『チーパー・ザン・チープ』2CD+ブルーレイ・エディション、6/27発売!

2025.05.16 TOPICS


フランク・ザッパ
『チーパー・ザン・チープ』2CD+ブルーレイ・エディション
Frank Zappa / Cheaper Than Cheap (2CD+Blu-ray)

発売日:6月27日

フランク・ザッパ率いるマザーズが1974年6月に撮影・録音したものの未公開となっていたテレビ特番が、50年以上の時を経てテープ倉庫から解禁!
2時間に及ぶライヴ映像とそれに付随するライヴ・アルバムで構成されたパッケージとして発売が決定‼
UNIVERSAL MUSIC STOREで数量限定盤が完売し好評だった『チーパー・ザン・チープ』が一般流通でもリリース!

2CD+ブルーレイ、24ページの英文ブックレットと日本版ブックレットで構成。

“みなさん、世界一安っぽいテレビ特番にようこそ!この番組は、視聴者のみなさんの知性を啓発するために、ここカリフォルニア州ハリウッドのサンセット大通り5831番地にある我らがマザーズ・オブ・インヴェンションのリハーサル・ホールで現在でっち上げているところです。カメラマンは全員、カメラを振ってお互いに見合うことはできるかな?そうすれば、このホールの中がどんな感じなのか今テレビをご覧のみなさんにもわかるだろうから。ご覧の通り、これはチープどころじゃない最高の安っぽさです。”
- フランク・ザッパ、1974年6月21日


- ザッパは1974年6月21日、ジョージ・デューク(キーボード/ヴォーカル)、ナポレオン・マーフィー・ブロック(テナー・サックス/フルート/ヴォーカル)、トム・ファウラー(ベース)、ジェフ・シモンズ(ギター/ヴォーカル)、チェスター・トンプソン(ドラム)、ルース・アンダーウッド(パーカッション)の6人から成るマザーズ・オブ・インヴェンションを率いてライヴ演奏の撮影・録音を行った。彼はテレビの特別番組を自主制作して放送局に売り込もうと考えていたが、撮影素材の技術的な問題により当時これを世に出すことは叶わず。50年以上の歳月を経て、約2時間に及ぶそのパフォーマンスがブルーレイ(本編+特典映像)と2CD(サウンドトラック)の構成で日の目を見る。

- 数年ぶりにグループに復帰したシモンズを含むマザーズの演奏は貴重であり、歴史的な意義は十分。また、ザッパは収録に向けて特定のセットリストを用意していなかったため、バンドは当時のレパートリーの大半を披露している。この日に録音された「アポストロフィ (‘)」は『Zappa(オリジナル・サウンドトラック)』(日本発売は22年)で取り上げられていたが、複数テイクが録られたという「インカ・ローズ」、「RDNZL」などを含むそのほかの楽曲は初収録となる。

- マザーズのリハーサル・ホールで行われたパフォーマンスは、著名なウォリー・ハイダーの録音トレーラーを使用し、70年代中盤のザッパ作品に多く携わったケリー・マクナブの手でテープに収められた。本パッケージでは、スタジオ1LAのエリック・ゴーベルとカーマ・オーガーがそのミキシング/マスタリングを担当。ブルーレイでは、ドルビーアトモス、5.1chサラウンド、96kHz/24-bitのハイレゾ・ステレオの各高音質フォーマットで歴史的な1日を追体験できる。

- 英文ブックレット:ザッパ家のテープ倉庫管理人であるジョー・トラヴァース、70年代のザッパ作品において比類ない貢献をしたルース・アンダーウッドの2名による詳細なライナーノーツ等々を掲載。

【発売詳細】

UICY-80630 価格:9,900円税込

<日本盤のみ>
英文ライナーの完訳/歌詞・対訳付
日本語字幕付(ブルーレイ)
SHM-CD仕様

<曲目リスト>
チーパー・ザン・チープ:ザ・サウンドトラック
DISC ONE(CD)
1. “チーパー・ザン・チープ”
2. コズミック・デブリス
3. バンド・イントロダクションズ
4. RDNZL
5. ヴィレッジ・オブ・ザ・サン
6. モンタナ
7. デューク・ゴーズ・アウト
8. インカ・ローズ
9. “ゲット・ダウン・シモンズ”
10. ペンギン・イン・ボンディッジ
11. テマーシ・ドゥウィーン
12. ザ・ドッグ・ブレス・ヴァリエーションズ
13. アンクル・ミート

DISC TWO(CD)
1. ハウ・クッド・アイ・ビー・サッチ・ア・フール
2. アイム・ノット・サティスファイド
3. ウォウィー・ゾウィー
4. アイ・ドント・イーヴン・ケア
5. レッツ・メイク・ザ・ウォーター・ターン・ブラック
6. デュプリーズ・パラダイス・イントロダクション
7. デュプリーズ・パラダイス
8. オー・ノー
9. サン・オブ・オレンジ・カウンティ
10. モア・トラブル・エヴリー・デイ
11. アポストロフィ (‘)
12. カマリロ・ブリロ

▼チーパー・ザン・チープ:ザ・ムービー
BLU-RAY DISC
48kHz 24-bitドルビーアトモス、96kHz 24-bitドルビーTrueHD 5.1、96kHz 24-bit PCMステレオ
◎ イントロ/チープニス〜パーカッション/”チーパー・ザン・チープ”
◎ コズミック・デブリス
◎ バンド・イントロダクションズ
◎ RDNZL
◎ ヴィレッジ・オブ・ザ・サン
◎ モンタナ
◎ デューク・ゴーズ・アウト
◎ ア・ヴィジット・トゥ・ジ・アート・スタジオ
◎ インカ・ローズ
◎ “ゲット・ダウン・シモンズ”
◎ ペンギン・イン・ボンディッジ
◎ テマーシ・ドゥウィーン
◎ ザ・ドッグ・ブレス・ヴァリエーションズ
◎ アンクル・ミート
◎ ハウ・クッド・アイ・ビー・サッチ・ア・フール
◎ アイム・ノット・サティスファイド
◎ ウォウィー・ゾウィー
◎ アイ・ドント・イーヴン・ケア
◎ レッツ・メイク・ザ・ウォーター・ターン・ブラック
◎ デュプリーズ・パラダイス・イントロダクション
◎ デュプリーズ・パラダイス
◎ オー・ノー
◎ サン・オブ・オレンジ・カウンティ
◎ モア・トラブル・エヴリー・デイ
◎ アポストロフィ (‘)
◎ カマリロ・ブリロ

特典映像:
◎ タイム・イズ・マネー(エクサープト)
◎ エキドナズ・アーフ(オブ・ユー)〜インコンプリート
◎ アート・スタジオ・アウトテイクス
◎ ジ・アメイジング・ミスター・ビックフォード(エクサープト)

<プレスリリース翻訳>
1970年代前半のアメリカでは、”ミッドナイト・スペシャル”、”ソウル・トレイン”、”イン・コンサート”といった音楽パフォーマンス番組が大流行していた(英国では”オールド・グレイ・ホイッスル・テスト”が同様の人気を誇った)。そうした番組はロック/ポップ/R&Bなど様々なジャンルのアーティストの姿を全国のお茶の間に直接届け、かつてない”自宅でのコンサート体験”を提供していたのである。そんな中、フランク・ザッパは――実に彼らしい話だが――自らテレビ特番の制作に乗り出した。彼は上記のような番組に触発されたのかもしれないし、テレビ局から演奏の依頼が来ることはないと悟ったのかもしれない。だがおそらく、彼は番組のあらゆる側面を自分自身でコントロールしたかったのだろう。

 1974年の夏の始まりを告げる6月21日、ザッパと彼のバンドであるマザーズ・オブ・インヴェンションは、少人数の観客をカリフォルニア州ハリウッドのサンセット大通りにある質素なリハーサル・ホールに招いた。そこで彼らは、魅惑的で汗にまみれた2時間超のパフォーマンスを披露したのである。会場には小規模な撮影隊も入り、彼らは複数台のカメラで魅力溢れる演奏をもれなく録画した。また、音声は移動式の録音トレーラーを使ってテープに収められた。だが残念なことに、撮影された映像を見たザッパはひどく落胆することとなった。というのも、それ以前のロキシーでのプロジェクト同様、このときも音声素材と映像素材がうまく同期しなかったのである。しかしその2ヶ月後、ザッパはロサンゼルスに拠点を置くPBS(公共放送サービス)の系列局KCETと手を組み、ようやく望んでいた形のテレビ特番を制作。その映像はのちに『ザ・ダブ・ルーム・スペシャル』として販売用にリリースされている。こうした経緯から、主要テレビ局に売り込む予定だった6月のコンサートはお蔵入りとなり、ザッパが生涯で再びこれに手をつけることはなかった。このパフォーマンスは50年以上ものあいだ、テープ倉庫に眠ったままだったのである。

 そしていま、猛烈な暑さの中で魔法のような時間が流れた1974年のあの夏の夜から50年以上の時が経った。撮影素材を編集する技術が発達したおかげで、ついに世界中のファンは会場の最前列に居合わせたように当日のコンサートを追体験できるようになったのである。『チーパー・ザン・チープ』と名付けられたこの作品には2時間に及ぶ未公開ライヴ映像/音源が収録されているが、1974年のマザーズが観客とこれほど近い距離感で演奏している映像はほかに存在しない。そんな本作に使用されているのは、テープ倉庫に保管されていた音声/ビデオのオリジナル・マスターから丁寧に復元・修復された素材である。

 監督にアーメット・ザッパ、プロデューサーにフランク・ザッパ、ジョー・トラヴァース(テープ倉庫管理人)、アーメット・ザッパが名を連ねる『チーパー・ザン・チープ』は、5月9日にZappa.com、uDiscover Music、Sound of Vinyl限定で先行発売される。本作は複数のフォーマットでリリースされる予定で、数量限定の特別なスーパー・デラックス・ボックス・セットもその1つ。このセットはブルーレイ+2CD+3LPで構成され、ブルーレイにはドルビーアトモス、5.1chサラウンド、ステレオの各ミックスを選択できるライヴ映像を、2CDと180グラム重量盤ピクチャー・ディスク仕様の3LPにはいずれもステレオのサウンドトラックを収録。14ページのブックレットは未公開の秘蔵写真や、資料性に富んだトラヴァースのライナー・ノーツ、そして当日のパフォーマンスでもパーカッションを担当したルース・コマノフ・アンダーウッドによる詳細で心のこもった回想録を掲載した充実の内容だ。付属する4枚のリトグラフを含め、このボックス・セットの収録物はすべてスリップケースに収納されているる。さらに、ブルーレイには4つの特典映像も収録――うち2つは楽曲のパフォーマンス、1つは撮影中のNG集、そしてもう1つは現在廃盤となっているクレイアニメ作品『ジ・アメイジング・ミスター・ビックフォード』の見応え十分な抜粋版だ。なお、本作はこのボックス・セット以外にブルーレイ+2CDのセットや、180グラム重量盤ブラック・ヴァイナル仕様3LPのサウンドトラック単体でも販売される。

 サイケデリックな照明やステージ・セットから撮影隊の手配や音声録音に至るまで、DIY精神溢れる撮影に関わるすべての資金はザッパのポケット・マネーから投じられた。そのためか本人はコンサートの冒頭で”チープどころじゃない最高の安っぽさ”と自虐している。タイトルに”Cheep”という誤った綴り(正しくは”Cheap”)が意図的に使われているのは、彼の楽曲である「チープニス(Cheepnis)」――50、60年代のB級モンスター映画とその特別な魅力に対するザッパの愛がこもった1曲――へのオマージュでもあり、この特番がわずかばかりの予算で作られていることを強調する皮肉交じりの冗談でもある。実際、ホールの中に設営されたステージには、簡易的な背景や照明を含めてグループの直近のツアーの機材がそのまま流用されていた。そしてコンサートは複数台のカメラにより、当時の業界の標準規格だった2インチ/4ヘッドVTRのテープに記録。一方、音声の録音には2つの16トラック・テープ・マシンを搭載したウォリー・ハイダーの録音トレーラーが使用され、エンジニアはケリー・マクナブが務めた。

 本作『チーパー・ザン・チープ』は、基本的にFZの構想に忠実な形で纏められている。もともと想定されていたパートはそのまま盛り込み、ライヴ・パフォーマンスは当日の演奏順と1974年当時の標準的なセットリストを参考に配列されているのだ。また、このプロジェクトを形にするにあたっては監督のアーメット・ザッパとプロデューサーのジョー・トラヴァースを筆頭とする特別なチームが編成された。『ロキシー・ザ・ムーヴィー』にも携わったジョン・アルバリアンは、本作でもパフォーマンス映像の編集を担当。長年倉庫に眠っていたこの映像と音声を同期させるという、骨の折れる作業を完璧に遂行してみせた。またジェレミー・ローズは付加的な編集を担当し、作品をより魅力的なものに仕上げる役割を果たした。そして、音響エンジニア・チームとして高い評価を得るエリック・ゴーベルとカーマ・オーガーはこのコンサートのミキシングを担当。5.1chサラウンドやステレオのほか、没入感のあるドルビーアトモスのミックスも手がけた。

 トラヴァースはザッパ家のテープ倉庫管理人を務める中で、箱の背に分かりやすく”June 21st, 1974″と書かれた音声/ビデオのマスターによく出くわしていたという。しかし、その中にお宝が眠っていることを彼が知ったのは何年もの歳月を経たあとだった。彼はライナーの中でこう綴っている。「その中身が何で、何のために録られたものなのか私は知らなかった。長年のあいだ、それは謎に包まれたままだったのである。各素材のデジタル変換は予算と優先順位との兼ね合いから、長い期間の中で少しずつ進められてきた。中にはゲイル・ザッパが存命だった2000年代に、内容の確認のために変換されたものもあった。その中身がようやく明らかになったときの私たちの興奮は想像に難くないだろう。ずっと地中に埋まったままだった金鉱をついに掘り当てたのだ。そののち、マスターの大部分はアレックス・ウィンターが2017年ごろにKickstarterで立ち上げた”Save The Vault”のキャンペーンを通じてデジタル変換された」。

 ザッパが率いるバンドの顔ぶれは、彼の構想や常に変化する音楽スタイルに応じて絶えず入れ替わっていた。そして、この撮影が行われたときのマザーズ・オブ・インヴェンションもそうしたヴァリエーションの1つだった。その前の3月には10周年ツアーに向けてバンドの人数が増えたが、6月には編成が小規模になっていたのである。それゆえザッパ(ギター/ヴォーカル)、チェスター・トンプソン(ドラム)、ジョージ・デューク(キーボード/ヴォーカル)、ジェフ・シモンズ(ギター/ヴォーカル)、ナポレオン・マーフィー・ブロック(テナー・サックス/フルート/ヴォーカル)、ルース・アンダーウッド(パーカッション)、トム・ファウラー(ベース)から成る当時のグループは、6月21日の時点でまだ万全の状態とはいえなかった。しかもアンダーウッドは個人的な理由でそれまで数ヶ月バンドを離れており(彼女はブックレットに掲載されるエッセイの中で、そのことについても鮮やかに綴っている)、難解な楽曲に順応し直している最中だった。その上、撮影の環境にも問題があった。照明機材が猛烈な熱を放っていたこともその1つで、ジョージのキーボードが演奏できないほど熱くなったこともあったという。アンダーウッドはこう回想している。「あの日の朝には、長いリハーサルと入念なサウンドチェックがあった。照明がセットされて、カメラ・クルーや観客がこじんまりしたバンドのリハーサル・ホールいっぱいに詰め込まれると、室内は耐えられないほどの暑さになった。……それに、いくつかの曲に関してはフランクが何テイクか演奏すると言い張ったので、私たちの疲労はさらに蓄積していった」。

 しかしこの日のパフォーマンスは、そうした過酷な状況をまるで感じさせない刺激的なものだった。ザッパ率いるマザーズは、当時のセットリストを構成していた定番曲のみならず、すでに膨大な数があった作品群の中から幅広い楽曲を取り上げて熱烈なライヴを披露したのである。実際、数ヶ月前の3月にリリースされたばかりのアルバム『アポストロフィ (‘)』に収録されている「コズミック・デブリス」や表題曲「アポストロフィ (‘)」も演奏されたし、当時はアルバム未収録の「ヴィレッジ・オブ・ザ・サン」や「RDNZL」(後者ではアンダーウッドによるマリンバの名演が特に光る)の初期ヴァージョンも本作では聴くことができる。また、「モンタナ」と「カマリロ・ブリロ」は1973年作『オーヴァーナイト・センセーション』より。「ザ・ドッグ・ブレス・ヴァリエーションズ」と「アンクル・ミート」は1969年作『アンクル・ミート』の収録曲だ。ザッパのデビュー・アルバムである『フリーク・アウト!』からも「ハウ・クッド・アイ・ビー・サッチ・ア・フール」、「アイム・ノット・サティスファイド」、「ウォウィー・ゾウィー」の3曲が取り上げられたが、一方で「サン・オブ・オレンジ・カウンティ」や「モア・トラブル・エヴリー・デイ」など、数ヶ月後の同年9月に発表された『ロキシー&エルスウェア』の収録曲もこの日にいくつか演奏されている。そのほか、1968年作『ウィー・アー・オンリー・イン・イット・フォー・ザ・マニー』収録の「レッツ・メイク・ザ・ウォーター・ターン・ブラック」、ライヴの定番だった「デュプリーズ・パラダイス」や「ペンギン・イン・ボンディッジ」、翌年発表のアルバム『ワン・サイズ・フィッツ・オール』に収められた「インカ・ローズ」なども本作の大きな聴きどころ。さらに、このコンサートではメンバー全員が驚異的な即興演奏を次々に披露しているが、その中でザッパも伝説的なギターの腕前を見せつけている。

 そうしたライヴ映像の途中には、ザッパのアルバム・ジャケットを数多く手がけたイラストレーターのカル・シェンケルと、クレイアニメ作家/監督のブルース・ビックフォードが登場するシーンも挿入されている。ビックフォードは長年に亘りザッパと手を組み、『ア・トークン・オブ・ヒズ・エクストリーム』(1976年)や『ベイビー・スネイクス – ザ・ムーヴィー』(1979年)など多くのプロジェクトに参加した人物。当時はザッパの制作会社であるインターコンティネンタル・アブサーディティーズ社と契約を結んだばかりで、このテープは彼の姿を記録した最初期の映像である。

 この撮影が行われたころ、バンドは顔ぶれが変わってからあまりリハーサルを重ねられていなかった。それゆえザッパは、彼らをゴールデン・タイムのテレビに出すのはまだ早いと考えていたかもしれない。それでもこの『チーパー・ザン・チープ』は、メンバーそれぞれがその実力を遺憾無く発揮し、バンドとしての演奏を思い切り楽しむ姿を捉えた素晴らしい記録映像だ。そのことは、彼らがステージで見せる満面の笑みからも明らかである。のちにこのラインナップはファンのあいだで大きな人気を得ることとなるが、このパフォーマンスを見ればその理由がよく分かることだろう。

 「この映像には、あらゆる役割を自分一人でこなす男の姿が映っている。彼は制御しようのない不安定な状況の中で、ビデオに収められたこのイベントのあらゆる側面を自分の手でコントロールしようとしている」。アンダーウッドは当日のザッパについてそう綴っている。「しかもその上で彼はコンサートの進行役を務め、自分でも演奏に参加している。それ自体はFZにとって特別なことではないけれど、それが私たちの目の前で繰り広げられるのは特別なことなのだ」。