ABOUT SPHERE

SPHERE (スフィア)


最後にリリースしたシングル 「DIAMOND IN THE ROUGHT」 から2年、SPHEREが古巣ユニバーサルに戻り、再始動する。久しぶりにリリースするシングルについて書く前に、ぜひ触れておきたいことがある。
それはラッパー・SPHEREが会社勤めを始めたことだ。父親の紹介で働くことになったというその会社は、軍やオーディオのデザインをてがけるヨーロッパで名の知れているデザイナーを抱え、イタリアからワインや食品等の輸入も行っているそうで、NYのアーティストスクールでデザインを学んだ経歴と車の運転歴(?)を買われ、デザインから英語の通訳、ワインのデリバリーまでいろいろ任されているという。SPHEREがサラリーマン&ラッパーという二足わらじを履いて活動するというニュースは、自身のブログが10万という大きなヒット数を記録したことから、Yahooニュースなどで取り上げられ、”サラリーマンラッパー”としてヒップホップ・ファン以外の人たちの間でも話題になる存在となった。そのブログの反応についてSPHEREはこう語る。

「ヒップホップやってるSPHEREでいて欲しいとか、夢がないとか、リアリティーを聞きたくないと言う書き込みもあったけど、共感してくれる人もいっぱいいた。音楽やダンスの夢をあきらめて、今はОLやサラリーマンをしているけど、これから両方頑張って夢を叶えたいって言ってくれたり、逆に夢ばかり追いすぎてニートになってしまったって人からも、何かをする勇気を与えられたって言われた」

そんなサラリーマンラッパー・SPHEREが満を持して新年にリリースするシングルは、恋愛ソング。
それも失恋ソングだ。

「こういう失恋ソングみたいなタイプの曲ってやったことなかったから新鮮だと思って。それに “Luv Ya” でも “Day One” もそうだけど、シナリオ作ってリリック書くの好きだし。 “Luv Ya” は、オレが海外にいて女の子が日本にいるシナリオだし、 “Day One” だと3日間の出来事を脚本みたいに書いたし」

SPHEREといえば、バイリンガルなリリックが特徴的だが、この曲では日本語のみでラップ。だからなのか、細かいフレーズに 「分かる! 分かる!」 と思わず共感。また、センチメンタルな響きが心にしみるコーラスパートは、一回聴いただけで口ずさみたくなってしまう。そのコーラスパートを歌っているのは、音楽一家に育ち、絶対音感を持つシンガーの傳田真央(デンダ マオ)。
トラックは、AIの 「大切なもの」 をはじめ、多くのアーティストの曲をプロデュースし、SPHEREが 「音楽の理論も理解してるし、ヒップホップにもすごく詳しい」 と太鼓判を押すカンパニーの2人。そして、今作では意外な人物が登場するPVにも注目していただきたい。

「”ヒップホップ=自分が主役” っていうPVはもういいかなと思って。よく歌謡曲ではドラマ仕立てっていうのがあるけど、曲にドラマを当てはめるんじゃなくて、曲をドラマにしたから、それを描きたかった。PVは自分のモノっていうより、みんなのモノにしたいと思った。だから、自分が出演しないことによって、共感っていうか、みんなに感情移入してもらえるようにしたかった」

会社勤めをスタートし、古巣のユニバーサルに戻り、クリエイティヴの面でも新たなことに挑戦するSPHERE。環境をがらりと変え、心機一転、再スタートを切るこの男が、これから何をしでかしてくれるのか期待に胸が躍る。


松田 敦子