BIOGRAPHY

THE RED JUMPSUIT APPARATUS / ザ・レッド・ジャンプスーツ・アパラタス


Dendou
今作レコーディング・メンバー
ロニー・ウィンター/Ronnie Winter(vocals/guitar)
デューク・キッチンズ/Duke Kitchens(lead guitar)
ジョーイ・ウエストウッド/Joey Westwood(bass)
ジョン・ウィルケス/Jon Wilkes(drums)
マット・カーター/Matt Carter(guitar)


不幸な出来事の余波の中、時としてアートは勢いよく成長することがある。ザ・レッド・ジャンプスーツ・アパラタスが消息を絶って以来、この5人組オルタナティヴ・ロック・バンドは数え切れないほどの耐え難き変化に見舞われていた。しかし、フロリダはミドルバーグ出身のこのバンドは、持ち前の衰えることのない粘り強さのおかげで、やがて困難をも乗り越えられるようになり、信じられないほど野心に満ちた(適切にタイトルにも現れている)2010年、’The Hell Or High Water’ EPへと道がついていったのだ。更に2011年8月には、3枚目にして長い間待ち望まれていたアルバム、”Am I The Enemy”がリリースされる。

2006年、ゴールド・ディスクに輝いた”Don’t You Fake It”(スマッシュ・シングル、’Face Down’収録)や、続く2009年、”Lonely Road” (ビルボード200、トップ20に初登場)発表時にバンドと初めて契約を交わしていたヴァージン・レコードからの自発的別離後、 先だってリリースされたEP同様、このプロジェクトはマネージメント会社、The Collectiveとの提携のもと、実現している。本来のDIY(なんでも自分でやります主義!)精神に再び戻り、”Am I The Enemy”はかつてとは比べものにならないほど、メンバーを熱く燃え上がらせ、アンプから炸裂するカミソリのようにシャープな演奏や、情熱的なフロントマン、ロニー・ウィンターの轟き渡るようなヴォーカルには自信が滲み出ているのだ。

「最後のフルレンス・アルバムを出してから、3年経ってるんだ。その間、再構築すべきことが沢山あったから、どこにもっと焦点を合わせるべきか、過去にやってきたことを全部整理して、とにかく新しいレコードを作りたいっていう一念に絞ってきたんだ。」と、フロントマンはきっぱりと断言した。「’The Hell Or High Water’ EPをリリースしてからも、しっかりファンがサポートしてくれているのはわかっていたよ。でも、俺たちの作曲レベルを次の段階まで引き上げたかったんだ。ビジネス面がどうのこうのとか、一切心配することなく、ただ音楽に全焦点を集中させたかったんだ。まさに、自転車に乗ってるような感じだよ。スタジオに入った途端、補助車輪が取れて、自分たちの限界に挑戦する危険なテストが始まったんだよ。」

バンドの情熱と粘り強さはもとより、プロデューサー、ジョン・フェルドマンのクリエイティブな後押しは見逃せない。彼はGOLDFINGERとしての方が馴染みがあるかもしれないが、THE USEDやSTORY OF THE YEARS, GOOD CHARLOTTE, PLAIN WHITE T’s, SAIOSIN, NEON TREES (その他多数)との仕事でもよく知られている人物だ。ザ・レッド・ジャンプスーツ・アパラタスのメンバーは長年のGOLDFINGERのファンではあったものの、仕事としての関係は、あるセッションのプロデュース後に実に自然発生的に実現している。

ウィンター:「まさしく、自然発生的だったよ。俺たちは仕事相手としてのプロデューサーを探していたわけじゃないし。ただ、何かすごく新しいアイデアがあればいいなって思ってたんだ。俺たち、2台のアコースティック・ギターを抱えて座っていたんだけど、ためらうことなくピンとひらめいてね。最初のシングル’Reap'(4月26日リリース)を書いたよ。それから同じ日に、’Salvation’も書いた。その1週間後、ただちにこの2曲のデモ録音に取りかかったんだ。そんな感じで次々にこなしていった。俺たちの仕事倫理は実にうまく混ぜ合わされていったよ。もの凄く楽しかったし、脚本とかがあるわけじゃない。レコードを作る上で、これは今までにはなかった大きな違いだし、俺たち皆、誇りに思ってるんだ。」

フェルドマンが加えた。「レッド・ジャンプスーツの仲間たちとの仕事は、すごく楽なんだ。彼らはアイデアに満ちているし、一緒に録音するのは本当に楽しかった。バンドのひとりひとりがそれぞれ、何かユニークなアイデアを持ち寄ってくるんだ。これほど楽しい仕事はないよ。とびきり才能のあるミュージシャンたちだね。もう、全員のところを行ったり来たりして仕事したよ。」

ここに収録されている楽曲は、根っからのファンでも初めて聴く人でも同様に、ハードコアやオルタナティヴ・ロックといった娯楽作品として、バンドの持つ特徴をしっかり包みこみつつ、数多くの音のリスクを期待することができる作品になっている。ウィンター:「今までやってみたことのない、かっこいいデジタル・プログラミングや実験的なドラム・サウンドが聴けるよ。かなりイカレた、それでいて新しいコード。ほんとにかっこいい半音進行でね。実際、ジョンは俺たちにとって新しいドアを開いてくれたよ。俺たちのファンで、もし彼らがミュージシャンだったら、聴いた途端気がつくと思う。コードのいくつかはかなり独特な音だけど、とびきりすばらしいし、レコード全体としても結束力のあるものなんだ。」

ウィンターが断言しているように、先に登場した’Reap’でも適切に現れているが、一度聴いたら忘れられないコーラスや、早い連続音でどんどん進むヴァース、大胆な’行きつ戻りつ’的動きのお陰で、レコード全体が目指す方向性が誕生したのだ。このシンガーとプロデューサーによる2つめのコラボレーション、’Salvation’は逆境に直面したことがあるやつなら、ガツンとくる賛歌になること受けあいだ。一方、’Fall From Grace’ではグループが過去に関わった、メジャー・レーベルの形式主義と、最終的には独自の定義で音楽を作っていこうという自覚がはっきりと見てとれる。’Dive Too Deep’では、すでに10年近いキャリアのあるバンドとして、メンバー全員がまだ十代だったころ、ギタリストのデューク・キッチンスが夢に描いていた古いリフを払い落としているが、パチパチと燃えるキャンプファイアの炎を囲み、浴びるほどのビールを飲みながら、紛れもなくキャッチーで最高潮に達した感情にぴったりマッチする、これだ!というメロディを、ついにウィンターは発見したのだ。

強調されたテーマにもあるように、”Am I The Enemy”は先のプロジェクトを激しくののしるような、真剣に考えぬいた、政治的傾向色の濃い方向性が継続されているが、更にここまで大胆になってきている。どこかの政党の基本方針や個人的信仰などおかまいなしに、えぐるように鋭く誇張された疑問に直面しながら、バンドは故意に聞き手を一直線上の音の中へと、深く飛び込ませようとしているのだ。

ウィンターが説明してくれた。「俺たちはいつも世界中を旅しているから、確かに感じるんだ。よその国ではアメリカ人に対する認識に、なんか奇妙な陰りがあるんだよな。何か俺たちのことを弱いものいじめをする人間だとか、世界の警察みたいに思ってるようなんだ。俺はそうは思わないけどな。特にイラクやキューバ、地元のアメリカの軍隊のために演奏するときはね。確かに、問題は色々あるよ。でも、もし’Am I The Enemy’の最後にクエスチョン・マークがついているとしたら、28歳のアメリカ人として俺は答えるね。俺たちは確かに、紛争に支配された国々に民主主義や資本主義、自由ってものを学んでほしくて、その手助けをしてるんだって。経済状態は最悪だし、政治家どもは嘘つきだけど、ひとつの社会として、俺は地球上で最高の国のひとつに住んでるんだって思うんだ。」

最後のアルバムが世界の表舞台に登場して以来久しい。ザ・レッド・ジャンプスーツ・アパラタスは初の公式北米ツアーへ向けて、ツアー・バスに荷物を積んだところだ。聞き手はやっと彼らの存在をその目で判断することができるだろう。ウィンターがまとめてくれた。「長い間、ご無沙汰しちゃったけど、今でもみんなのことを大事に思っているってファンに知らせたいんだ。今まで出してきたどのレコードよりも、このアルバムには俺たちほんとに興奮してるよ。俺たちの上に覆いかかっていたどうしようもない巨大な影を気にせず、自分たちがやりたいものができるんだって、やっと自由を感じることができたんだ。」