Biography

Bio _161205



 読み:ぐっどおんざりーる
 意味:なんか良い感じ。
     (メンバーによる造語)

 宇佐美友啓 (Ba)
 伊丸岡亮太 (Gt)
 千野隆尋 (Vo)
 高橋誠 (Dr)
 岡﨑広平 (Gt)






<BIOGRAPHY>


GOOD ON THE REEL。
2005年に結成されたロックバンド。試聴機をきっかけとした口コミだけで爆発的な反響を起こし、ワンマンチケットは数時間でSOLD OUT。業界内外問わず、異例の盛り上がりを見せている5人組。楽曲の詞はボーカルである千野隆尋が全てを手がけている。作曲はギターの伊丸岡亮太のほかに、同じくギターの岡崎広平、千野もその役割を担う。

縁あって、GOOD ON THE REELの5人と話す機会を得た。あの音源を聞いて、あのLIVEを見た後で、頭の中で作り上げられていた人物像は、それはそれは陰鬱なカリスマだった。しかし、対面3分でものの見事に期待は裏切られるわけである。そこにいるのは、本当に朗らかな普通の青年達だった。果たして、どうして彼らがあんな音楽を、LIVEをやれるのか。私は必死に探ろうとした。けれど、様々な質問に一生懸命唸りながら答えようとする姿を見て、それはとても無粋な行為であると悟った。GOOD ON THE REEL。なんか、良い感じ。そんな名前を持つ5人組なのだから、それでいいじゃないか。強いて言うなれば打算でもなんでもなく、心から“なんか、良い感じ”と思っている、それを伝えようとしてくれる、今日び稀有な純真さが彼らの底力だ。だから、彼らの音楽はまっすぐに人に届くのだろう。物すごくシンプルなことだ。複雑な現代で、人と人の間に、そんなシンプルな出来事がシンプルに成立している事実は、それこそなんか、凄く良い感じだと僕は思う。
文:小島双葉



【GOOD ON THE REEL、その魅力となる要素】

【言葉】
GOOD ON THE REELの音楽にこれほどまでの求心力が宿る要因の一つは、曖昧さだ。日々は曖昧な感情、出来事、関係に満ちている。それはハッキリしないからこそ美しかったり、苦しかったりする。そんな中にありながら、僕らが他者とコミュニケーションをとるには、言葉という非常に断定的なツールを使わざるをえない。その本質とアウトプットの行き違いがあるからこそ、僕らは誰かと傷つけ合い、分かり合いたくて愛し合う。

千野が優れた詩作者である所以は、断定的である言葉というものを用いて、曖昧な情景を描くところであると思う。誰もが抱えている情けなく人間臭い感情や思想は、彼の言葉で存在を与えられたことで赦されるのだ。恐らく、千野は誰よりも言葉の力を信じ、それがいかに無遠慮で鋭利なツールかを理解している。簡単に言い切れず、決着もできない気持ちを、丹念に丁寧に自らの中から削り出し、一貫性を持たずに言葉にしている。その行為の、なんと人間らしいことか。その血の通った人間らしさは、ともすれば痛切なほどに生々しくもあるが、彼らの開けたサウンドに乗せて届けられることで、本当にすんなりと心に入り込んでくるのだ。

【LIVE】
彼らの持つ求心力を語る上で、LIVEも無視できない要因の一つだ。「CDが売れない」とされる現状で、アーティスト達は一生懸命に工夫をしている。パッケージ、映像、プロモーション。LIVEなんてものは如実にそうで、演出、MC、パフォーマンス、セットに至るまで様々な創意工夫を施して、いかに観客が行こうと思うもの、また見たいと思うものを作り上げるか、それをどう更新しながら続けていくかを模索している。それはアーティストの素晴らしい、たゆまぬ努力である。ただ、その方法論の決着するところは、LIVEのショー化だとも思う。それも、次世代の音楽にとって一つの黎明だと思っていた。音楽は、完全にエンターテイメントに統合されていくのだろうと。

この話題はあまり好きでは無いけれど、311以降その傾向はあからさまになった。311以降の日本では、リスナーの耳も大きく変わった。耳触りの良い言葉を並べた曲というのは、どこか芝居がかっていて白々しく感じてしまうようになった。誤魔化しのきかない現状で求めるのは、どんよりとした気持ちを麻痺させてくれる、享楽的なもの。もしくは、本当の意味で己が必要とする有意義な音色や言葉だ。

GOOD ON THE REELのLIVEには、音楽に関わる全ての人にとって希望となる景色があった。モッシュするわけでもなく、サークルを作るわけでもなく、ただただ食い入るようにステージへ向き合う観客。華美な照明も演出も無く、真摯に演奏するメンバー。もはや宗教的と言える、異様な景色に胸が熱くなった。ああ、まだ……。まだ、音楽は人を救うのだ、言葉は世界を変えられるのだ。それが出来る人達と、それをキチンと受け取ろうとする人達が、まだまだ、こんなにいるんだと。音楽とその言葉の持つ底力に、ただ励まされた。それは紛れも無く「希望」だったのだ。

【自然体】
GOOD ON THE REELは、底抜けに純真な器だ。穢れが無いという意味では無く、だからこそ綺麗なものも汚れたものダイレクトに引き受けてしまう。けれど、それを満たす器が本当に澄んでいるから、歪なものとして出力されない。そして何より尊いことは、それを彼らが本当に自然体で行っているということだ。目に見えない電波のように、得体の知れない思惑や不安が張り巡らされた日常において、それは本当に稀有な有り難い事象だと感じる。もっともっと、たくさんの人に彼らの音楽が届いて欲しい。彼らの音楽は、あなたにとって、あなたの隣にいる人にとって、世界中の誰かにとって、赦しであり、救いであり、希望だから。
文:小島双葉