“幻のアルバム”『ファンキー・ナッシングネス』日本盤3CDで6月30日発売!

2023.05.08 TOPICS


フランク・ザッパ
『ファンキー・ナッシングネス』3CD
Frank Zappa – Funky Nothingness

発売日:6月30日

歴史的名盤『ホット・ラッツ』 (1969年) の続編ともいうべき1970年春のスタジオ・セッションの成果等を纏めた”幻のアルバム”が50年以上の時を経て日本盤3CDで登場。


オリジナル・マザーズの解散から、ツイン・ヴォーカルのフロ&エディを擁する新生マザーズの始動に至る端境期に行われた貴重なレコーディング・セッションの成果を集約。ファンを狂喜させた秘蔵音源集『ザ・ホット・ラッツ・セッションズ』 (2019年) と『ザ・マザーズ1970』 (2020年) のあいだに位置する一級の発掘音源集。全25曲の未発表音源/レア・トラックを収録。エインズリー・ダンバー、ドン・シュガーケイン・ハリス、イアン・アンダーウッド、マックス・ベネットから成るコア・メンバーを迎えて1970年に制作された未発表のオリジナル曲、カヴァー曲、ジャム・セッションを計3時間半にわたって収録。

『ホット・ラッツ』の流れを汲むインストゥルメンタル・ナンバーとブルース/R&B系のヴォーカル・ナンバーを中心にした作品。ザッパ自身がリリースを念頭に編集/ミックスを終えていたトラック、クレイグ・パーカー・アダムス (ウィンズロー・コネチカット・スタジオ) がオリジナルのマルチトラック・テープから制作した最新ミックス音源等で構成。また、すべてのトラックについてジョン・ポリート (オーディオ・メカニクス) がマスタリングを手がけた最新マスターを使用。

主役であるフランク・ザッパのプレイはもとより、『ホット・ラッツ』にもフィーチャーされていたブルース・ヴァイオリンの名手、ドン・シュガーケイン・ハリス (元ドン&デューイ) 、本作がザッパとの初の録音となる英ロック・シーンを代表するドラマー、エインズリー・ダンバー (ジェフ・ベック・グループ、ジャーニー、ホワイトスネイク他) らの名演も必聴。

収録トラックの大半は完全未発表の秘蔵音源。『チャンガズ・リヴェンジ』 (1970年) 、『ロスト・エピソード』 (1996年) 等で既出のテイクも、編集やミックスが異なる初出ヴァージョンで収録。中でも「トランシルヴァニア・ブギ」、「ザ・クラップ」の未編集ヴァージョンは大きな聴きどころ。

英文ブックレットにはザッパ家のテープ倉庫管理人であるジョー・トラヴァースによるライナーノーツ、各トラックの出所などに関する解説に加え、セッション風景を捉えた写真家のジョン・ウィリアムズによる貴重な写真資料等を掲載。

「『ファンキー・ナッシングネス』は、あらゆる面で見事に期待に応えるアルバムだ。ここに収録されているトラックを聴けば、ザッパがリズム&ブルースの大ファンだったことがよくわかる。またこのアルバムは、長尺なインストゥルメンタル曲の即興演奏によってロック、ジャズ、クラシックといった要素を融合させ、『Hot Rats』の路線をさらに推し進めていた。
そうしてできた音楽は「ザッパ」としか形容できないものだった」
- ジョー・トラヴァース(ザッパ家テープ倉庫管理人)

未発表トラック「ワーク・ウィズ・ミー・アニー/アニー・ハド・ア・ベイビー」が先行配信中。
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【発売詳細】

『ファンキー・ナッシングネス』3CD

UICY-16160/2 価格:5,280円税込

<日本盤のみ>
英文ライナーの完訳付/歌詞対訳付
SHM-CD仕様

【収録曲】
DISC 1
▼ファンキー・ナッシングネス〜ジ・アルバム
1. ファンキー・ナッシングネス
2. トミー/ヴィンセント・デュオ 1
3. ラヴ・ウィル・メイク・ユア・マインド・ゴー・ワイルド
4. アイム・ア・ローリン・ストーン
5. チャンガズ・リヴェンジ(ベースメント・ヴァージョン)
6. ベースメント・ジャム
7. ワーク・ウィズ・ミー・アニー/アニー・ハド・ア・ベイビー
8. トミー/ヴィンセント・デュオ 2
9. シャリーナ(1970レコード・プラント・ミックス)
10. カーキ・サック
11. トゥインクル・ティッツ

DISC 2
▼ザッパ/ホット・ラッツ ’70:セッション・マスターズ&ボーナス・ナッシングネス
1. チャンガズ・リヴェンジ(テイク5)
2. ラヴ・ウィル・メイク・ユア・マインド・ゴー・ワイルド(テイク4)
3. トランシルヴァニア・ブギ(アンエディテッド・マスター)
4. シャリーナ(アンエディテッド・マスター)
5. ワーク・ウィズ・ミー・アニー/アニー・ハド・ア・ベイビー(オルタネイト・エディット)
6. トゥインクル・ティッツ(テイク1、フォールス・スタート)
7. トゥインクル・ティッツ(テイク2)

DISC 3
▼ザッパ/ホット・ラッツ ’70:モア・セッション・マスターズ&ボーナス・ナッシングネス
1. ザ・クラップ(アンエディテッド・マスター パート1)
2. ザ・クラップ(アンエディテッド・マスター パート2)
3. トミー/ヴィンセント・デュオ(アンエディテッド・マスター)
4. チャンガズ・リヴェンジ(テイク8)
5. ヘイローズ・アンド・アローズ
6. モールダード
7. ファスト・ファンキー・ナッシングネス


 
<海外プレス・リリース全文訳>

代表作『Hot Rats』の続編としてリリース予定だったとされるランク・ザッパの秘蔵レア音源がテープ倉庫から発掘され、新作『Funky Nothingness』として陽の目を見る

- 全25曲の未発表音源/レア・トラックを収録。エインズリー・ダンバー、ドン・シュガーケイン・ハリス、イアン・アンダーウッド、マックス・ベネットから成る少人数のグループを集めて1970年に録音された未発表のオリジナル曲、カヴァー曲、即興演奏は合計で3時間半分に及ぶ。

- CD 3枚から成る豪華なデラックス・エディションには、知られざるレコーディング・セッションからのアウトテイクやオルタネイト・エディット、そして未編集マスターなどを併録。

- フランク・ザッパの新たな発掘作『FRANK ZAPPA / FUNKY NOTHINGNESS』 ―― 6月30日にザッパ・レコーズ/UMeより販売開始。

 「『Funky Nothingness』は、あらゆる点で見事に期待に応えるアルバムだ。ここに収録されているトラックを聴けば、ザッパがリズム&ブルースの大ファンだったことがよくわかる。またこのアルバムは、長尺なインストゥルメンタル曲の即興演奏によってロック、ジャズ、クラシックといった要素を融合させ、『Hot Rats』の路線をさらに推し進めていた。そうしてできた音楽は「ザッパ」としか形容できないものだった」 ―― ジョー・トラヴァース (ザッパ家テープ倉庫管理人)

 

 ロサンゼルス – 2023年4月21日: 1969年、マザーズ・オブ・インヴェンションを解散させたフランク・ザッパは、画期的なソロ・デビュー作『Hot Rats』をリリースした。ジャズとロックを融合させた革新的な作風のそのアルバムは、「Peaches En Regalia」、「Willie The Pimp」といった名曲を収録されていたこともあり、ザッパ史上屈指の売上を記録。ザッパは翌年にかけて、さまざまなプロジェクト (それにはキャプテン・ビーフハートのデビュー・アルバム『Trout Mask Replica』のプロデュース、ベルギーで開催された”Festival Actuel”におけるMCの担当といった仕事も含まれる。ちなみに”Festival Actuel”は、ザッパがイギリス人ドラマーのエインズリー・ダンバーと出会うきっかけになったことでも知られる) の合間を縫って少人数のグループを編成し、ロサンゼルスに開業したばかりのレコード・プラントで楽曲制作を進めていった。

 完成したばかりのレコード・プラントにおけるレコーディング・セッションは、主に1970年2月から3月にかけて行われた。このときもプロデュースはザッパ自身が手がけ、『Hot Rats』で演奏したミュージシャンたち ―― マザーズのメンバーだったイアン・アンダーウッド (キーボード、サックス、リズム・ギター) 、ドン・シュガーケイン・ハリス (ヴァイオリン、ヴォーカル) 、レッキング・クルーの一員だったマックス・ベネット (ベース) など ―― がこの録音にも参加した。そして、5人編成のバンドの最後のピースとなったのは、ドラマーのエインズリー・ダンバーだった。彼は当時、ザッパの誘いを受けてロサンゼルスに移り住み、ザッパ邸で暮らし始めたばかりだった。そんなダンバーを含む5人は、オリジナル曲や、発想力豊かにアレンジされたカヴァー曲、そして長尺の即興演奏などを合計で数時間分、テープに落とし込んでいった。それらはどれも、ザッパのルーツであるR&Bやブルースを基調としつつ、黎明期にあったフュージョンからの影響を滲ませたサウンドであった。また、インストゥルメンタル・パートの多いこれらの音源でザッパは、ギタリストとしての見事な腕前を披露している。リリースされていれば、『Hot Rats』の続編と呼ぶに相応しい作品になっていたことだろう。

 ザッパはその中からお気に入りのテイクを見定め、将来的なリリースに向けてミキシングも行っていた。だがザッパというあまりに多作なミュージシャンは、時間が経つにつれ、音楽への飽くなき探究心を別の方向へ向けるようになっていった。これらの音源がリリースに至らなかった実際の理由はわからないままだが、このレコーディングの直後にフロ&エディ ―― マーク・ヴォルマンとハワード・ケイランから成るコメディ・ロック・デュオ ―― と出会ったことがきっかけになった可能性がある。それよってザッパは二人との活動を決意し、バンドの人数も増員。そして、インストゥルメンタル中心の作風から、ヴォーカルに重きをおいた作品づくりへ移行していったというわけだ。マザーズに加わったフロ&エディは、ザッパのアルバム『Chunga’s Revenge』に参加。大部分が1970年の夏に録音された同作は、その年の10月にリリースされている。さらに、ザッパは1970年の暮れごろになると、映画『200 Motels』 (およびそのサウンドトラック) の企画や脚本・楽曲作りにすっかりのめり込んでいた。その間、この素晴らしい音源はずっと棚上げされていたのである。

 それから50年以上の時を経て、これらの音源はザッパ家の巨大なテープ倉庫から発掘された。そして、それを聴いたテープ倉庫管理人のジョー・トラヴァースとアーメット・ザッパはそれが特別なテープであることに気づいた。彼らは、ザッパ本人がプロデュース/ミックスし、長年に亘って手を加えてきたそれらのトラックを全11曲のアルバムに纏め上げた。その作品は、1967年の『Uncle Meat』の制作期間中にザッパが録音したシンプルなブルース調の楽曲にちなんで『Funky Nothingness』と名付けられた。トラヴァースは、もともと『Chunga’s Revenge』の1曲目に配される予定だったというこの短い未発表曲が「アルバムの雰囲気を決定づけている」と解説する。同曲はこのアルバムのほかの収録曲より数年早くレコーディングされたものだが、ザッパはこの曲をレコード・プラントで制作された楽曲群と同じビルド・リール (レコードでの構成を考えながら曲を順番に並べてつなげたリール) に組み込んでいた。そのことからも、ザッパがこれを世に出そうとしていたことが窺える。また、そのレコーディング・セッションで制作された音源の一部はこれまでにも陽の目を見ているが (「Sharleena」の総尺12分に及ぶヴァージョンが、ザッパの死後にリリースされた1996年作『The Lost Episodes』に収められていたことを覚えているファンもいるはずだ) 、それらの音源を統一感のあるアルバムに纏めたのは『Funky Nothingness』が初めてである。トラヴァースは以下のように綴っている。「今回の『Funky Nothingness』というアルバムには、しっかりと作曲された楽曲が少なくとも3曲、カヴァー曲が2曲、ジャム志向のインストゥルメンタルの断片が複数含まれており、そのいずれもがこれまで未発表だった。その点で、これは特別なアルバムとなっている。これほど長いあいだ未発表になっていた一時期のセッションから、こんなにもたくさんの曲が発見されるのはきわめてめずらしいことだ」。

 アーメット・ザッパとジョー・トラヴァースがプロデューサーを務め、二人で纏め上げた『Funky Nothingness』は、6月30日にザッパ・レコーズ/UMeより複数のフォーマットで発売される。CD 3枚組の豪華なデラックス・エディションでは、ディスク1に全11曲のアルバム本編を収録。残る2枚のディスクには、この時期に制作されたトラックのアウトテイク、オルタネイト・エディット、未編集マスター (「Transylvania Boogie」、「The Clap」、「Chunga’s Revenge」など) に加え、長大な即興演奏やその他のボーナス・トラックを併録している。また、全28ページのブックレットには、写真家のジョン・ウィリアムズが撮影したレコーディング風景の写真や、トラヴァースによる詳細なライナー・ノーツと楽曲解説が掲載される。なお、ディスク1の収録曲には、当時にザッパが制作したミックスのほか、クレイグ・パーカー・アダムス (ボーナス・トラックのミキシングも彼の手によるものだ) による最新ミックスも含まれる。他方でそのすべてについて、マスタリングはオーディオ・メカニクスのジョン・ポリートが担当した。全25曲の収録曲のうち23曲は完全な未発表トラックであり、この作品で初収録となる音源は合計で3時間半分に及ぶ。そんな『Funky Nothingness』のデラックス・エディションについてはデジタル配信も行われる予定で、一般的な音質とハイレゾ品質 (96kH/24bit) の両方でストリーミングやダウンロードが可能となる。

 さらに、『Funky Nothingness』は2枚組のアナログ・レコードとしても発売される予定だ。ブラック・ヴァイナルの通常版と、クリア・ヴァイオレットの限定版カラー・ヴァイナルの2種類があり、いずれも180グラムの重量盤となっている。レコードのプレスはオプティマル・メディアにて行われ、ラッカー盤のカッティングはクリス・ベルマン (バーニー・グランドマン・マスタリング) が担当。これらのアナログ盤には、ザッパ本人が手がけた当時のミックスのみが収録される。なお、コレクターにはたまらないギター・ピックも付属する限定版カラー・ヴァイナルは、Zappa.com、uDiscover Music、Sound Of Vinylのみで限定販売される。

 そして本日より、同アルバム収録の未発表トラック「Work With Me Annie/Annie Had A Baby」が先行公開される。このトラックは、ハンク・バラード&ザ・ミッドナイターズが1954年にリリースした二つのヒット曲を組み合わせたもの。バラード作の「Work With Me Annie」と、そのアンサー・ソングである「Annie Had A Baby」 (作曲はヘンリー・グローヴァーとシドニー・ネイサン) の2曲がメドレー形式で演奏されている。このメドレーでヴォーカルを務めたのは、50年代にドン&デューイの片割れとして人気を博したドン・シュガーケイン・ハリスである。R&Bデュオ、ドン&デューイのファンだったザッパは、このレコーディングの機会を利用して、ハリスとともにR&Bの名曲を演奏したのである。

 ハリスはソウル・バラードの名曲である「Love Will Make Your Mind Go Wild」でもヴォーカリストとして楽曲の主役を務め、終盤には卓越したヴァイオリン・ソロも披露している。他方、ザッパは12分半近い長さを誇る「I’m A Rollin’ Stone」でリード・シンガーを務めている。ライトニン・スリムの楽曲をカヴァーしたこのトラックは1974年のアルバム『Apostrophe (‘) 』を締めくくる1曲にしてザッパの代表曲である「Stink-Foot」の基礎にもなっている。ザッパはドラム、ヴァイオリン、ベースを残してマルチトラック・マスターから自身のヴォーカルを取り除き、そこに新たなギターとヴォーカル、そしてサウンド・エフェクトを加えることで、これをまったく別の楽曲に仕上げたのである。

 そのほか、ノリの良いソウル/ジャズ調のインストゥルメンタル・ナンバー「Khaki Sack」では、イアン・アンダーウッドのオルガンの腕前を堪能することができる。この曲は、マザーズとしてのツアーでも折に触れて演奏されていたものだ。ライヴ・ヴァージョンはこれまでにも世に出ていたものの (ボックス・セット『Beat The Boots! II』に「w̃hät」というタイトルで収録されていたものが特に知られている) 、スタジオ音源は本作収録のヴァージョンしか見つかっていない。また、ブートレグ盤にしばしば登場していた「Twinkle Tits」という曲に聴き覚えのあるファンもいるだろう。この曲も、バンドとしてコンサートで披露していたことのあるナンバーだ。

 出会ったばかりのザッパとダンバーによる魔法のようなコラボレーションが楽しめる「Tommy/Vincent Duo II」も、実に見事な即興演奏だ。デラックス・エディションのディスク3には、22分近くに及ぶ長大な未編集ヴァージョンも収められている。このトラックについて、トラヴァースは以下のように綴っている。「1970年までのあいだに、フランクはマザーズやロサンゼルスのスタジオ業界で素晴らしいドラマーたちと共演してきた……。 (しかし) エインズリーの登場によって、いろいろなものが新たな段階に上がることになった。当時フランクがどういう気持ちだったのかは、たやすく理解できる。エインズリーとの化学反応で音楽的にどのような道が開けてくるのか、確かめたくてウズウズしていたに違いない。その証拠となるのがこの音源だ」。

 デラックス・エディションのすべてのディスクには、いずれも「Chunga’s Revenge」の別テイクが収録されている。この楽曲はのちの1970年10月、 (実質的に) 『Hot Rats』に続く新作となった『Chunga’s Revenge』の表題曲として陽の目を見た1曲だ。その中でも本アルバムの本編に収められている「Chunga’s Revenge (Basement Version) 」は、ローレル・キャニオンにあるザッパ宅の地下室にて、4チャンネル・ステレオ方式で録音されている。その録音が行われたのは、4チャンネル・ステレオの機材が一般のリスナー向けに販売される3年近くも前のことだった。ザッパはその後、4チャンネルのトラックを基に2チャンネル・ステレオのミックスを制作。本作に収められているのもまさにそのミックスである。

 「Sharleena」、「Transylvania Boogie」、パーカッションを中心とした「The Clap」に関しても、興味深いヴァージョンが収録されている。特に、『Chunga’s Revenge』では短く編集されていた「The Clap」の完全版が未編集で聴けるのは本作が初めてとなる。また、「Halos And Arrows」も注目すべきボーナス・トラックだ。マルチトラック・リールの最後に組み入れられていた同曲は、ザッパのギターをフィーチャーした実験的なナンバーである。

 これらの音源を収めたマルチトラック・テープは、実に多様なフォーマットで発見された。どうやら当時は、1インチの8トラック・レコーダー、2インチの16トラック・レコーダー、2インチの24トラック・レコーダーを自由に使い分けることができたようだ。トラヴァースは以下のように説明している。「1970年3月の時点で24トラック・レコーダーが本当に存在していたのであれば、今まで想定されていた時期よりも早くザッパが24トラックを導入していたことになる。この点についてはっきりした答えを出すのはききわめて困難だ。しかしながらフランクは新しい音響技術が利用可能になるとすぐに使い始めていたので、これほど早い時期から使用し始めていたとしても不思議はない」。さらに彼はこう続ける。「ベーシック・トラック録音後に加えられたポスト・プロダクションやオーバーダビングの分量はごく最小限に抑えられている。とはいえそこでは、エフェクトやテープ操作で実験を重ねるザッパのいつもながらの手法が使われていた。そうして作り出された特徴的なサウンドは、ザッパが1960年代に発表したスタジオ・アルバムの多くに似通っていた……」。

 しかし、何より重要なのは、これらの音源が滅多にないほどレアな掘り出し物だということだ。実際、トラヴァースもこう明かしている。「テープ倉庫からの発掘音源をまとめたアルバムの場合、ほかの時期のライヴ・コンサートやスタジオ・レコーディングで演奏されていた過去の曲の別アレンジ・ヴァージョンが収められていることはめずらしくない。しかしながら、完全に未発表の新曲というケースはごくわずかである。特に、1960年代から1970年代という、ザッパの黄金期の未発表曲というのは滅多に見つからない。今回の『Funky Nothingness』は、あらゆる面で見事に期待に応えるアルバムだ。ここに収録されているトラックを聴けば、ザッパがリズム&ブルースの大ファンだったことがよくわかる。またこのアルバムは、長尺なインストゥルメンタル曲の即興演奏によってロック、ジャズ、クラシックといった要素を融合させ、『Hot Rats』の路線をさらに推し進めていた。そうしてできた音楽は「ザッパ」としか形容できないものだった。ここでは、ギターの妙技と高度なテクニックに裏打ちされた音楽性が全開になっている」。