『音道』ライナーノート掲載

2018.04.28 TOPICS

ソロ活動20周年記念ベスト・アルバム『音道』ライナーノート

 

 
Chageがソロ活動20周年を記念して、初めてのソロ・ベスト・アルバム『音道』をリリースする。自他ともに認める彼の代表曲「終章(エピローグ)」のニュー・バージョンと書き下ろしの新曲「Viva!Happy Birthday!」、それにソロとして発表したすべてのシングルを収めた全16曲入り。ソロ・ボーカリストとしてのChageのこの20年を、まさに凝縮した内容だ。

「基本的にはシングル曲を集めた内容になってますが、シングルというのはその時々のベストな楽曲であるわけだから、このラインナップはそのまま僕の年表みたいなものなんですよ。Chageの歴史の道だから『音道』。すごいストレートだけど、これに勝るものはないなと思ってつけました」
この機会にChage自身もまたその“道”を辿り直し、あらためて気づいたことがあると言う。

「ソロの前にMULTI MAXがあって、もちろん本体としてC&Aの活動もあって、そこでソロを出すときに、C&AやMUTI MAXとは違う色を出すというテーマがあったわけです。つまり、Chageの音楽的な個性をどう出していくかということを考えてやってきたわけですけど、あらためて振り返ると、C&AもMULTI MAXも、そしてソロも、全部を通じて一貫したものがあると思うんです。それは、特に詞についての話になるんですけど、普遍的で日常的な日々の生活の中の出来事を歌いたいという思いはずっと変わらないんですよね。そこに、松井五郎が歌詞を書いてくれたものがちょっと違う角度から光を当ててくれたりして、それがまた面白いんですけど、僕が書くものについては誰でもわかる情景、訳してもらえば外国の人でも理解できるような表現を追い求めてきたと思うし、その気持ちはキャリアを重ねていくなかでますます強くなっているように思います」

もっとも、新しい制作に向かうことで新たに更新されていく思いもある。売れっ子プロデューサー、亀田誠治がプロデュースを担当した「終章(エピローグ)」のニュー・バージョンはその典型と言えるだろう。

「亀田くんがやると、やっぱりロックなんですよね。だからなのかなあ、恋の終わりの場面を歌ってるんだけど、今回のアレンジで聴くと、ただ哀しい、切ないだけの歌ではなくて、泣くだけ泣いて次に向かう、未来に歩き出そうとしている歌であるような気がしたんです。だから、僕の歌もそういうふうに歌ってますよ」
ハッピーでファンキーな新曲「Viva!Happy Birthday!」が伝えるのも、今を楽しみ、明日に向かおうというメッセージだ。

「ここまでストレートなバースデーソングというのは、自分の曲のなかに無かったんで、ずっと書きたかったんですよ。それが、60歳のこのタイミングで“今だ!”と思ったんでしょうね。しかも、ここまでファンクにこだわったサウンドの曲はなかったから、僕としてはちょっと冒険だったんですけど、自分がこういうサウンドを本当に楽しんだから、それをリスナーのみなさんにも感じてほしかったんです」
過去を振り返ってまとめたものでありながら、聴き通した後には、今を慈しみ、未来へ向かう気持ちを後押ししてくれるように感じさせるのが、“Chageのソロ・ベスト”の個性であり、最大の魅力だろう。

「生きてりゃ、いろんなことがあるんですよ。でも、一人で生きてるわけじゃないから、辛い時はそれを一緒にしのいで、楽しい時はその楽しさを思い切り分かち合うっていう。そういうことをこれまでに経験してきただろうし、これからもいろいろあるだろうけど、それも人生の彩りだと思えばきっと乗り越えられますよね。実際、ソロ・ベストとは言っても、僕一人ではここまでたどり着けなかったはずで、スタッフやバンドのメンバー、そしてリスナーのみなさんがいてくれたからやれたんです。だからこそ、この“今”を一緒に楽しみたいし、その先に向かって行きたいんですよ」
音楽家としての自らの原点とも言うべきナンバーの最新バージョンを冒頭に掲げ、その次にいちばん新しく書き上げた新曲を続けて、そこから20年を遡っていくという構成の妙は、聴き手自身の思い出との付き合い方のガイドにもなるはずだ。それぞれが自分の“道”を辿り直すとき、傍にあってほしい歌がここに在る。

兼田達矢