渡辺 香津美
KAZUMI WATANABE

2001/11/21発売
『BEYOND THE INFINITE』
『ビヨンド・ザ・インフィニット』
UCCJ-2014/3,000(tax in) /dozo


●デビュー30周年を越えた渡辺香津美が21世紀に贈るエスノ・プログレ・ギター組曲!
●月、火星、水星、木星、金星、土星、太陽の7つのパートからなる組曲をフィーチャーした大作。
●12月8,9日有楽町マリオン朝日ホールにてCD発売記念コンサート決定。


<曲目>
ギター組曲≪BEYOND THE INFINITE≫(作編曲:渡辺香津美、谷川公子)
 1. MOON ≪月≫  
 2. MARS ≪火星≫  
 3. MERCURY ≪水星≫  
 4. JUPITER ≪木星≫ ♪Real Audio
 5. VENUS ≪金星≫ (作詞:NORA) ♪Real Audio
 6. SATURN ≪土星≫ ♪Real Audio
 7. SUN ≪太陽≫(作詞:NORA)
 8. ネコビタンX・赤玉
 9. ネコビタンX・青玉


<パーソネル>
渡辺香津美(g)、NORA(vo)、本多俊之(sax)、中川昌三(fl)、吉野弘志(b)、
ヤヒロトモヒロ(per)、山木秀夫(ds)、
松原勝也、鈴木理恵子(vn)、柳瀬省太(va)、菊地知也(vc)
2001年4月東京にて録音


>> 渡辺香津美 Biography <<



「天才ジャズ・ギタリスト出現!」と言われた驚異のデビューから着実に成長を続けてきた渡辺香津美は、いまや世界のトップ・ギタリストの一人として、その名をジャズの歴史に残すほどの円熟した活動を展開している。

その渡辺香津美がギター生活30周年にあたって取り組んだ書き下ろしの意欲的なギター組曲「BEYOND THE INFINIT」は、21世紀の幕を開けるにふさわしい壮大な構図を持った大作だ。世界初演は、彼が強く影響を受けた作曲家、故・武満徹ゆかりのコンサート・ホール「東京オペラシティ」で2001年の1月初頭に行われた。リズム・セクションとサックス、フルート、ヴォーカル、さらにストリング・カルテットが加わる大編成のステージだが、ホールの美しい響きを計算した準アコースティックなサウンドで濃密なコミュニケーションが進行する素晴らしい演奏であった。


 香津美自身の語るところによると、「企画が決まって、音楽のアイデアが湧いてきた頃には一緒に演奏する人のイメージができあがってましたね。ぼくは曲によって演奏者を選ぶといより、頭に一緒にやる人があって、曲をまとめていくほうなんです」ということだが、その作曲法はジャズという音楽に育てられた彼ならではの財産と言うことができるだろう。このギター組曲は、音楽のアイデアがきちんと譜面にまとめられてはいるものの、ジャズという音楽の核を成す「インプロビゼーション」と「インタープレイ」がコミュニケーション軸となっているのだ。したがって、客席の聴衆は厳密さと曖昧さ、クールとホット、冷静と激情というような相反する音楽要素の間で、思いがけない複雑な音楽空間に運ばれてしまうことになる。 それはジャズ、ロック、ラテン、クラシックという音楽のジャンルを超えたクリエイティブな"マジカル・ミュージカル・モーメント"そのものとも言えるだろう。

 渡辺香津美がベンチャーズなどのポップスに触発されてギターを手にしたことは多くのファンの知るところだが、この天才がジャズを経由して何処に行こうとしているのかは、オペラシティのステージをスタジオで厳密にまとめ直したこのCDを聴くしかあるまい。ライブのステージを言葉による表出とするならば、スタジオ・レコーディングは推敲を重ねた文章による表出のようなものだと言われることが多い。だがここには、譜面に描かれたイメージの原型、音楽家たちの人間的なコミュニケーション、即興、時間の流れに沿った原型の進化といった、音楽に関わるあらゆる要素が豊かに息づき輝いている。

 渡辺香津美は一点に立ち止まることなく、ぼくらを予想もできない場所に運び続けてくれる。ぼくらはそのギフトに対し、どんなお礼をしたらよいのだだろうか。

 ギター組曲「BEYOND THE INFINIT」は全体で9つのチャプターから成り立っている。

各曲が独立して存在する通常のアルバムと違ってイメージの連続性を持っているので、曲いうよりはチャプター(章)というほうがふさわしいのではなかろうか。「ギターに関するすべての音がステージ上ではじけるようにしたい」という香津美自身の考えによって、曲の展開に応じて様々なギターが使用されているのも、ギター・ファンにとっては嬉しいことである。

「先にタイトルがあったわけじゃなくて、アイデアを具体的な音にしていく過程でムーンからサンまでという考えが生まれ、それが全体の流れを自然に作っていったんです」という渡辺香津美のコンポジションは、パートナーである谷川公子との共同作業で進められた。したがって、曲の解説は作・編曲のチームを組んでいる2人にお願いすることにしよう。



1.Moon(月)
渡辺 「この曲は自分の中にあるギターという楽器のプリミティブな響きを表現したかったんです。夢の中で聴こえてくるようなギターの音があって、その音に乗ってみんなでどこかに行こうという"船出"のイメージですね」

2.Mars(火星)
渡辺 「月が安堵感のある曲とするならば、このMarsは未知の感覚と響きをを持った音楽を演奏しようと思ったんです。エアーズロックというスチール弦のフォーク・ギターで、後半はコンバットというソリッド・ギターを使ってます」

3.Mercury(水星)
谷川 「これは共作なんです。流れる水みたいに変貌するような音楽にしたいって私がコンセプトを出したら、香津美さんがかつて現代音楽にインスパイアーされて書いたって曲をさがして来たんです。それを手直しして、限りなく掴み所のない美しさを表現できる曲にしました。これは完全同時録音のスポンテイニアスな演奏です」

4.Jupiter(木星)
渡辺 「ひとつの音形が互いにずれながら重なっていく曲ですね。主なるものが分からないうちに自然にまとまるといったニュアンスですかね。ベースの吉野いわく"破れキリシタンっていうイメージの曲だなあ"」

5.Venus(金星)
谷川 「これは私が書きました。いろんな男の仕業に対するヴィーナスなんです。リアルで美しくて、怖いくらいにスペースのあるものっていうのをイメージしてますね。ノラさんの姿がヴィーナスをイメージさせる具体的な曲です」
渡辺 「このCDのなかで、唯一の名曲(笑)」

6.Saturn(土星)
渡辺 「ここではギターの持っているデモーニッシュさっていうか、凶暴さを表現したかったんです。(谷川「ギタリストの本能として歪ませたかったのよね(笑)」)音楽がパルスとして押し寄せてくるでしょ」

7.Sun(太陽)
谷川 「総合調和に導かれるという強いテーマのもとに合作しました。吸引力のあるメロディが最後にまとまっていくための、壮大なオーケストレーションなんです」
渡辺 「ノアの箱舟みたいな曲想ですね。さらなる船出かな」

8.NekovitanX−Red Pill(ネコビタンX・赤玉)
9.NekovitanX−Blue Pill(ネコビタンX・青玉)
渡辺 「これは弦カルの形として斎藤ネコカルテットに書いたことがあるんですが、新しくアレンジしました。青球は弦楽四重奏だけの演奏。赤球ではアコースティック・ギターによるインプロビゼーションをお聴かせしてます」
谷川 「最後の曲ってなってるけど、これは最初に聴いていただいてもいいんです。赤球、青球どちらかの錠剤を飲んで、このギター組曲を聴いていただくとおもしろいですよ」
渡辺     「あ、それはいいアイデアだね」

  text by 池上比沙之




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