BIOGRAPHY

SHANIA TWAIN


SHANIA TWAIN

人は過去を慈しみ、未来に想いを馳せながら、しかし「今」を生きていく…

 

「史上最高に売れている女性カントリーアーティスト」として名高いキャリアも30年を超えたシャナイア・トゥエイン。5作目にして2002年以来初となる意気揚々としたアルバムの完成を、彼女は自信と共に噛み締めている。その名も『ナウ』(NOW)。曲作りの役責を初めて単身で負い、共同プロデューサーとして制作過程を見守ったのが、大いなる聡明さ度胸と優秀さで世界に知られ、愛されているこの女性であり、カナダのオンタリオ州で味わった貧困から身を起してグラミー賞を複数獲得し、世界で9,000万枚のアルバムを売り上げ、「カントリー・ポップの女王」という称号を得て、ベストセラーになった「フロム・ディス・モーメント・オン」を書き、前人未到のダイヤモンド認定アルバムを3作(1995年の 『ウーマン・イン・ミー』がプラチナムx12、1997年の『カム・オン・オーヴァー』がプラチナムx20…これはサウンドスキャン史上、全ジャンルを通じて最も売れている女性アーティストのスタジオ・アルバム、そして2002年の『アップ』がプラチナムx11)達成したシンガーであり、「スティル・ザ・ワン」、「フロム・ディス・モーメント・オン」、「ドント・インプレス・ミー」「ハニー、アイム・ホーム」「フィール・ライク・ア・ウーマン」、「カム・オン・オーヴァー」他、数知れぬ名曲の声にして、秘かに進行するライム病との8年に渡る闘いから復帰して2012年からラスベガスで好評を博した2年間の長期公演でヘッドライナーを務め、2015年には復活ツアー「Rock This Country」に乗り出して2016年のビルボード・ウーマン・イン・ミュージック・アワードで「アイコン賞」を授賞した勇者でもある。

これがシャナイアのアルバム『ナウ』だ。

“ここに至るまでには私の人生、色々あったわ。今は帰って来た、と心から言える。楽観的な気持ちが聞こえてくるでしょう”
その姿勢が音楽を牽引している。2015年から2016年にかけてシャナイアは、後にこの16曲になる素材を集めた。スイス、アメリカ、イングランド、バハマとセッションを分けて行い、エグゼクティブ・プロデューサーの役割を果たしつつ、ひとつひとつの曲を自ら厳選した ロン・アニエロ、マシュー・コーマ、ジャクワイア・キング、ジェイク・ゴスリングからなるドリームチームと共にプロデュース。マンドリン、バンジョー、ギターなどアコースティックな楽器を多用することで、音色のパレットは彼女が言うところの<有機的な連なり>と<レトロな響きを少々>湛え、ルーツっぽさから溢れるソウル感まで変幻自在に描き出す。

華やかな楽器の編成にも勝る主役は彼女が書いた楽曲だ。
“曲があってこそだもの! 間違いなくそれがすべての原動力。独立への大きな一歩だった。自分をけしかけてみたの。怖い思いをするのは承知の上だったし、どんな結果が出ても責任はすべて私にあるってわかっていたわ。コラボレーションは好きだけど、感情や、心理的・音楽的な影響は一切絡んでほしくなかったの。同じ空間に誰か招き入れたら、途端に影響を受けてしまう。そうしたらもう私ではなくなる。純粋ではなくなる。これは私の一番ピュアな作品かもしれないわ”

結果、シャナイアは一切の遠慮をしなかった。ファースト・シングル「ライフス・アバウト・トゥ・ゲット・グッド」では、明るいカントリー風味のギターとゴスペル調のハーモニーに乗せて2008年 の離婚について 目配せしながら率直に語り、堂々とこう言っている。“心が折れたどころか、粉々になったわ / 愛される準備はできているし、ちゃんと愛したから、そろそろ人生は良い方に変わるはず”
“あの曲は最初、諦めと失望の歌だった。でも、書きながら家で海を眺めていて思ったの、‘私はここでネガティヴな過去にこだわっているけれど、外はあんなに美しい。可哀想な私、っていう歌を書く気分じゃなくなったわ’って。嫌なことがあれば素敵なこともたくさんある。そういう曲に仕上がった。悪いことがなければ良いこともない、という”

その認識が収録の全曲を貫いている。幕開けの「スウィンギング・ウィズ・マイ・アイズ・クローズド」では、手拍子と泣きのギターが醸し出す夏の牧歌的な雰囲気に、彼女からごく自然と伝わってくる闘志が寄り添う――“自分の気持ちを恐れずに、季節のように私はついて行く”

“喜びでも痛みでも、何らかの感覚を覚えて最初にするのは目を閉じること。生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ開いていない目の前で拳を振っていたりする。目を閉じたままスウィングしてるのよ。それが人間の本質。私も握りしめた両手を突き出しながら色んなことを切り抜けてきたわ。‘これから起きるのが良いことか悪いことか私にはわからないけど、でもいいわ、覚悟はできてるから’って”

「ライト・オブ・マイ・ライフ」の軽快なアコースティックギターやドブロは、60年代終盤から70年代初めのローレルキャニオンを思わせる煙たさと暑苦しさがいい。そこでたゆたうように彼女が歌う。“明日もあなたは手の届かないところにいるでしょう。いつの日かあなたと私は可能になる。ふたりきり、砂浜で愛を交わせるように”。 かと思えば、「フーズ・ゴナ・ビー・ユア・ガール」では、自分が誰かの人生の優先事項ではないこと気づいて嘆いている。

全ては壮大なフィナーレの「オール・イン・オール」で大団円を迎え、彼女は“私は私のまま、だけど変わったわ。ずっと不思議に思っていたことが、今は少しも不思議じゃない”と最後に言い残して去って行く。

どれだけ変化があろうとも、このアルバム『ナウ』は彼女自身に他ならない…

彼女は笑顔だ。“私は音楽を通じて人々と共感する能力に恵まれた。そこは私が安心していられる場所。職場や、あるいはバーでしか心を許せないという人もいるけど、音楽で繋がれるって本当に素敵な経験よ。このアルバムに心を動かされてほしい。要はこれもひとつの感情のやり取り。聴いてくれた人をそんな気持ちにさせることができたら、と思うわ”

– Rick Florino, June 2017