12TH JAN 2011 最新デジタルリマスターRELEASE

 

クイーン・サウンドに詳しい3人が斬る!

六角堂 石角隆行

名匠ボブ・ラドウィックが『オペラ座の夜~30周年アニヴァーサリー・エディション』(2005年)、『アブソ リュート・グレイテスト』(2009年)に続いてマスタリングを手がけた『グレイテスト・ヒッツ』の1と2を、過去の2作と聴き比べてみた。正直、あまり 変化に期待はしてなかったのだが、いい意味で裏切られた。サウンドの3D化と言うべきか、音のひとつひとつに奥行きや広がりがあり、浮き上がって聴こえて くるのだ。ブライアン・メイの奏でるギター・オーケストレーションや数百回重ねて録音された分厚いコーラス、それら全てのトラックを丁寧に引き出してブ ラッシュ・アップしたかのようにクリアーな音に甦った。

特にアコースティック系の処理が素晴らしい。フレディの弾くベヒシュタインの指遣いや、息吹すらもリアルに伝わってくる。

ここにあるのは紛れもない2011年型のクイーン・サウンドだ。春以降にはオリジナル・アルバムも遂次リリースされるそう。このリマスタリングで聴けるのが今から楽しみだ。


BARKS編集長 烏丸哲也

QUEENの音源がEMIからユニバーサルに移籍するということ自体、洋楽ファンにとっては一大事件。常識と思っ ていた事実が覆されるわけで、いきなり「明日からは右側通行でお願いね」と言われるような衝撃でもある。しかも、40周年記念最新リマスターが施され SHM-CDで全作が再発されるというのは、右側通行のみならず60Km/hだった法定速度がさらっと80km/hに変更されるようなインパクトだ。まだ いい音に変貌する余地が残っていたのか!という喜びと、ならば早く聴かせてくれという浮き足立った思いに、冷静さを欠く始末。

マスターテープ許容量いっぱいにまで押し込まれた、ロイ・トーマス・ベイカーが組み上げた生音天然リミッターばっ きばきのQUEENサウンドこそ、リマスター処置が活きる文化財産。パタパタしたロジャーのドラム、意外にざらついたトレブル・ブースターで悲鳴を上げて いるAC-30の箱鳴り、フレディの生々しいピアノのダイナミクス…、リマスターによって初めて気付かされる音の表情は、作品に捧げるオーディエンスの思 いをさらに深めてくれる魅惑のスパイスだ。

そんな妄想に武者震いしながら、レーベルから届いた最新リマスター音を耳にした。正直ちょっとだけ動揺した。自分 の知っているQUEENをさらに上回るQUEENが存在していることを、容赦なく突き付けられてしまったからだ。数十年間聞き続けてきた僕のQUEEN は、不完全なものだったのか?  マジか…。十分に知っていたつもりのQUEENの、知らない音を新たに体験できる思わぬサプライズに狂喜しながら、あまりの興奮と混乱にちょっとだけ涙が 滲んだ。押しの強さ、重さ、太さ…40thリマスター効果は、QUEENサウンドを一回りダイナミックに仕立て上げてくれている。それだけのことだが、こ れはエポックなことだ。

ビビッドなサウンドが身体の細胞ひとつひとつに染み渡るような感覚に陥って、聴き馴染んでいるはずの曲のテンポが いつもよりずっと遅く聴こえていた。隠されたQUEENの秘密がリアルタイムにはがされているような興奮が、時間の感覚を麻痺させたのかもしれない。新調 されたQUEENのサウンドは、ゆっくりゆっくりと僕の身体にまとわり付き、至極の時が流れた。

「We Will Rock You」のド頭一発目後に聞こえるナゾの「あ~」という声も、よりはっきりと聞こえるのがリマスターのクリアさだ。「Another One Bites The Dust」の劇的なローの出方も特筆。ジョン・ディーコンのフィンガー・ピッキングの指使いが見えるようだし、フレディが1m先にいるような臨場感は、 ボーカルに掛けられたルーム・リバーブがクリアに届いている証だ。

やはり絶大だった40thリマスター。「そう、この音だよ」と、フレディも喜んでいることだろう。これまでのQUEENを一度リセットして、最良のSHM-CDサウンドで1から聞き始めよう。2011年は忘れられないQUEEN元年になりそうだから。


リマスター大王 佐藤良平

以下は一つ古いヴァージョンである2001年に出た日本向けリマスターCD(アビイ・ロード・スタジオがマスタリ ングを担当)と比較した結果だ。聴いてすぐに判るのは全体的に音量が上がったことで、曲によっては聴感で3~4dBの差があり、かなり迫力が増して聞こえ る。にもかかわらず音を過度に潰して音圧を稼いだ感触は至極少なく、音源を尊重した跡が読み取れる。2001年盤は音量が曲ごとに異なっていたのに対して 2011年盤ではレヴェルの統一が図られ、通して聴いた時の流れがよりスムーズになった。

前回のリマスターから10年という短くない時間が経ったのでマスターテープの経年変化が心配されたが、目立った劣 化は殆ど感じなかった。今回聴いた2枚はベスト盤だから音色を派手めに仕上げてあるはずで、個々のアルバムはもう少し落ち着いた音になると思われるが、マ スタリングの基本的な方針は変るまい。どこまでパフォーマンスが向上するか興味は尽きない。

 

クイーン・カタログ伝説!

全英アルバム・チャートイン記録No.1

クイーンのアルバムは、累計で<全英アルバム・チャート合計1,422週、つまり27年間チャートイン>を果たしたギネス記録を保持。これはビートルズ、エルヴィス・プレスリーといったアーティストを上回って第1位。

全英アルバム最多売上記録

『グレイテスト・ヒッツ』
前期のベストアルバムである『グレイテスト・ヒッツ』は、2006年11月までに英国内だけで約540万枚を記録。『グレイテスト・ヒッツ』の英国での売 り上げはビートルズやローリング・ストーンズ、エルトン・ジョンなどの英国を代表するアーティストを抑えて第1位である。 (一方後期のベストアルバムである『グレイテスト・ヒッツII』も英国のみだけで360万枚を売り上げている)

全英シングル最多売上記録

「ボヘミアン・ラプソディ」
クイーンを代表する楽曲「ボヘミアン・ラプソディ」は英国では9週連続1位となり英国で最も売れた曲。
世界中の国々でも1位を連発し、フレディの死後には英国史上初の同曲2度目の1位を獲得した。「英国史上最高のシングルは?」というアンケートでは「イマ ジン」(ジョン・レノン)、「ヘイ・ジュード」(ビートルズ)を抑えてクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」が第1位となった(2002年ギネス・ワール ド・レコーズ調査)。

全世界販売枚数 4億5千万枚

クイーンは全世界の異なる国で、ナンバーワンのアルバムとナンバーワンのシングルをそれぞれ18枚、またトップテ ンのアルバムを26枚、トップテンのシングルを36枚保持している。そして2004年時点で、アメリカでのクイーンのアルバムの総売上枚数は3,550万 枚、全世界のアルバムの総売上は3億枚に達している。シングルも合わせると4億5千万枚を超え、世界中のアーティストの中ではビートルズ、エルヴィス・プ レスリー、マイケル・ジャクソン、ABBAに次いで第5位である