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WHITE LIES / ホワイト・ライズ
WHITE LIES
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WHITE LIES
WHITE LIES / ホワイト・ライズ

WHITE LIES / ホワイト・ライズ

Harry McVeigh (vocals / guitar),
Charles Cave (bass) & Jack Brown (drums).

2009年のデビュー・アルバム『トゥ・ルーズ・マイ・ライフ』(To Lose My Life)を引っ提げて回った、18ヶ月にわたるワールド・ツアー。その個人的ハイライトは何だったか、ホワイト・ライズに尋ねてみよう。するとほぼ即答で、熱を帯びた返事が返ってきたが、その内容はメンバーによって様々だ。

ドラマーのジャック・ローレンス・ブラウン(Jack Lawrence-Brown)の脳裏に浮かんだのは、2ヶ月ほど前の特別な思い出だ。「ニューヨークで『デヴィッド・レターマンショー』に出演した時にもらうTシャツを見つけたんだ。あれは僕にとって、重大事件だった。あれこそ本物のバンドがやることなんだ。つまり、国際色豊かなオーディエンスを前にして、何百万人もの人々に向け、世界で最も有名な人物の1人の番組で演奏するってこと。あの番組に参加できたなんて、自分でも信じられなかったよ。僕らはまるで小さな子供みたいに、スタジオ中を走り回ったり、彼(レターマン)の椅子に座ったりしてたんだ。多分僕らにとって、これまでで"最大の成功を収めた瞬間"だったんじゃないかな」。

ベース担当のチャールズ・ケイヴ(Charles Cave)は、ポーランドの高速道路の路肩で、スリリングな瞬間を体験した。「ポーランドでライヴをやったのは、あれが初めてだったんだ。で、フェスの出演時間まであと4時間に迫っていた時に、乗っていたツアー・バスが故障してしまってね。僕らはその場に10時間も足留めを喰らってしまったんだ。主催者が迎えの車を寄越してくれたんだけど、その時は『僕らの出演時間は夜9時。会場は今まで行ったこともない土地の郊外にあるテント。これほどの目に遭う甲斐はあるんだろうか? 僕らは何のために、こんなストレスに苦しんでんだろう?』って考えてた。だけど現地に着いて、着替えて、ステージに出て行ったら、それまで僕らが経験した中で、恐らくどこよりも一番熱狂的な観客が迎えてくれたんだ。そのテントには、多分2万人くらいの人達がひしめいてたはずだよ。そして1曲目が始まった途端、そこにいた全員が、歌詞の一字一句まで知っててくれてると分かったんだ」。

「正直、ちょっと吐きそうになったほどだったよ」とチャールズ。多弁で思慮深い彼は、このバンドで作詞も手掛けている。「ギグであそこまで精神的に疲れ切ってしまったことは、それまで一度もなかったんだ。今じゃポーランドは、行くのが一番楽しみな土地の一つになった。あの時のライヴは、僕らが海外でどれだけ一所懸命頑張ってきたかを象徴しているね。僕らのライバル的な存在のバンドだとか、同世代のバンド達は、英国内では数字的には僕らよりも成功を収めてる。でも僕らは、世界中にファンベースがあるんだ。例えばポーランドや、ロシア、日本、メキシコ……そういった場所にね」。

「ブリクストン・アカデミーでやった、2夜のライヴもすごく特別だったな」と語るのは、2006年に西ロンドンで結成したこの3人組でヴォーカルを担当するハリー・マックヴェイ(Harry McVeigh)だ。「凱旋ライヴみたいなものだったね。けど、3人で子供の時からずっと通っていた会場のステージに立つのは、とにかく最高の気分だった。そして大掛かりなステージ・セットや機材を持ち込んで ー 僕らはプロのバンドになったんだな、と実感したよ」とハリー。「突然、何かこう規模が巨大になったんだ」。

確かに規模は巨大だ。2009年1月にリリースした『トゥ・ルーズ・マイ・ライフ』は、全英チャート1位に輝き、世界中で75万枚以上の売上げを記録。また『Q』誌や『MOJO』誌では最優秀新人賞を獲得し、『NME』誌では表紙を飾ると共に、読者投票による年間ベスト・アルバムで2位に。2009年はホワイト・ライズにとって実に素晴らしい1年であった。

そこから2010年後半へ。 新たな自信に支えられ、再充電を果たし、意欲漲るホワイト・ライズの3人は、世界を旅する中で経験してきたことのひとつひとつを消化して、それを新作へと変換。パワーに満ち溢れた、強靭なテク・ロックのセカンド・アルバム『リチュアル』が完成した。

3人の自信と、熱い意気込み、そして野心を見せつけているのが、古典的な構成の憂いを帯びたエレクトロニカ、「Peace And Quiet」だ。これはジャックの一番のお気に入り曲である。「これは僕にとって、すごく重要な曲なんだ。スタジオで一番最後に出来上がったのがこれだったから、色々なことが詰めの段階にあって、それが曲にも影響を与えてる。でも僕にとっては、この曲が今回のアルバムのハイライトなんだ。この曲のレコーディングは、他とは違った感じに思えたんだよ。より自由で、かなりリラックスしてる。冒頭と締めにはエレクトロニック・ドラムが使われているのに、この上なくオーガニックな感触があるんだ」。

そして彼らが今回、『トゥ・ルーズ・マイ・ライフ』を手掛けたマックス・ディンゲル(Max Dingel)と平行して、新たにプロデューサーとして起用したのはアラン・モウルダーだ。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインからゼム・クルックド・ヴァルチャーズに至るまで、数々の名作を手掛けてきた伝説的なこのプロデューサーは、北西ロンドンにある自らのスタジオ『Assault And Battery』で、バンドのアイディアを形にするのを手助けしてくれた。「アランこそ、僕らが必要としていた人物だったんだ」とチャールズ。「彼は僕らよりずっと年上で、博識で、技術的な天才だ。間違いなく彼のおかげで、僕らがやりたいと思っていたのに、どうすればそこに辿り着けるのか分からずにいた、あらゆることが実現できたんだ」。

『リチュアル』の土台となったのは、こういった様々な要素だ。本作のための曲作りはわずか5週間で終わり、その後、6週間をかけてレコーディング。"新たな方向性"だの、"ヒット確実なシングル曲"だのを探し求めて、ダラダラと時間を費やすことも、ぶらぶら過ごすことも、また躍起になることもなかった。10代の頃からの友達同士から成るバンドが、タイトで、焦点の定まった、想像力に富み、お互いを支え合っている、そんな三方向性ユニットへと進化したというだけのことである。

「当初は確かに大掛かりな計画があったよ。すごく素敵なパリのスタジオを訪れてみたりしたしね」と、チャールズが振り返る。「でもその時、曲作りのプロセスが3週間目に入っていて、すごく良い状況で進んでいたんだ。2週間後には、曲が全部書き上がった。今回の曲作りに関して前回と大きく異なっていたのは、ハリーと僕が、家にある彼のコンピュータで曲を書いていたってことなんだ。前作の時は、まずキーボードで曲を書いてから、それをすぐに3人編成用の曲に書き換えて、それをレコーディングしてた。その後で、ちょっと色々と付け加えてたんだ」。

だが、それほど大幅な手が加えられたわけではない。『リチュアル』のデモに入っていた要素の殆どが、最終的な完成作にも生き残っているのだ。それほどの大胆さがホワイト・ライズにはあった。このような"進歩"を果たした理由の一つとして、彼らのレコード・コレクションが、ファースト・アルバムを作った時と比べ「20倍」に増えたという事実があることを、彼らは認めている。

「ツアー中、僕らに影響を与えてくれる音楽、好きな曲やアーティストが、山のように増えていったんだ」とハリー。「人生で初めて、僕らはある程度まとまったお金を手に入れた。そしてまず最初にやったことが、その大半を音楽に注ぎ込むことだったんだ。大きな衝撃を受けたよ ー 新しく出会った音楽に、僕らはどっぷり浸かっていったんだ」。

彼らが新たに聴くようになったのは、例えばまずリッチー・ホゥティン(Richie Hawtin)。Plastikman名義の作品を始めとする、彼の様々な名義でのミニマル・テクノ作品だ。それからスウェーデンのメタル・パンド、オーペス(Opeth)。そしてデンマークのプロデューサー、トレントモラー(Trentem?ller)。「The Power & The Glory」に特徴的な、テクノ調の鼓動に直接影響を与えたのは、こういった人々だ。「誤作動みたいに聞こえる、この曲のエレクトロニック・パーカッションは、そういった音楽への直接的なオマージュなんだ」とチャールズは語る。

ニュー・アルバムからの第一弾シングルとなるのは、遠大かつ翳りを帯びた、途方もない「Bigger Than Us」だ。

「この曲には壮大なコーラスがあるんだ」と言って、ニコッと笑うハリー。「ラジオ向きの良い曲だね。こういう言い方をすると、『どの曲が受けがいいか』ってことを僕らが考えてるみたいに聞こえるよね。それは自分でも分かってる。でも、それがいけないことだとは思ってないんだ。僕らはすごく野心的なバンドだ。自分達のアルバムのために、出来る限りのことをしたいと思っているんだよ」。

アルバムを締めくくる「Come Down」もまた、極めて重要な曲だ。深く朗々としたなハリーの声が、氷のように冷ややかであると同時に温かみのあるミニマルなエレクトロニック・ビートに乗って漂い、やがて全く別の場所へと向かって行く。

「この曲は当初、装飾を削ぎ落としたティアーズ・フォー・フィアーズみたいな感じで始まったんだ」と、チャールズが微笑む。「それから10分以内に、そのアイディアは消えて無くなった。中盤は情熱的なゴスペルになっていて、すごくR&B。- それでね、僕らは皆で腰を下ろして、これを聴き、お互い微笑み合いながら、でもこんな風に言っていたんだ。『どうなんだろ。これってイケてるかな?これ、使えるかな?』ってね。だけどあの瞬間のことを、僕らはとても誇りに思ってるよ。『一体全体これは何なんだ?』って反応をする人がいるっていう事実が気に入ってるんだ」。

アルバムのタイトルは次のような事実に由来していると、作詞を手掛けるチャールズが言い添える。「曲の多くは、様々な"儀式"(=ritual)が題材になっているんだ。つまり、毎日それをやらずにはいられない日々の習慣というか、必ずしも自分のためになるわけじゃないんだけど、人間なら誰しもがやっていることだね。例えば「Holy Ghost」みたいな曲では、かなり文字通りの意味での"儀式"として、原理的な宗教の例を取り上げている。すごく極端な例だね。一方「Strangers」では、感情の全く伴わない、肉体だけの関係を誰かと持つという、"儀式的な習慣的行動"について考察しているんだ」。

「そしてある意味、このアルバムでは、そういった様々な別々の事柄を結びつけ合い、それら全てから一つの結論を導き出していると言える。『この行動は、単なる暇つぶしなのか? それとも人生における何らかの意味を見出そうとしているのか? そして毎朝起床後、3時間の祈りを捧げている人の人生観は、毎晩違った相手と寝たり、毎晩飲んだくれたりしているような人と比べ、異なっているのだろうか?』ってね」。

更にこう付け加えるのはハリーだ。「僕がこのタイトル(『Ritual』)を気に入ってるのは、この単語にはあらゆる意味が含まれていると同時に、全く何の意味も持っていないとも言えるからさ。人生における最も重要なものとして、宗教や愛を引き合いに出すこともできる。あるいは毎晩仕事から帰ってきたらTVを観る、って行為を指すこともできる。それがその人にとっての"儀式"なんだ」。

そして彼らにとって次なるハイライトは……ライヴだ。前作の時は、4人編成でライヴを行っていたホワイト・ライズ。今回は5人編成となる予定だ。「前よりもっと余裕ができて、より力強くなり、より多くの援護が期待できるね」と、ジャック・ブラウンが頷く。

「僕らの目指す所が変わったんだと思う。ファースト・アルバムの時は、当時の僕らは否定してたかもしれないけど、とにかくすごく仰々しくしようとしてたんだよね」と語るのはチャールズ・ケイヴだ。彼は凄まじいほど正直に、ホワイト・ライズのやることなすこと全てについて、包み隠さず語ってくれる。「過剰なくらいドラマティックだった。僕らはフル・ストリング・セクションを使いたくて仕方なかったんだ! とにかく出来る限り壮大なサウンドにしたかった。バンドがそういう単語を口にするのは、軽卒で危険だってことは分かってる。だけど僕らは心からそれを望んでたんだよ ー そしてもしかしたら、ちょっとやり過ぎたのかもしれないな」。

「僕らには少し独創性が足りないとか、本心を表現しているように聞こえないとか、そんな風に批判された時期もあった。だけど今回はその点を修正したよ - 例えば、ファースト・アルバムの歌詞で描いていたのは、フィクションの物語だった。実在の人々や実際に起きた出来事から着想を得たものではあったけどね。そういう場合はいつも、感情を込めるのがかなり難しいんだ。でも今回のアルバムは、前作と比べると遥かに野心的だよ。とはいえ、あまり一般的とは言えない意味で、だけどね。最終的な完成作の中に、どれだけの"綻び"を残しておけるか、試したかったんだ。今度のアルバムに収められているパフォーマンスには、決して完璧とは言えないものもある。ハリーの声は、この2年間、まるで馬車馬のように酷使されてきた。1年半にわたるツアーとタバコと酒のせいで、もう以前のように、若々しい天使のような澄んだ声じゃない。僕的にはそれが最高に理想的なんだよね」。

力、栄光、平和、静寂、セックス、宗教、過ち、情熱、綻び、心、魂 『リチュアル』は、その全てを提示してくれる。そして時には、それ以上のものを。また時には、決してそうとは言えないものを。