アンドリス・ネルソンス、ドイツ・グラモフォンと専属契約を結ぶ

2016.05.23 TOPICS

ラトヴィア生まれの指揮者アンドリス・ネルソンスは、グラミー賞受賞に輝いたボストン交響楽団とのショスタコーヴィチ交響曲集のシリーズ録音に続いて、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団とブルックナーの主要作品を録音する計画に加え、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とベートーヴェンの交響曲全曲録音を行うと発表した。

カリスマ的存在感をそなえた現代の指揮者として広く認められるアンドリス・ネルソンスは、ドイツ・グラモフォンと専属契約を結んだ。その発表は2016年5月19日にベルリンでおこなわれた。これによってラトヴィア出身の指揮者のレコーディング活動に大きな一歩が刻まれ、3つの画期的な計画へ道が開かれることとなった。

今月のはじめにおこなわれたボストン交響楽団およびドイツ・グラモフォンの発表によると、グラミー賞を受賞したネルソンス指揮のショスタコーヴィチ作品の演奏が、同社によるそのライブ録音の継続へと道を開いた。そして現在、ショスタコーヴィチの交響曲全曲録音および、《ムツェンスク郡のマクベス夫人》の録音も検討されている。

ドイツ・グラモフォン、ネルソンス、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の三者でさらに検討が進められた結果、ブルックナーの交響曲にも新たな光をあて、そのきわめて独自な音の世界に対して再評価がおこなわれることになった。
それに加え、ネルソンスは2016年から2019年にかけて、ドイツ・グラモフォンでベートーヴェンの交響曲の全曲録音をおこなう予定である。そしてベートーヴェンの生誕250周年にあたる2020年には、ネルソンスが新たにその交響曲の全曲演奏をおこなう計画も進められている。

「私はドイツ・グラモフォンと専属契約を結んだことを、心から喜んでいます」と、アンドリス・ネルソンスは語っている。「ドイツ・グラモフォンはボストンにおける私たちのショスタコーヴィチ作品の演奏に、協力を惜しみませんでした。いずれの録音でも同社にそなわっている伝統の力、専門知識、技術面での優秀さは、私にとってきわめて貴重でした。私は今回のドイツ・グラモフォンとの提携により、ボストン交響楽団とライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団という2つのたぐいまれなオーケストラと築きあげた音楽ファミリーの中に、同社を加えられたことを嬉しく思います。そしてウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とベートーヴェンの交響曲の全曲録音という企画は、私にとって大きな名誉です。ショスタコーヴィチ、ブルックナー、ベートーヴェンという天才たちの傑作を、世界最高の3つのオーケストラと録音することが、私の今後の録音活動の中心になるでしょう。これ以上の幸せはありません――夢であり、誇りでもあります」

アンドリス・ネルソンスは1978年にリガの音楽一家に生まれた。崩壊する直前のソ連で音楽の基礎を学び、その厳しい水準の恩恵を受けた。ネルソンスはラトヴィア国立歌劇場管弦楽団のトランペット奏者としてキャリアをスタートしたあと、指揮を学んだ。そしてラトヴィア国立歌劇場の音楽監督を務めた(2003-07年)のち、ヘルフォルトの北西ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者となり(2006-09年)、バーミンガム市交響楽団の音楽監督時代(2008-15年)に、国際的評価を確立した。

ネルソンスは、2014年にボストン交響楽団の音楽監督に就任。同交響楽団と築きあげた質の高い友好関係は、ドイツ・グラモフォンの〈スターリンの影の下でのショスタコーヴィチ〉と題するシリーズ録音の、1枚目に刻まれている。これは、ショスタコーヴィチの記念碑的な交響曲第10番のライブ録音で、2016年2月にグラミー賞の「オーケストラ部門最優秀賞」に選ばれた。シリーズの第2弾はショスタコーヴィチの交響曲第5、8、9番とシェイクスピアの〈ハムレット〉の付随音楽をカップリングした2枚組アルバムで、2016年5月27日に全世界リリース(日本盤は6月8日発売)される。

アンドリス・ネルソンスは2018年2月には、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の楽長(カペルマイスター)に就任する予定である。ネルソンスは2011年12月に同楽団にデビューして以来、定期的にこのオーケストラで客演指揮をおこなっている。ライプツィヒでは2016年5月26日、27日、および6月2日、3日にブルックナーの交響曲第3番を指揮する予定である。

ネルソンスがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を初めて指揮したのは2010年10月で、以後この管弦楽団を率いてヨーロッパ、日本、アメリカ各地で演奏旅行をおこなっている。ネルソンスとウィーン・フィルは2016年1月に演奏した交響曲第3番《英雄》を発端に、ベートーヴェンの交響曲を積極的にとりあげている。2017年の3月18、19、23日にはウィーン・フィルとベートーヴェンの交響曲第6番《田園》を演奏する予定である。

「アンドリス・ネルソンスと専属契約を結び、ボストンとライプツィヒという彼のすばらしい2つのオーケストラと協力関係が築けることは、私たちにとって最高の名誉です」と、ドイツ・グラモフォンのクレメンス・トラウトマン社長は語っている。「私たちの協力関係から生まれる録音は、古典派、ロマン派、20世紀音楽の傑作の数々で示される、真にすぐれたマエストロの力を記録することになるでしょう。アンドリスと、それぞれ独自な音楽的背景と伝統をもつこれらの3つの傑出したオーケストラは、どの企画においても、たぐいまれな演奏をおこない、古典的な作品に新しい命をもたらすはずです。彼らが残す録音が、史上最高の演奏として輝かしい地位を占めることを、私は信じて疑いません」