今まで多くの人がそうしたように、私も貴方の歌に素手でさわってみました。一見元気で熱そうな「氷の世界」でしたが、さわった時は無温でした。しかし何度もさわっているとその鮮やかさ、無機質さが後でぞっとするほどの寒さだと気づきました。毎日吹雪吹雪氷の世界ですもの。
そういうわけで、実際氷の中にも入ってみました。マイナス五℃の氷の世界。最初は全然平気でしたが段々芯から冷えてきて、外に出るたび「世界はなんて暖かいんだ」と感じましたが、出たり入ったりするうちに氷の中にいることの方が自分の日常の様に思えてきて「ただいま」の気持ちで氷の中に入っている自分がいました。体は寒さでこわばっていますのにね。貴方の歌の魔力のようです。
寒さの中では余計なものがいらなくなって、美しいものはより美しく見える。冬の夜、空が寒さにその黒さをどこまでも深くたたえて月はより白く光り輝く。丁度今夜の空のようです。
敬具
矢野絢子
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