ニューアルバムについて

2000.02.01 TOPICS

全米でプラチナム・スマッシュ・ヒットとなった『レモン・パレード』。それに続く作品を制作するにあたって、トニックのメンバー、エマーソン・ハートと ジェフ・ルッソ、ダン・ラヴェリーの3人は出きるだけシンプルなものを作ろう、と考えていた。「新しい楽曲にいろいろと手を加えたり、やり過ぎることのな いようにしようと心がけてたんだ」とエマーソンは言う。「俺達は結局シンプルでなんの飾りもないギター・バンドなんだってことに気付いたからね。そのこと に正直であるように、レコーディングを行っていったんだ。」

3年振りに発表するセカンド、『シュガー』には、驚くほどのシンプルさはない。カラフルなギター・サウンドをちりばめ、バンドの持つ感動的なメロディと彼 らのバックグラウンドである音楽を忠実に再現している。アンディ・ウォレスがミックスを担当し、トニック自身がプロデュースを務めた『シュガー』、このア ルバムでトニックは変わることのない”トニック・サウンド”を聴かせてくれる。97年に発表された『レモン・パレード』にはナンバー1ソングが2曲あっ た。「イフ・ユー・クッド・オンリー・シー」と「オープン・アップ・ユア・アイズ」である。この他にもロック・トラックでトップ10に入った「カジュア ル・アフェアー」も収録していた。ビルボード誌によると、「イフ・ユー・クッド・オンリー・シー」は97年に最もラジオでオン・エアーされた楽曲となって いる。しかし今回の作品にも素晴らしい楽曲が収録されている。そう、彼らの新たなアンセム・ソングとなるであろう「ユー・ウォンテッド・モア」(映画『ア メリカン・パイ』の主題歌でもあった)。この楽曲は既にトップ10に選ばれている。

サウンドはトニックそのものではあるが、このアルバム『シュガー』は音楽的にもっとヴァリエイションに富んでいる。「このアルバムは明らかに前作と比べる とよりエレクトリックになっているよ」とエマーソン。「このアルバムには前作に無かった解放感みたいなものがあるんだ。」トニックは、よりエネルギッシュ に、より正直に良いと思える感覚に従いながら曲作りを行っていたという。「僕らの新作に収録されている曲は全部”真実”なんだ。この真実っていうところ が、みんな気に入ってくれてるんだと思うよ。そう、聴いてくれる人の正直な心に触れる、そんな音楽なんだよ。」

エマーソン・ハートとジェフ・ルッソは1994年にトニックを結成したのだが、当初は別 のベーシストが参加していた。ダン・ラヴェリーが加入したのはファースト・アルバムを制作した後の1996年のツアーからだったのだが、トニックの持つ音 楽的なヴィジョンが明確に見えてきたのはダンが加入したときからだった。3人で手掛ける初のアルバム『シュガー』のレコーディングでは、3人の持つそれぞ れの可能性のぎりぎりまで自分達を追い込み、自分達自身、そして自分達の持つポテンシャルを最大限に引き出していき、3人のラフなアイディアに磨きをか け、ポップ・ミュージックの持つ光輝く美しさを創り出して行った。

『シュガー』でトニックは始めて自らの手でプロデュース手掛ける、という責任を負った。このプロデュースという作業は、思っていた以上に重圧がのしかかる ものであったが、それと同時に、自分達の持つ音楽性というものを完璧に自分達でコントロールできるという喜びも感じていたという。『シュガー』は3人の ミュージシャンのまさに共同作業で完成されたものである。実際、タイトル・トラックともなっている楽曲「シュガー」は彼らが初めて一緒に作り上げていった もの。ジェフとダンがアイディアを持ってきて、それを受け取ったエマーソンが彼のテイストをそのアイディアに付け足していき、歌詞をつけていく、という方 法が取られたこの楽曲は、豊かな意味深いロック・ソングとなっており、このアルバムのクリエイティヴな一面 を凝縮させたようなものに仕上がっている。「この曲は文字通り僕らの初めてのコラボレーションだった。だから僕らの新作には『シュガー』っていうタイトル をつけたんだ」とエマーソンは言う。「このタイトルはSOUTHへのお礼の意味もあるんだ。なぜって彼らはとてもサポートしてくれたからね。だからこの 『シュガー』っていうタイトルにはいい感じのダブル・ミーニングがあるんだ。」

それから、エマーソンとダンは2人でコラボレーションを始め、ブリットっぽいテイストを持つ「サンフラワー」、スキナードっぽいはしゃぎまわってるかのよ うな「ジャンプ・ジミー」を作り出した。「だっていろんなテイストを加えていきたかったんだ」とジェフは言う。彼は「ノック・ダウン・ウォールズ」「ラ ヴ・ア・ダイアモンド」などでもソング・クレジットに名を連ねている。「突然僕らは色んな次元を持つバンドなんだってことに気付いたんだ。僕らにとっては 新たなる幕開けって感じだね。」

同じように作られた「ユー・ウォンテッド・モア」は突出したロック・ナンバーで、ギター・ロック・ファンを唸らせる仕上がりを見せると、他の曲でもそれぞ れのが輝きを放っている。オープニングを飾るちょっと変わったモダンな力強さを見せる「フューチャー・セイズ・ラン」、ちょっとダークな「ノック・ダウ ン・ウォールズ」、そしてヘヴィは「トップ・フォールズ・ダウン」。アルバム『シュガー』はギブソンのギター・ノイズが偏在してるだけのアルバムなんか じゃない。エマーソン、ダン、ジェフの3人は痛烈な「ウェイティング・フォー・ザ・ライト」、元気のよいギターが聴ける「ワルツ・ウィズ・ミー」、そして 暖かい、チャイムのようなテイストを持つタイトル曲「シュガー」など、素晴らしいメロディと、アコースティックな一面 も覗かせる曲を作り出していく。

「いろんなアレンジや要素をこのアルバムで実験してみたかったんだ」とジェフは言う。「何かをレコーディングするときに必ずやる方法なんだけど、出来あ がったものを別 の切り口でやってみたらどう聴こえるだろうって考えたり、やってみたりするんだ。僕らのその作品に対する直感が正しいかどうか見るためにはこうするのが僕 らには一番なんだ。」

自分達の出来うる限りの力を出して音楽を作っていくことが唯一の選択だった、とダンは言う。「いろんなアイディアを出し合い、曲を書き、そしてプロデュー スもした。確実にこのアルバムは好きだって言えるよ。もしみんなも好きになってくれたら、グレイトだよね。もしそうじゃなくても、少なとも僕達は大好きな んだ。それだけでも十分さ。」

『レモン・パレード』を発表した後、トニックは2年半の間をツアーに費やし、アルバムのセールスをじわじわと増やし、何人ものファンを魅了してきた。 1998年にトニックはファンへ自宅にいながら彼らのライヴを楽しんでもらうために、インターネットを通 じてのみ販売を行ったEP、『Live And Enhanced』をリリースした。『シュガー』が前作と同様に歓迎されることは間違いないだろう。彼らもこの新作に対して前向きな姿勢をとっている。ト ニックの未来はどうなるのだろうか?エマーソンはこの問いに対してはっきりとは答えなかった。「僕はあまり先のことまで考えないようにしてるんだ」と言 う。「ただ曲を書きつづけ、レコードを作り続けるだけさ。」