BIOGRAPHY

Parachute / パラシュート


Bio

(LtoR)
キット・フレンチ / Kit French (saxophone, keyboard, vocals)
ネイト・マックファーランド / Nate McFarland (guitar, vocals)
ウィル・アンダーソン / Will Anderson (vocals, guitar, keyboard)
ジョニー・スタッブルフィールド / Johnny Stubblefield (drums)
アレックス・ハーグレイヴ / Alex Hargrave (bass)

 

 パワー全開のロックにブルー・アイド・ソウル、ヴィンテージR&B、そして成長途中のメロディックなポップ・ラジオ・アンセムをたっぷりと混ぜ込んで、パラシュートがやって来た。マーキュリー/アイランド・デフ・ジャム・ミュージック・グループからリリースされるバンドのデビュー作は、リード・シンガー/ソングライター/ギタリストでピアニストでもあるウィル・アンダーソンのヴァン・モリスンのようなスキャットがフィーチュアされた、ファースト・シングルであるバラード調のトーチ・ソング「シー・イズ・ラヴ」から、ネイト・マクファーランドの繰り出すジ・エッジ・スタイルの骨太なギターが轟く「バック・アゲイン」、「アンダー・コントロール」、「ゴースト」、「ワーズ・ミート・ハートビーツ」、そして「オール・ザット・アイ・アム」まで、どれも各メンバーの共有する歴史から生まれたものだ。

 ウィルはハイスクールの同級生だった時から、ドラマーのジョニー・スタブルフィールド、ベーシストのアレックス・ハーグレイヴ、サックス/キーボーディストのキット・フレンチと一緒にプレイしてきた。ウィルは通っていたヴァージニア大学でネイトと出会い、彼もバンドに加入。「今でも憶えてるけど、スター・ヒルで彼らを観たんだよ、町で一番デカいハコでね。」彼は回想する。「その時には自分が彼らと一緒にプレイすることなんて考えもしなかったよ、ましてやバンドのメンバーになるなんてね」。

「それ以来、僕らはずっと下降線を辿ってるんだよ、」ウィルがからかう。

 スティーヴィー・ワンダー、エルトン・ジョンやポール・サイモンといったオールドスクールのビッグネームから、U2、コールドプレイ、ウィーザー、ベン・フォールズ・ファイヴ、マルーン5、ジョン・メイヤー、ジェイ-Z、カニエ・ウェスト、ザ・フレイ、アーケイド・ファイアといった中堅から若手まで、幅広く多様な影響を携え、当時はまだスパーキーズ・フロウと名乗っていたグループは地元で熱狂的なファンを集めるようになる。その幅広さは大部分のプロデュースをグラミー賞受賞経験のあるジョン・シャンクス(ボン・ジョヴィ、リズ・フェア、シェリル・クロウ、ジェーンズ・アディクション)が手掛けたバンドのデビュー・アルバムの収録曲にも反映されている。アンダーソンのゾクゾクするようなファルセットがフィーチュアされた「バック・アゲイン」や、勢いのある「ザ・ニュー・イヤー」と共に、ニベアの全米TVコマーシャルキャンペーン・ソングに採用されたシングルの「シー・イズ・ラヴ」のような内省的な曲も入っているのだ。アンダーソンの曲はロマンスの理想形と現実のフラストレーションの違いに何とか折り合いをつけようとしたり(「ワーズ・ミート・ハートビーツ」)、失恋(「シー(リズに捧ぐ)」)や焦がれる思い(「アンダー・コントロール」)、後悔(「メス・アイ・メイド」)、罪悪感(「ブレイム・イット・オン・ミー」)、そして執着(”見つめていたい”的ストーカー・ナンバー、「ゴースト」)、何がいけなかったのかという問いかけ(「オール・ザット・アイ・アム」)、そして未来に向かってパズルのピースをひとつずつはめ込んで行こうという努力(「ザ・ニュー・イヤー」)と、どれも恥ずかしげもなくエモーショナルな恋愛模様を描き出すものばかりだ。

 「僕は自分の知ってることについて書く傾向があるんだよ、その時自分の身に起こってることに関してね、」ウィルは言う。「自分たちにとってそれが真実でなければ納得出来ないんだ。僕らは聴く人たちが共感できる音楽を作りたいんだよ、彼らが聴きたいと思うような音楽をね。だから色んなことに絶えず問いかけ続けるんだ、底の底まで到達するためにね」。

 「ウィルは昔からラジオ・フレンドリーなポップ・ソングを書くのが得意だったよ、」ジョニーが付け加える。ポリスのスチュワート・コープランド、ザ・ルーツのクエストラヴ、そしてヴェテラン・セッション・ミュージシャンのマット・チャンバーレインを個人的なフェイヴァリットとして挙げ、自らを”ポケット・ドラマー”と呼ぶ彼は、「オール・ザット・アイ・アム」に独自のインダストリアル・ソロを加えている。

 「僕らはみんなに好まれるような音楽を作りたいんだ、」ギタリストのネイトも頷く。彼はU2のジ・エッジとコールドプレイのジョニー・バックランドを影響を受けたミュージシャンに挙げている。「僕は常に全体の構成を意識するギタリストなんだ。自分のプレイするひとつひとつの音が最大限その曲に対して貢献するように考え、サスペンデッドや7thを多用してエッジを与える。僕らはこのアプローチをテレ・ロックって呼んでるんだよ、僕がテレキャスターばっかり弾いてるからね」。

 バンドの楽曲をCM使用にライセンスすることの動機に疑問を抱く人々に対して、ウィルは「単純に新しいパラダイムってことだよ」と主張。「誰だって自分の音楽を広く世の中の人たちに聴いてもらう為に、精一杯やれることをやってるだろ。僕らはこれをチャンスだと思ったんだ。僕らだって、自分たちの曲を誰にでも気安く渡したりはしないよ。ニベアが僕らにCMのオファーを出してきて、ちゃんと具体的にスポットも見せてくれて、僕らとしてもこれはイイなと思えたからさ」。CMキャンペーンの一環として、バンドは2008年の大晦日、骨身も凍るような気温零下のニューヨークの46丁目のタイムズ・スクエアにしつらえられたニベア・カウントダウン・ステージで、百万人以上のオーディエンスを前に演奏を披露した。

 「手がかじかんじゃって、ドラムスティックを握ってるのがやっとだったよ、」ジョニーは笑う。「メンバーもみんな指が動かなくて大変な思いをしてたけど、でもあれはやる価値があったね」

 「セットが終わった時ふと視線を落としたら、僕のギターには弦が3本しかなかったよ、」ウィルは言う。「僕の指は血まみれだったけど、とにかくハッピーで、あんなに満ち足りた気持ちになった事はなかった。あの晩、僕らは自分達がそもそもどうしてこんなことをやってるのか、その理由をハッキリ自覚したよ」。

 「僕らは今、これまでやったことのない新しいことを沢山やってるんだよね、」バンドのサックス奏者でありキーボーディストのキットは熱心に語る。「毎日毎日新しい箱を開けてる感じなんだ。昨日なんか、僕らは素晴らしいフォトセッションをやったんだけど、もの凄く大掛かりなプロダクションで、とても現実とは思えなくて、自分で自分をつねってたよ」。

 ところで、ジョン・マクラフリンやO.A.R、スウィッチフット、ダフィーやマット・ネイザンソンといった面々とのツアーを経験したバンドが、何より自信を持っているのはライヴなのである。パラシュートの支持基盤はフェイスブックやマイスペースでぐんぐん膨れ上がり始めているが、彼らが旅した距離と実績、そしてこれから先どこまで行かなければならないかは、まだようやく目に見えるようになってきたところだ。

 「このメンバーと一緒にいられることが本当に恵まれてると思うんだよね、」ベーシストのアレックスは言う。「すべては2台のピックアップ・トラックの後ろに機材を載せて、家族とか友達相手にプレイするところから始まったんだ。そういう意味じゃこの状況って凄い非現実的だし、みんな日々自分たちの小ささや未熟さを実感してばっかりだよ。ここまで来るのにそれは沢山の人たちから助けてもらった。僕らに対して色んなことをやってくれた人たちみんなに感謝してるよ」。

 「僕らには自分たちなりの目標があるんだけど、それはどれも結構険しい道なんだ、」ウィルが横から口を挟む。「こう見えてなかなか野心的な連中だからね。今はこの仕事がフルタイムでやれるようになったっていうのが嬉しいけど、僕らとしては常に次の段階に到達しようと闘ってるし、メリー・ゴー・ラウンドの黄金の輪を掴もうと一生懸命手を伸ばしてるんだ。ハイスクールの頃は、ただもっといいハコでプレイしたい、それだけの気持ちで演ってた。大学に行ってからは、レーベルに注目してもらうことで頭が一杯だった。で、今はその次の段階に進んで、国内のファン・ベースを確立していくってところに来てる。僕らにとって何よりの喜びは、どんな形でもいいから可能な限り色んなところに出て行って、自分たちの音楽で人々の心を掴むことなんだ。そして、彼らに口コミで友達に評判を広げていって欲しいんだよ」

 実のところ、唯一ネガティヴな話題と言えばバンドが彼らのミュージシャンとしての成長を反映させる為にもっと成熟した名前をつけたことが、彼らの旧友スパーキーを落胆させたということだ。

 「ヤツは自分の名前がついたバンドがあるんだっていうのをネタに、しょっちゅう女の子を引っかけてたんだよね、」ウィルが暴露する。「だから僕らがバンド名をパラシュートに改名することに決めた時に、まずヤツに知らせる必要があったんだ。その名前がとにかくピンと来たんだよ。僕らの音楽のスタイルに合ってると思う。僕の唯一の望みは、そこにちゃんと仰向けに尻から着地するってことだから」。

 どうか誤解のないように。パラシュートはあくまで着陸成功に向かっているのである。