BIOGRAPHY

LUCY DACUS / ルーシー・デイカス


アメリカ・ヴァージニア州メカニックスヴィル出身のシンガー・ソングライター、ルーシー・デイカス。フィービー・ブリジャーズ、ジュリアン・ベイカーと結成したスーパーグループ「boygenius(ボーイジーニアス)」は、第66回グラミー賞で「最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム」など3部門を受賞し、大きな話題を呼んだ。

1995年生まれのデイカスは、ヴァージニア州リッチモンド郊外で、熱心なキリスト教徒の養父母のもとに育てられた。8歳までには作詞を始め、父親のCDコレクションにあったサイモン&ガーファンクル『グレイテスト・ヒッツ』、レッド・ツェッペリン『I』、デヴィッド・ボウイ『ジギー・スターダスト』などを夢中で聴いていたという。2016年、小さな地元レーベルEggHunt Recordsからデビュー作『No Burden』をリリースすると、その才能は瞬く間に注目を集め、20以上のレーベルが獲得を争う事態に。最終的に、名門インディーレーベルMatadorと契約を結んだ彼女は、2018年には2作目『Historian』を発表する。約7分にわたる失恋アンセム「Night Shift」で幕を開けるこのアルバムは、批評家からの絶賛を受け、多くのファンを獲得し、デイカスは同世代を代表する力強いソングライターとして広く認知されるようになった。その年の終わり、デイカスはブリジャーズ、ベイカーと共に秋のツアーで共演。当初は公演を宣伝するための1曲限りのコラボを予定していたが、気がつくと6曲をレコーディングしていた。こうして生まれたboygeniusのセルフタイトルEPには、「Bite the Hand」「Me & My Dog」「Salt in the Wound」などの名曲が収録され、この3人をインディーロック界のスターへと押し上げたのであった。

5年後、3人は2023年のデビューアルバム『The Record』の制作のため再結集。この作品はboygeniusをメインストリームへと導き、デイカス、ブリジャーズ、ベイカーをクィア・アイコンとして確立させ、熱狂的なファンベースをさらに拡大させた。アルバムの成功により、彼女たちは『ローリング・ストーン』誌の表紙を飾り、アリーナツアーをソールドアウトさせ、グラミー賞6部門にノミネート。うち3部門を受賞する快挙を達成した。

デイカスはその前に、2021年に3作目となるアルバム『Home Video』を発表。さらに2025年3月には、4作目『Forever Is a Feeling』をリリースした。このアルバムでは、バンドメイトであるジュリアン・ベイカーとの恋愛が記録されている。収録曲「Best Guess」のミュージックビデオ制作にあたり、デイカスがSNSで“hot mascs”を募集したところ、英モデルのカーラ・デルヴィーニュ、LAのポップバンドMUNAのナオミ・マクファーソン、英シンガーソングライターのトワ・バードなどが友情出演してくれた。

キャリアを通してデイカスは、メディアから「サッド・ガール(悲しい女の子)」というステレオタイプを押し付けられがちだったが、それに対しては常に公然と反対してきた。「私はただ、私と私の友人たちが生き延びてほしいと思っているだけ」と彼女は語る。「“サッド・ガール”を内面化してしまうと、自分の個性が悲しみに縛られてしまう。それは多くの場合、抑うつや人生からの乖離につながってしまう。私は、できる限りの喜びを手に入れたいし、愛する人たちにもそうあってほしい。」