BIOGRAPHY

 

Nas & Damian “Jr Gong” Marley / NAS&ダミアン”ジュニア・ゴング”マーリー


Bio

さかのぼってみよう、大企業のオフィスとは無縁の、最高のラップが、地下のスタジオで生み出されていた時代まで。ヒップホップやダンスホール・ミュージックが、「カネを稼ぐ」ためではなく、純粋に「群衆を踊らせる」ことを目的としていた時代まで。ダミアン”ジュニア・ゴング”マーリーとナスティ”NAS”ナジール・ジョーンズが、長く曲がりくねった「シオンへの道」をあゆみだした時まで。楽曲「ロード・トゥ・ザイオン」で、ダミアンとNASは初のコラボレーションを果たした。二人は息が合い、アルバムを一枚作るという約束を交わした。タイトルは『ディスタント・リラティヴス』。

これまで見られた「ジャマイカンxアメリカン」アーティストのコラボでは、ゲストとして、あるいはリミックスとして共演することがほとんどであった。しかしこのアルバム『ディスタント・リラティヴス』は違う。リミックスでもなければ、ゲストとして参加しているわけでもない。全楽曲を二人で手がけたアルバムなのだ。まさに音楽のあたらしい表現方法へと踏み出したアルバムだ。『ディスタント・リラティヴス』は、ダンスホール・レゲエが世に飛び出した40年前~その数年後のヒップホップ誕生まで、さかのぼる。RUN D.M.C.とイエローマンの伝説のコラボレーション「Roots Rap Reggae」から、スーパーキャットとザ・ノトーリアス・B.I.G.の「Dolly My Baby (リミックス)」、そしてシャバ・ランクスとKRS-ワンの「The Jam」まで。そしてその線をたどったところにあるのが、ダミアン・マーリーとNASのグラミー賞受賞作品「ロード・トゥ・ザイオン」なのだ。
レゲエとヒップホップの根深いつながり、そのつながりを祝うため、そしてかたや、さらに掘り下げるために二人のアーティストは『ディスタント・リラティヴス』に着手した。二人はそのルーツを、母なるアフリカの大地に見いだした。人類の生まれ故郷でもあり、音楽の湧き出る泉でもあるその地へと。

その使命をなしとげるため、二人は動き出した。一人は、ボブ・マーリーの息子の中で最年少のダミアン”ジュニア・ゴング”マーリー。レゲエというジャンル外で、初のグラミー賞を受賞したレゲエ・アーティストである。2005年に大ブレイクしたヒット曲「ウェルカム・トゥ・ジャムロック」で、Best Urban/Alternative賞を受賞。  同名タイトルのアルバム『ウェルカム・トゥ・ジャムロック』では、Best Reggae Album賞も受賞している。

二人目はヒップホップの申し子、NAS。クイーンズ区のプロジェクト(低所得者住居)で育った彼は、1991年、メイン・ソースの「Live At The Barbeque」収録 ー ”永遠のゲスト・ヴァース” ー で一世を風靡し、ヒップホップ界に名を馳せる。ジャズ・トランペット奏者=オル・ダラの実子。世界中ですでにトータル2000万枚以上の売り上げを記録しているNASは、ヒップホップの使者(アンバサダー)として世界を駆け巡る。

「取り組んだ当初、まず方向性を話し合った」、とグラミー・ミュージアムでNASが話してくれた。「レゲエもラップも根本的には変わらない。どちらも力強さを表現している。それでもたがいに違いは明確。二人でいくつかアイデアを出し合った。”DISTANT RELATIVES”(遠い血縁)と言うからには、人類の血のつながりを意味している」

『ディスタント・リラティヴス』のサウンドは、ライヴ・ミュージシャンの演奏と、ダミアン・マーリー、そして実兄でありアワード受賞者でもあるスティーブン・マーリーのプロダクションで構成されている。ゲスト・アーティストには、”遠い血縁関係”のニューオーリンズ出身=リル・ウェインと、ソマリア生まれカナダ育ちのMC=ケイナーンが参加している。

「ダミアンっぽいとか、NASっぽいとか、そういうのは今回やめにした」、とアルバム・プロデュースを手がけたダミアンは語る。「僕とNASのちょうど中間点を見いだしたかった。どちらの雰囲気も同居しているような感じだね。とても楽しくレコーディングできたよ。ふたり一緒にスタジオに入ってね。二人ともリリシストだから、たがいを伸ばしあう気持ちで。とても気合いが入ってたよ。僕にとっては、とてもいい経験になったしね」 
そしてその経験は、これからの世代を担う若者達にも刺激をあたえることだろう。アフリカ、アメリカ、カリビアン文化のつながりを通して。

「なにもかもが、楽しくなりそうだ」、とNASは言う。「人を助けるって気持ちいいことだしね。このアルバムで達成できることは、無限にあるんじゃないかな」




NAS
90年代初頭からのヒップホップ代表的存在。80年代以来、ラップアーティストを盛んに輩出してきた区域、クイーンズブリッジ出身。ジャズ・トランペット奏者=オル・ダラの実子。世界中でトータル2000万枚以上のCDを売り上げ、ヒップホップの使者として世界を飛びまわる。国際的にNASが知れ渡ったのはおそらく、1992年映画『Zebrahead』のサウンドトラックとして収録されたオープニング曲「Halftime」(Prod. by MCサーチ)だろう。ライムを自在にあやつる詩才=NASが放ったファースト・フルアルバムは、プラチナム獲得の1994年リリース『Illmatic』。以来、8枚のソロアルバムと、3枚のコンピレーション・アルバムをリリース。トータル11回のグラミー・ノミネートに、それぞれのアルバムでは、ダブル・プラチナム、プラチナム、ゴールドを獲得している。

ダミアン”ジュニア・ゴング”マーリー
レゲエの伝説=ボブ・マーリーの子息最年少。レゲエ部門外でグラミー賞を受賞した初のレゲエ・アーティスト。シングル曲「Welcome To Jamrock」でBest Urban/Alternative賞受賞。2005年リリースの名作『Welcome To Jamrock』では、グラミー賞Best Reggae Album部門受賞。ローリングストーン誌では、「トップ10の新人アーティスト」と称される。アルバム『Welcome To Jamrock』のリリース以来、ダミアン・マーリーは世界中を飛び回り、ステージを湧かせている。