「ロックの殿堂」授賞式でのケンドリックのスピーチ訳を掲載!

2016.04.13 TOPICS

4月8日にアメリカで行われN.W.A.が受賞した「ロックの殿堂」。
この受賞式のプレゼンターとして壇上に上がりN.W.A.に捧げるスピーチをおこなったのはN.W.A.と同じくコンプトン出身のラッパー、ケンドリック・ラマー!
彼が行ったスピーチを全文掲載!


N.W.A、N.W.Aって言ってんだ! ワット・イット・ドゥ(訳注:ワッツアップ)、ボーイ。世界一ヤヴァいグループ。5人のメンバーは、それぞれが極めて重要な役割を果たし、ボルトロン(訳注:アメリカのテレビアニメ・シリーズ。5体のメカが合体して、ボルトロンとなる)みたいなスーパー・グループを作り上げた。

まずはDJイェラ。どこにいる?ヒップホップ、コンプトン! 彼の魅力とカリスマは、周囲の人々に影響を与えただけでなく、プロダクションでターンテーブルを操るたびに発揮された。最高のエリート――そう、コンプトン選り抜きの精鋭MCだけが、彼が作る最高にイルなブレイク、カット、スクラッチに乗ってライムすることを許された、分かるか? イェラがレコードに針を落とすと、パーティ・タイムが始まるんだ、そうだよな? な? 

MCレン、マザファッキン――罵り言葉、使ってもいいか(笑)? MCレン、マザファッキン・ヴィラン! ヴィラン(悪党)って名前は口だけじゃない。その悪党っぷりは、彼がマイクの前に立つたびに証明された。ハードコアなリリックは、皆を踊らせただけでなく、スピーカーを通してハードに頭をドツいてくる感じだったよな、分かるか? ライムを聞くたび、ガチな厳戒警報が出てた。ホンモノのコンプトン住民の本音だけが語られていたんだ。MCレン、信じろよ。100%ガチ。イエッサー。

キューブ! どこにいる? アイス・キューブ! ストーリーテリングの天才。全てのバーに俺たちは釘づけになった。そのパンチライン、デリバリー、詳細なイメージが、リスナーにコンプトンの若者の日常を垣間見せてくれた。キューブは常に、最高峰のMCの1人であることを証明し続けてきた。個人的なことを話すと、俺はあんたを青写真にしてデビュー・アルバムにアプローチしたんだ。マジな話だ、分かるか。だから敬意を表するよ。100%。

ドック・ドレー!ドクター・ドレー!サイエンティスト(科学者)!パーフェクショニスト(完璧主義者)。非凡なプロデューサー。俺のメンター(良き師)でもある。分かるか? 彼は、自分の仕事に決して満足するなってことを教えてくれた。レコード上でも、その他の時でも。ラップしている時でも、普通に生活している時でも、それを常に教えられた。2つ目の教えは、毎日必ず自分の音楽とファミリーを大切にしろってこと。あの言葉は決して忘れないぜ。初めて会った日から、あんたは「スーパースター!」と俺を呼び、いつもエネルギーを与えてくれた。決してケンドリック・ラマーとは呼ばなかったよな。そのお蔭で、俺は自分のやってることを信じることができたし、自分は正しいことをしてるってことを知るエネルギーをもらえた。こうして、スーパスターになることができたんだ。俺はそれについて、いつも感謝している。

それはそれとして、個人的な話だけでなく、俺はまず、実際に出会うよりも遥か昔に、音楽を通じてドレーに出会った。だから、これは言わせてくれ。ドレーは、N.W.Aのハードコアなリリックに、堂々たるハイレヴェルなサウンド・プロダクションを提供したんだ。ケンウッドのスピーカーを余分に準備しないと、「プレイ(再生)」ボタンは押せなかったよな。何のことか分かるだろ、ウーファー(低音再生用のスピーカー)だ! 俺の言ってること、分かるだろ? ツイーター(高音域用スピーカー)だ! 俺は大音量でブチ上げてたぜ。ひとつひとつのハイハット、スネアで、激しくノリまくって頭振ってたよな。こうしてアンドレ・ヤングは、俺たちの時代、そして現在に至るまで、最高のプロデューサーの1人であり続けてる。信じろよ、ガチなんだから。

そして最後になるが、伝説の偉人、故エリック・「イージー・E」ライト。彼は真のマスターマインドだった。ビジネスマンで、 素晴らしいエンターテイナー。彼のペルソナは、比類なきものだった。彼は自信に満ち溢れていた。その甲高い声は、世界中の国々に響き渡った。イージーEほど、効果的に伝わる声はなかった。彼はリアリティ・ラップのゲートキーパー(門番)だ。彼のお蔭で、俺は光栄にもこのステージに立ち、コンプトンをレペゼンしている。彼のお蔭で、俺たちは光栄にも「Dope Man」や「Express Yourself」といった曲を聴くことができた。「Fuck tha Police」、「Express Yourself」、「Boyz-n-the-Hood」。こうしたレコードのお蔭で、ロサンゼルスは世界的に名を轟かせた。それはギャングスタ・ラップと呼ばれていたが、俺にとってはロサンゼルス、とりわけコンプトンにある俺たちのコミュニティ内で、実際に起こっていることをつぶさに描写しているものだった。

チャックDはかつて、ラップとヒップホップは黒人のCNNだと言った。N.W.Aはこの言葉を最大限にレペゼンしてるだろ?インナーシティの暮らしを最前線に押し出し、俺たちの現実に世界を注目させたんだ。俺自身も、周りを見回し、N.W.Aが代弁してきた人々を見てきた。俺の従兄弟や叔父、そしてコンプトン・クリップやボンプトン・パイルのヤツら、誰もが影響を受けていた。本当だ。皆は知らないんだろうなーー怪訝な顔してるもんな。でも彼らは知ってる! 皆が影響を受けてたのさ、それも大きな影響をな。でも、彼ら大きな誤解があることも分かってた。彼らは人を殺そうとしてる、なんて思われてたんだ。でも、はっきりと言っておく。とにかくはっきり言っておくが、有名なグループが、俺たちのような見かけで、俺たちみたいな服装をしていて、俺たちみたいに喋るっていう事実は、成功しても自分の声を持ち続けられるということをゲットーの子ども全てに証明したんだ。それがN.W.Aだった。これが彼らの本当のメッセージだったのさ。メンバーは全員、ロールモデル(模範となる人物)になどなりたくないと言っていたが、それでもな……「We Want Eazy」のヴィデオで、独房に入っていたイージーが、スクリーンからステージに飛び出してきたのを初めて見た時、俺の地元では、グループの1人ひとりがブラック・スーパーヒーローに見えた。俺たちのコミュニティ出身の人々が、テレビや授賞式に出演し、それでもなおかつ自分の声を持ち続け、自分に誠実でいられるということを示してくれたんだ。だから、それに対して拍手を。最高にリアルなことだからな。

歴史が物語っているように、大勢の人々が、彼らの音楽はギャングスタすぎると言った。彼らの手には負えなかったのさ。でも、俺にとっては正直な音楽だった。だからこう言っておこう。ギャングスタであるということは、自分の現実を変えることができるというハスルを象徴している。ギャングスタの本当の意味は、世界最大の音楽グループに必要な資質を示すことができるということ。ギャングスタであるということは、アイコン的なレーベルを設立すること。ルースレス・レコードや、デス・ロウ、アフターマス・レコードみたいにな。ギャングスタであるということは、映画スター、映画プロデューサーになり、自分の伝記映画『Straight Outta Compton』の中で、息子に自分役を演じさせること。また、ギャングスタだったからこそ、皆の音楽の聴き方を変えてしまったんだ。サウンドにこだわり抜いたからこそ、自分のヘッドフォン・ブランドを作り、世界中のリスナーやファンに、自分が思う通りの深くて複雑なサウンドを聴かせるようになったのさ。ギャングスタであるってことは、世界最大のテクノロジー企業と提携し、全く新しいプラットフォームで革新的な音楽をリリースするってことだ。そして、デビューから30年の時を経て、ギャングスタであるってことは、ロックン・ロールの殿堂入りするってことも意味するようになった。紳士淑女の皆さん、それでは本題に入ろう。俺の兄貴たち、N.W.Aだ。ワッツアップ!

(訳:押野素子 https://twitter.com/moraculous )