Superfly「花蔭(はなかげ)」オフィシャルインタビュー Superfly「花蔭(はなかげ)」オフィシャルインタビュー

「孤独なんだと気づけたからこそ、愛の世界があることにも気づくことができた」
孤独のレッスンを重ねることでわかった、Superflyにとっての自分らしさ

 Superflyの新曲「花蔭」が配信リリースされた。昨年は邦楽カバーアルバム『Amazing』のリリースがあったが、オリジナルの新曲となると2024年8月配信の「Charade」以来、約2年ぶりだ。

 「花蔭」は10月1日スタートのTVアニメ『氷の城壁』第2期のエンディングテーマ。アニメの制作サイドから依頼があり、志帆はまず阿賀沢紅茶の原作コミック『氷の城壁』全14巻を一気に読んで、どういう曲を書くべきか探ることから始めたという。

「まず思ったのは、高校生たちの青春を描いた物語に対して、今の年齢の私がどこに共通点を見出すのがいいのかということで。今の高校生ってこんな感じかな?っていう想像だけで詞を書いたら嘘くさいものにしかならないと思ったんです。若い世代に上から何かを言うみたいなのは違うよなと思ったし、じゃあ何目線で書くのがいいんだろうって考えて……」

 『氷の城壁』は、他者との距離に戸惑い悩む不器用な高校生たちの友情と恋愛、心のすれ違いを描いた青春群像劇。人と接するのが苦手で、他人との間を壁で隔ててしまう氷川小雪が主人公だ。

「彼女たちは自分と戦って、それぞれがそれぞれに傷ついている。その傷つきは生きてきたなかで恐らく初めてのものなんですよね。言ってみれば、フレッシュな傷つきというか。大人になると“この傷つきは前に経験したのと同じ種類だな”ってわかって、自分なりに折り合いをつけることができたりもするじゃないですか。“傷つきアーカイブ”みたいなのができてくるから、こういうときはこうしようってある程度対処もできる。でも若いときは、ただ受け止めるしかない。そこで衝撃を受けて、葛藤して。その葛藤の仕方も自分との戦い方も、大人になってからのそれとは全然違う。孤独というものの捉え方も、初めてそれを実感したときと、孤独がどういうものかを学んでからのそれとは全然違う。この物語を読んで私は、わからないことだらけのフレッシュな傷つきみたいなものを描きたいと思ったんです。そしてそれには、開けたくなかった強烈な記憶の扉を開けるしかないなと思って」

 それは小学校高学年のときのある日の記憶。来てくれると信じて待っていた人が結局現れなかった、という記憶。

「私は悲しい気持ちのまま、ひとりで校庭にずっといたんです。校庭には桜の木があって、満開で。その日は風が強くて、花びらが舞っていた。まさにこの歌のシチュエーションそのままなんですけど。桜の木の下で感情を一生懸命整理しようと、私は地面に何か描いたりしていた。そのときに、傷つくってこういうことか、孤独ってこういうことかってわかった気がしたんです。それは、他人から見ればたいしたことじゃなかったかもしれない。些細なことだったかもしれない。だけど自分にとっては大きなことで。他人から見たらわからない胸の痛みをひとりで抱えて生きるってこと、あるんですよね。この漫画にもそれが描かれていて、“ああ、わかるな”って」

 そんなところから、書きたいことがおぼろげながら見えてきた。初めに出てきたのは「あたなの温もりを」というフレーズだった。

「寂しい、悲しいという感情もそうですけど、それ以上に温もりを欲していた気持ちが思い出されて、その言葉がでてきた。そのときに、“寂しい”とか“悲しい”とか“辛い”ということを言いたいわけではないんだなと思って。最近になって気づいたんですが、あれは悲しい出来事ではあったけど、今になって思えば独り立ちの始まりを意味していたんだなと。生きていく覚悟のようなものがあの日の出来事によってできたのかもしれないなと思うんです」

 TVアニメ『氷の城壁』第2期のプレスリリースに、志帆はこの曲について「他人ばかりが見えてしまうこの世界では、“他人と自分の違いを愛して、自分らしく生きる”ということは簡単なようで、とても難しい。でも大人になって気づくんです。孤独こそ、自分らしさだ。その答えに気づくために、たくさんの孤独のレッスンがあった気がします」(一部抜粋)とコメントを寄せている。「孤独こそ、自分らしさ」。それに気づくための、あの日がレッスン1だったのだろうと、今、志帆はそう捉えている。

「生きてきたなかで、この孤独の経験ってなんなんだろうと考えることがたくさんあった。人と人がいたら孤独を感じざるをえない瞬間ってやっぱり多いと思うんです。それがなんなんだかわからないし、今もまだレッスン中ですけど、でも本質的に孤独なんだと気づけたからこそ、愛の世界があるということにも気づくことができた。それは確かで。本当の愛に気づくための孤独のレッスンだったんだなって、今はそう思う。孤独と愛の階段みたいなものをグルグル上りながら人は大人になっていくんだな、って思ったりしますね」

 だから、悲しいだけの歌にはしたくなかった。悲しみや孤独を受け入れ、その意味を学んだり思い返したりして今の自分に辿り着く。聴く者がその過程を感じ取れる曲にしたかった。

「曲を作るときに、まず何かが散っているイメージが浮かんで。具体的には桜の花びらなんですけど、サビはそれが乱舞しているイメージで出てきたんです。孤独を感じていたけど、それは美しい情景でもあったから。歌うときも、そこはちょっと後ろめに歌うことを意識しました。言葉を置いて、置いて、結果的に動きが出るイメージ。そう、静かなようでいて、動きがあるんですよ、この曲は。それは花びらの動きであり、感情の動きでもあるのかもしれない。“ひらひら”“はらはら”といった擬態語で、それを表現しました。そうしたオノマトペを使って表現するのって、なんか楽器的な感じで、難しいけど面白かったですね。メロディは切ないんだけど、リズミカル。こういうタイプの曲は今まで作ったことがなかったと思います」

 あの日の風景と感情を絶妙にブレンドさせながら、メロディで郷愁を誘い、“切ないけど優しい”といった印象を聴く者に与える。アレンジは宮田‘レフティ’リョウと志帆が担当。ふたりでやりとりするなかで、志帆が特にこだわったのは次のようなことだった。

「まず、今言ったように、悲しく聞こえすぎないよう、リズミカルにすること。なので、キックは4つ打ちだなと思っていて。ドゥンドゥンドゥンドゥンって、いっこいっこ重く落ちる音にしたかったんです。ミュートされた感じのドライさではなく、ちょっとウェットな感じ。一定の時間を刻むようなキックの音にしたかったので、エンジニアさんからアイデアをもらって、そこは猛烈にこだわりました。それから(真壁陽平の弾く)ギターのフレーズは、なるべく歌うような感じにしてほしくて。クリックにぴったり合わせて弾くんじゃなくて、少し後ろめに粘っこく弾いてほしいということを言いました。人間っぽい揺れが、この曲にはすごく大切だと思ったので。逆に(宮田‘レフティ’リョウの弾く)ベースは淡々としながらも少しだけ前に行ってほしいと言いました。そうやってそれぞれの歩幅をちょっと変えることで、人間らしいグルーブが作れるんじゃないかと考えたんです。あと、私のコーラスはハンッ・ハンッ・ハンッって夜空に響きながら広がっていく感じをイメージしました」

 とりわけ印象に残るのは、間奏部分の(Atsukiによる)フリューゲルホーンの音だ。柔らかでありながらも高らかで、ここから前を向いて歩き出そうとする意思も感じ取れる。

「あそこで旅立ちっぽいイメージのフレーズが必要だなと思ったんです」

 けれども、そのままどこまでも前を向きながら勇敢に歩いていくのだ! という表現にはならない。フリューゲルホーンの音色のあとに続くのは、独りの静けさを感じさせるピアノの音なのだ。

「そう。そこを汲み取ってもらえて嬉しいです。この歌は単純に“ひとりじゃないんだよ”ってことを言いたかったわけではないので」

 では、ボーカルに関してはどのようなことを意識したのだろうか。

「あの日の情景を思いだしながら、なるべく落ち着いた声で歌うんだという気持ちがすごくありました。悲しい方向に行きすぎるのは違うから、オーバーにならないように。だから、子音や破裂音に気をつけて、口の開き方を抑えるように歌うことを意識した。“バカ”ってところは、ナレーションっぽいイメージで歌いましたね。誰かではなく、自分自身に言っている。“桜散る ひらひら”というところは浮遊感を出したいと思っていたので、少し多めに息を入れることを意識しました」

 最後、この曲は「未来に散るの」というフレーズが歌われて、ピアノ音のあとフッと終わる。

「去ること、散ることは、悲しいけれど、悲しいだけのことじゃない。そこで何かに気づいて、いつかきっと違う自分になれる。もっとステキな自分になれるかもしれない。無意識でしたけど、そんな思いで“未来に散るの”って書いたんでしょうね」

 あの頃を否定するのではなく、認め、そして赦すこと。それがあって、未来がある。今の志帆の年齢だからこその繊細でいて豊かな歌詞表現と歌唱表現であるなと感じる。安らぎ、ひそやかさ、儚さ、追憶……。そうした意味を含んだ「花蔭」というタイトルもとてもいい。

 改めて、聴く人にどう伝わってほしいかを最後に聞いた。

「悲しみとか孤独って、数値化できないものだと思うんです。その大きさは測れるものではない。だから他者との距離感で悩んでいる人、まわりからの見られ方に苦しんでいる人がいたら、そんなことを思い続けなくてもいいんだよって、自分の経験からそう伝えたいですね。辛い時期を何度か経て、いつか自分をもっと好きになる。私もそうでした。だから、どんなに孤独でも自分を大切にしてほしいなって思います」

(内本順一)