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写真左から・・・
マイク・マクレディ/Mike McCready (guitar)
マット・キャメロン/Matt Cameron (drums)
エディ・ヴェダー/Eddie Vedder (lead vocals, guitar)
ジェフ・アメン/Jeff Ament (bass)
ストーン・ゴッサード/ Stone Gossard (guitar)
「いいアルバムを作ることはそんなに難しくない」笑いながら話すのはエディ・ヴェダーだ。「最高のバンドと辞書さえ用意すれば、後は問題なく進むはずなんだ」
ヴェダーの恵まれた経験から語られる話だ。彼の話に出てくるその資質を活用して、結局のところパール・ジャムは既に8枚の素晴らしいスタジオ・アルバムを生み出している。
今年の初め、パール・ジャムは自分たちの最初のフルアルバムとなった1991年の「Ten」をリイシュー・プロジェクト用に見直している。この作業により、コラボレーターとしてはレギュラーメンバーになったブレンダン・オブライエンがオリジナル・トラックを徹底的にリミックスし、アルバムはバンドの思い出や歴史的背景をデラックス・エディションとして再現されている。ヴェダーが新しいバンドメンバーに送ったデモ・テープから始まる内容はパール・ジャムの献身的なファンなら間違いなく望むものだ。しかしこのグループにノスタルジアは無縁なことである。過去を懐かしく振り返っているように見えた間も、パール・ジャムは9枚目となる「Backspacer」に取り掛かっていたのだ。もしかしたら今まででもっとも集中し、エネルギーにあふれた作品かもしれない。
「俺たちはスタジオでの作業のかわりに曲から始めたんだ」最新作の原点についてヴェダーは語る。「Backspacer」は爆発的な勢いとレーザー光線のようなピンポイントさのある36分間の活発でしゃれた12曲である。「俺たちには勢いがあり、曲は簡単に書き上げることができた。すごく刺激的なアルバムでとても固いんだ。ゆるいところはなく、慎重に仕組まれている」
「直感で最高のアルバムを作ろうと決めた」ギターのストーン・ゴッサードが加える。「最高のアルバムに不必要なものはすべて排除しようとしたんだ」
「しっかりしていて簡潔」マイク・マクレディは同意する。「素晴らしく美しいバイオリンやフレンチホルンも入っている。俺たちには新境地だ。聞いてくれた人たちも驚くし、興奮すると思うな」
曲のアイデアには個別に取り掛かったそうだが、メンバーは昨年の12月、モンタナにあるベースのジェフ・アメンの家に集まり、ソング・ライティングとリハーサルのセッションを設けたそうだ。そして2月に予定したロスでの2週間に渡るレコーディングの前にとびきりの形にしようと全力を尽くそうとしたのだ。1993年の「Vs.」で初めて彼らと仕事をし、その後もブルース・スプリングスティーンやAC/DCやマストドンなどと関わったブレンダン・オブライエンが1988年の「Yield」以来のプロデューサーとなり、グループが大切にしたクリエイティブな関係を再び始めたのである。
「俺たちにとって彼以上のプロデューサーは存在しない」ゴッサードは話す。「俺たちには自分たちが作ったものがある。それは生で、未完成であり、個性がくっついただけのものなんだ。ブレンダンは俺たちの未完成な部分やただのかたまりでしかないものや、俺たちの人間性をプロの技と完璧に合わせることができるんだ」
「俺たちが作曲をしているときからメンバーの一員だ」ドラムスのマット・キャメロンは言う。「彼はギターを持ち、自ら加わってくる。俺たちと一緒に音楽を作っていくんだ。デジタル技術にたける人間もいる。もちろんブライアンも扱えるが、彼はテープもカットできるし、メロトロンやクラビネットから最高の音を生み出すことも知っている。彼は俺たちと同じアナログな人間なんだ。そして俺たちのようなアナログ系のバンドとの接し方を心得ている」
「それにロック・バンドのライブ・レコーディングのこともわかっている」ジェフ・アメンが続ける。「俺たち5人は一緒にスタジオに入り、曲をテープに入れていく。今ではこの方法をとるバンドはほとんどいないんだ」
「Backspacer」はグループが特に創造性に満ちていた期間に生まれた作品で、'The Fixer' や 'Johnny Guitar'などの完璧なロックを含む一方、'Just Breathe'では思慮深く、感動的な一瞬を見せ、'The End'では驚くような曲でアルバムを締めくくっている。インスピレーションはいつだって、どこにでもみつけられたようだ。ヴェダーいわく、アルバムの陽気なオープニング曲 'See My Friend'は「人が俺の上に重なり合って寝ているような小さな部屋だったから、誰も起したくなかった。小さなドラム・キットとエレクトリック・ギターがあったからiフォンサイズのFXボックスにつないだら、信じられないようなラウドなガレージ・ロックっぽいキンクスサウンドが生まれた」バンド全体による調整の後、ジェフ・アメンによると曲は「俺たちの最初のグランジ」らしい。そしてストーン・ゴッサードによるとこの曲はガレージ・ロックの脱落者マッドハニーへのトリビュートだそうだ。
'Speed Of Sound'はアルバムの中でもミッド・テンポで目立っているが、アルバム収録の最後の最後に書き上げてレコーディングした曲らしい。アトランタのSouthern Tracksでオブライエンとメンバーがミクシングで2週間過ごしているところへヴェダーが曲を持ってきたそうだ。この曲はヴェダーがハワイ島でローリングストーンズのロニー・ウッドと仕事をしていたときに夜遅くまで起きて書いたそうだ。「トム・ウェイツやキース・リチャーズ風なヴァイブのある曲を書きたかった。何て言うか、酒場に最後まで残っている客のような悲しさを出したかった。アトランタに戻ってから、1人で仕上げたんだが、ブレンダンがみんなに曲の上に演奏するよう言って、そこから作り上げた。元々はアコースティック・ギターの曲で、すごく寂し気な男が歌う曲だったのに、突然アップ・リフティングな音の背景をもつ曲に生まれ変わった」
「Backspacer」でヴェダーは自身がゴールデン・グローブ賞を受賞した「Into the Wild」のサントラで培った経験を活かすことに意欲的だった。映画に主演した女優キャサリン・キーナーと語り合った人間の精神が'Unthought Known'のリリックのインスピレーションとなったそうだ。「「Into the Wild」のアルバム制作時、スタジオにいたのは俺だけだった。グループと早く一緒にやりたくて仕方なかったよ」彼は語る。「どんなグループでいいわけじゃない。いつもの4人じゃないとダメなんだ。独立を楽しみ、すべてを自分で決められるということを味わった今、もう当分は1人で活動したくはないな。元に戻ると、いつもやっていたことがとてもエキサイティングに感じ、とにかくグループのすべてを非常にありがたく思えるようになったよ」
'Just Breathe'は映画「Into the Wild」からヴェダーがアイデアを得たものだ。そしてメンバーとオブライエンの手によってエディのシンプルなリフの上にアレンジを施していった。「「Into the Wild」からの素晴らしい続きになっている」マット・キャメロンは話す。「オーケストラと大胆なアレンジが使われているが、リスナーが共感できるほどとても奥深い。ブレンダンがストリングスとフレンチ・ホルンなどを付け加えたけれど、とても味わい深くて、全然強引じゃないんだ」
豊かなオーケストラ・サウンドと鋭敏な軽さの絶妙なバランスが「Backspacer」の穏やかな経過を特徴付けている。'Just Breathe'でジェフ・アメンはキャロル・ケイスタイルのベースラインを弾き、曲に流れるハーモニーはビーチ・ボーイズっぽさを反映している。リリック的には完全にヴェダーらしい感情と正直さと力強さが表れている。「あるとき窓をすべて開け放した部屋にテープレコーダーを持って座っていたんだ。突然ある感情が俺を包み込んだ」彼は作曲当時を思い出す。「複雑なものは一切書きたくなかった。ただ自分を包み込んだ感情を表現したかったんだ。なんていうか、人生でもっとも幸せなときを気付かずに大抵の人は過ごしてしまうだろう。みんな忙しく動き回っているしね。だからこの曲は動くことも話すことも完全にやめて、ただ息をすることなんだ」
ヴェダーにとって作詞のインスピレーションはどこにでもあるそうだ。例えば大胆な'Johnny Guitar'のリリックはシアトルの事務所のトイレでエディに起きたことが元となっている。「あそこのトイレには壁一面に古いレコードカバーが貼ってあるんだ」ヴェダーは笑う。「ちょうど立ったときの目線の位置にジョニー・ギター・ワトソンという男のジャケット・カバーが貼ってある。彼はバリー・ホワイトとバディ・ガイを足したようなミュージシャンで、彼のジャケット・カバーにはすべて興味をそそられるような女性が使われていた。俺はカバーに描かれている女の子に興味を持った少年をイメージしたのさ。何でこの女の子はジョニー・ギターなんかと一緒にいるのかと少年は不思議に思うわけだ。ジョニーには数多くの恋人がいるのに、なぜわざわざジョニーを選ぶのか?自分を好きになってくれたら、自分だけの恋人にしてあげられるのにってね」
'The Fixer'(アルバム一派手で生意気なロッカーかもしれない)に出てくるリペアマンはエディ自身かもしれないとストーンは考えている。「あの曲はなんとなくエドが俺たちをまとめようとがんばっている姿のような気がするんだ。元々マットのリフから始まった曲に俺たちが1日かけて手を加えていったんだ。結局エドがもう少し残って仕上げると言った。翌日行ってみると、エドがテープマシンを使って、完全に違う曲に編集しなおしていた。どんなことでも良くしたいと思い、うまくいっていないことにも、ちゃんとうまくいくようなきっかけを探し出そうとする人の内容で、とても前向きで、引き付けられる最高の歌詞なんだ。歌詞ができたときに、この曲には心が生まれ、すべてのことがうまく落ち着いていったんだ」
アルバムに含まれている無駄が無く、派手なもうひとつのパンク作品が'Got Some'である。コナン・オブライエンが初めて司会をした「The Tonight Show」の回でバンドはこの曲をライブでやっている。エディは話す。「この曲は単純に、気分よくなれるラウドでいい音楽を探しているなら俺たちはいくつか候補を持っていると伝えているだけだ。そしてこれがそのうちの1つ。すごくシンプルな曲のようだけど、歌詞に密かに含めているのが「Have you heard of diplomatic resolve?」などのラインだ。こういうものに俺はとても興奮するんだ。俺って興奮しやすいらしいけれどね。メンバーのみんなは本当に大胆なものを作ってくれる。そして音楽の一般的な取り組み方には満足しないんだ。それが俺の作詞にも反映してくるのさ」
「Backspacer」の曲が若干短いとしても、マイク・マクレディの激しいフレットさばきがなくなっているわけではない。グループの伝説的なファースト・シングルとなった'Alive'のような長いギター・テクニックを見せつけているわけではないが、マイクのギターは今までにないほど大胆でクリエイティブである。 'Supersonic'はマクレディのそんな技術を堪能できる。彼によるとゴッサード作のロック・ナンバーは「ちょっとラモーンズぽくて、少しレッド・ツエッペリン風。そして真ん中にブラックサバスのリフが入っている」そうだ。そして曲を逆から演奏したギターのリードを誇りに思っているらしい。'Amongst The Waves'は彼が最初に愛したブルースに再びめぐり合えた曲だと言う。ここで聞けるメロディ重視のミック・タイラー風のリックは曲のもつソウルフルな雰囲気にぴったりなのである。
「音がマイク・マクレディを通り抜けていくと、魔法が起きる」エディは話す。「彼が様々なものを支配し、集中したメロディックな曲を演奏するのを見られることはとてもエキサイティングだ」
マクレディにとって'Amongst The Waves'はアルバムにとって不可欠な曲だ。復活と再生を呼び覚ますような歌詞はアルバム全体に流れる鮮明でいきいきとしたスピリットにぴったりなのだ。「まるでサーフボードに乗っているときのようさ」彼は笑う。「波と一体になったときの感じや、イルカと遭遇したときや、波にのまれ、海の力強さを知らされたときを思い出すんだ。海の中では生まれ変わったような気持ちになり、まったく別の人生を歩んでいる気がする。1時間ほどで海から上がるが、その後過ごす1日はまったく違うものになる」
アルバムに漂う自由の雰囲気は、2004年に出したコンピレーション「Rear view mirror」を最後にEpicレコードとの関係を絶ったグループ自身の自由の反映なのかもしれない。その後の5年間で(2006年の「Pearl Jam」はJレコードから出ている)音楽業界は決定的な変化を遂げ、グループは「Backspacer」のマーケティングに対して非常にオープン・マインドなアプローチをとっている。ヨーロッパでのアルバム販売はユニバーサルにまかせ、デジタル形式での音楽配信に関して多くの新しい選択肢を採用しようとしている。
「ソニーとの長期間に渡る争いや権力闘争には、もううんざりしていた。自分たちで自由を獲得したと思っている」ジェフ・アメンは言う。「やるべきことは、ちゃんとやってきた。俺たちは自分たちの好きなように音楽を提供できる権利をきちんと得てきたんだ。今はこれまでにないほど簡単に、そして素早く音楽をみんなに提供できるようになった。技術進歩を受け入れることは素晴らしいことさ。昔からのファンが聞きたがるように、レコードはもちろんビニールにするが、それを携帯やパソコンにデジタルで取り込むことも可能だ。とてもエキサイティングな時代だよ。もう5つの巨大レコード会社の時代は終わったんだ。俺たちはそれを実感でき嬉しく思っている。
さらにグループは新作とツアーに出たくてウズウズしている。「アルバムの曲順を考えているとき…」ヴェダーは言う。「実際はセットリストのことを考えていたんだ。ツアー中は1ヶ月に3回この曲をやるのか、それとも1週間に3回やるのかとかね」
「'Supersonic'をレコーディング中のことだ」マクレディが続ける「俺はずっと、なんて楽しい曲なんだと考えていた。この曲をライブで聞いたら人々はロックするだろうなと思っていた」
「Backspacer」に続くものとして、グループには未使用のAランク曲が数多くある。そして既に次のスタジオ作業に目を向けている。しかしヴェダーは言う「レコードを仕上げたときは、ほんの少しでも休みをとるべきだよ。将来のことなど考えなくていい。今回の作品で俺たちがどこまで伸びるか誰もわからないだろう?」
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