
◆今しか歌えない歌、今だけのMONOEYES◆
本編ラストは「リザードマン」。最後にフロント3名は豪快な大ジャンプを決めていた。「型」は「型」としてこれがなくちゃと言いたくなる楽しさがある。ただ、それよりも、アンコールで響いた「Shadow Boxing」の切なすぎる旋律のほうが何倍も胸に迫ってきた。単純明快なハピネスよりも複雑なセンチメントのほうに強く引っ張られる。これもまた10年バンドを見続けてきたリスナーのリアリティなのだろう。
想像してみる。ライブハウスでは今日も若いバンドが騒いでいるし、MONOEYESの始まりの曲となった「My Instant Song」は、今後どこでカバーされても盛り上がる名曲として受け継がれていくはずだ。ただ、2025年の暮れに聴いた「Shadow Boxing」は今の細美武士にしか歌えないものだった。過去にこんなに泣かせる曲はなかったし、数年後になればまた別の視点が生まれていく。今だけのMONOEYES。その表現はきっと、ここからさらに深く色濃いものになっていく。セットリストは10周年を意識したメモリアル的なものだったが、このホールが特別だとは思わなかった。今の彼らには、これだけのスケールが当たり前のようによく似合っている。
【SET LIST】
- My Instant Song
- Ladybird
- Skippies
- グラニート
- Let It Burn
- Good Enough
- Adrenaline
- Roxette
- Free Throw
- Cold Reaction
- Reflections
- 明日公園で
- Interstate 46
- Fall Out
- Like We’ve Never Lost
- Ghosts of Yesteryear (Guest Gt:Mike Green)
- 3,2,1 Go
- 世界が眠る日
- Borders & Walls
- Somewhere On Fullerton
- アンカー
- Get Up
- When I Was A King
- リザードマン
Encore
- Shadow Boxing
- Run Run
Encore2
- Two Little Fishes
- 彼は誰の夢
【Credit】
Text:石井恵梨子
Photo:石井麻木、高田梓











