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GLIM SPANKYの誕生を紐解くインタビュー

[疾走する焦燥、新しい王道]

 それは確かに耳元で聴こえている声なのに、見つめた闇の向こうからこちらを見つめ返す視線のようでもある。雨上がりの夜の、むせ返るようなアスファルトの匂いを伝えたかと思えば、突如として幻のサーカスを描き出してみせる。ハスキーな声色はすでにブルースの魂を存分に宿していて、相棒のようなギターはうねりの咆哮を上げながら、迷信みたいにこちらの心を捉えようとかかってくる。  
 「焦燥」....それは今まさに我々の前へ姿を現すGLIM SPANKYの精神性と存在意義を、ある意味とても端的に象徴しているワードだと言っていい。GLIM SPANKYは松尾レミ(22)と亀本寛貴(23)のユニットである。二人は共に長野県の出身で、同じ高校に通っていた。出会いの発端は松尾の呼びかけで結成されたバンド(※当時は四人組)だった。名前はその時から今日まで同じ。つまりGLIM SPANKYとは、二人にとって生まれて初めての、そして今のところ人生で唯一のバンドでありユニットなのである。
「小学生の頃からケルト文化に興味を持っていて、高校生になってからは幻想文学の世界にハマりました。それで“GLIM(=灯火、かすかな光り)”という幻想的なイメージの言葉と、“SPANK”(=平手打ち)という攻撃的な要素を持った言葉を掛け合わせました。すると曲も自然とそういう雰囲気になりました。この名前が私たちの方向性を決定付けてくれた、とも言えますね」(松尾)
 松尾は父親が音楽とサブカルチャーに精通していたことから、1960~70年代のいわゆるレジェンダリーなロックをはじめ、一通りの洋楽と邦楽が鳴っていた環境で育った。一方、サッカー少年だった亀本は、もっと自分が打ち込める物を求めてギターと出会い、洋楽を中心にロックを掘り下げ始めた。
 ビートルズ、フー、ホワイト・ストライプス、レッド・ツェッペリン、ジミ・ヘンドリクス、ジョニ・ミッチェル、ザ・バンド、ブラック・サバス、レディオヘッド、アークティック・モンキーズetc.……様々なフェイバリットが二人の口から挙がる。松尾はバンドを始めると早々に曲を書き始め、亀本は彼女の曲と歌を最大限に活かすギターを心掛けることで、自身のギタースタイルを確立していった。
 GLIM SPANKYのメジャーデビュー曲となるこの「焦燥」は、松尾が17歳の時、生まれて初めて他者に聴かせることを意識して書いた曲だという。
「私は保育園に入る前から画家を志していました。でも、私が育った村は本当に田舎で、17歳の時に『美大に入って音楽活動をするのが目標です』と宣言したら、周囲から嘲笑を受けたんです。その時、悲しさや怒りを通り越して、『夢を持つことは間違っていないんだ』ということを、何か形にして伝えなければという思いにかられて、一気に書き上げました。私の人生を変えた一曲です」(松尾)
「アレンジはいったんインディーズ時代のものを全てぶっ壊して、いしわたり淳治(※本作のプロデュースを担当)さんと一緒にゼロから作り込みました。僕らが今、ライブで鳴らしたい音であり、僕らのバックグラウンドが見えるサウンドへと生まれ変わりました」(亀本)
 前述の通り、「焦燥」が彼らの精神性であり存在意義の象徴だとするならば、カップリングの「MIDNIGHT CIRCUS」は、GLIM SPANKYという名前の起源を具現化した、幻惑的なタッチが冴え渡るナンバーである。
「部屋でキャンドルを灯して、瞑想するように書きました。私の好きな文学や、絵本や、絵画の持つ世界をロックに落とし込みたい。それがこの曲を書いた動機でした」(松尾)
「この曲に限らず、彼女の描く世界観を洗練されたアレンジで鳴らしたい。オールドロックの雰囲気は持ちながらも、それだけに縛られずに、現代的なサウンドで表現していきたいんです」(亀本)
 彼らが口にするフェイバリットたちがそうであるように、ロックのサウンドは常に独自のグルーヴで構築されている。GLIM SPANKYのそれは、一度聴いたら忘れられない松尾の声色と、初期衝動をクールかつソリッドに奏でつつ、時にはもう一人のヴォーカルのように“歌う”亀本のギターとが絡み合って生まれて
いる。しかも今回はハマ・オカモト(OKAMOTO’S)とBOBO(くるり、MIYAVI etc.)の参加によって、その魅力は一層増幅されている。そしてもっと言えば、この盤石なリズムと抜群の相性を誇っている事実こそが、翻ってGLIM SPANKYの楽曲が持つ高い完成度を、すでに証しているとも言える。
 近年、海外ではジェイク・バグやザ・ストライプス、日本ではTHE BAWDIESやOKAMOTO’Sといった面々が、自身の世代感というフィルターを通した貪欲なまでの温故知新から、幅広い世代を唸らせるロックをドロップしている....疾走する焦燥、新しい王道。ロックのオーセンティックな魅力とアートの物語性を兼ね備えたGLIM SPANKYの登場は、ムーブメントの現状に鮮烈な一石を投じることになるだろう。
(内田正樹)

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