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クイーンと日本のファンとの固い絆を感じさせる曲の存在を知らない人はいないはずだ。そう、’77年に発表された 5枚目のアルバム『華麗なるレース』に収録されている「手をとりあって Teo Toriatte (Let Us Cling Together)」のことだ。「手をとりあって、このまま行こう、愛する人よ…」と日本語で歌われる、この美しくも荘厳な曲は、日本公演でも度々演奏さ れ、ファンの間で人気が高い。

実はこの曲が、まだ正式にレコーディングされる前に、私は次回のアルバムに日本語を入れた曲が収録されるという話 をメンバーから直に聞いていたことを思い出した。’76年9月18日にロンドンのハイド・パークで開催されたクイーンのフリー・コンサートを取材した際、 メンバーとのインタビューのなかで、すでにこの曲のことが語られていたのだ。

もちろん、その時点ではタイトルも、曲調も不明だったが、次回作の内容を尋ねた私にロジャーが「まだ、内緒だけど 今度のアルバムには日本語を交えた曲が入る予定なんだ」と答えてくれた。それが翌年発売された『華麗なるレース』に収録され、「手をとりあって」というタ イトルで、私達に届けられたわけだ。
76年3月末から4月初旬にかけて行われた2度目の来日公演が終わってすぐに、彼らは次作のレコーディングを開始している。その作業を一時中断して行われ たのがハイド・パークでのフリー・コンサートだった。従って私がその時に聞いた「日本語を交えた曲」は、まだ形になっていなかったはずだ。

歌詞の原案は多分、直前の再来日公演時に作られたものだと考えられる。その頃の来日公演時にメンバーの通訳を努め た鯨岡さんという女性がフレディに頼まれて、彼の書いた歌詞をもとに日本語に訳したものらしい。ホテルやコンサート会場の片隅で、フレディの注文に必死で 応えて出来上がった歌詞だと聞いたことがある。それが1976年のことだ。
それから35年後、2011年の2月24日に私はロンドン東部のシティ地区で開催された「クイーン展」の取材でブライアン・メイとロジャー・テイラーの2 人に会った。2人共口を揃えて「1974年の初めての日本ツアーはクイーンにとって重要な一歩となった」と言った。これが単なる日本向けのリップ・サービ スではないことはファンならずともご承知の通り。2人は率直に「僕らは、まだ若く、成功の途中だった。だからあの日本ツアーの成功には本当に驚いた」と 語ってくれた。

「手をとりあって」は今、クイーンと日本とを結ぶ曲として大きなパワーを持ち始めているのかもしれない。

2011年3月25日
東郷かおる子

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