Artist: マムフォード&サンズ")
Label: UNIVERSAL INTERNATIONAL

Biography

結成以来、休むことなく数多くのライブをこなしてきたマムフォード&サンズにとって、5ヶ月の休止期間――アルバム『バベル』を引っ提げてのワールドツアーが終了した2013年9月からの5ヶ月――は、ほぼ5年に及ぶ活動期間で初めての正式な休養となった。しかし、目まぐるしい日々から一旦離れるというのは、全てを出し切っていたから、あるいは本来の自分たち自身を取り戻したいという希望があったからであると同時に、自信があるからこそできた決断でもあった。ツアーの終了に至るまでの数ヶ月、マーカス、ベン、ウィンストン、テッドの四人は、ザ・ナショナルのアーロン・デスナーと行動をともにし、彼の所有するニューヨークのガレージでデモ音源を録ったり、あちこちのギターショップを見て回ったり、アーロンの持つ年代物のアンプを試したりして過ごしていた。

バンドが再び集合したのは昨年の2月、場所はデビューアルバム『サイ・ノー・モア』をレコーディングしたロンドンのイーストコート・スタジオだった。そこから8ヶ月に及ぶ曲作りが始まった。ここでのセッションには、プロデューサーのジェイムス・フォード(アークティック・モンキーズ、フローレンス&ザ・マシーン、クラクソンズを手掛ける)が参加した。「ジェイムスには新曲をいくつか聴いてもらった」とマーカスは語る。「そうしたら彼は『うん、いいと思う』って言うだけでさ。それ以上は何もなかった。ジェイムスはすごく控えめな人なんだけど、それが僕たちにとってはよかったんだ。それで実際に合わせてみることになったら、彼が機材の後ろにいる状態で、僕たちは演奏を始めた。まるでスタジオに自分の兄貴がいてくれるみたいだったよ。彼のおかげで楽しくやれた。スタジオは楽しくないとね」

"Tompkins Square Park"の冒頭の何小節かを聴けば、これまでのニューヨークやロンドンでのセッションにおいて、バンドのアプローチに変化が生まれたことは明白だ。それも曲作りやレコーディングに対してのみならず、曲の組立てや強弱の付け方に対するアプローチまでもが変化している。ニューアルバムには、最小限の構成でありながらどこまでも広がっていくような印象がある。マーカスによれば、アルバムのサウンドは「出発ではなく、進展なんだ」ということだ。では、そういったサウンドはどうやって生まれたのだろう――偶然か、それとも意識して決めた結果なのだろうか。「どちらもあったね。バベル・ツアーの終盤は、サウンドチェックの合間に必ず新曲を演奏していたんだ。そして、どの曲もバンジョーやキックドラムは使ってなかった。アーロンと一緒にその曲のデモを作ったときも、そういうふうになった。それで休養に入ったときは、みんな、次はアコースティックの楽器は入れないだろうなっていうことはわかってた。『アコースティックはやめにしよう』っていう話をしたわけじゃない。でも、がらりと変えたいっていうのは四人とも望んでいたと思う。曲作りが極端に変わってはいないよ。ただ、同じことはやりたくないっていう願望があったからこうなったんだ。それと、僕たちはもう一度ドラムが大好きになったんだ! 言ってしまえばそれだけなんだよ」

「これ以上ないほど自然な感じだった」とベンは言う。「まるで結成したばかりの頃のようだったよ。どういうことかと言うと、例えば誰かがエレキギターを弾いたら、ドラムを補うのが一番いいんだ。そうすれば、そのサウンドにシンセやオルガンを加えるのは理に適っている。僕たちが徹底的に考えて決めるようにしたというよりも、お互いに相性のいい楽器を選んだってことなんだ」

さらなる発展という意味で言えば、ニューアルバムは、バンドにとって今までで最も全員が力を合わせたものとなっている。四人ともが全力を尽くし、曲作りの多くがスタジオ内で行われた。さらに、前作『バベル』と完全に異なっているのは、新曲の中で事前にライブで披露されたものは一つもないということだ。ファンたちは新鮮な気持ちで新曲に触れることになるだろう。もしくは、その新しさにショックを受けるのでは? 「とにかくやってみたいんだよ」とマーカスは笑う。「挑戦するとかじゃなくてね」「アーロンと一緒にやってて知ったんだけど」とウィンストンは言う。「曲作りにおいてはあらゆるアイデアを追いかけるというのが、彼のアプローチなんだ。最後までアイデアを追いかけること。たとえそのアイデアが気に入らなくても、捨てたりせず続けてみるんだ」

「アーロンには共同作業についてもより多くを教わった」とベンが付け加える。「互いに一緒に仕事をするという観点からね。僕たちがこれまで聞いたことのなかった金言を伝えてくれた。おかげで僕たちは互いのアイデアを尊重するようになったし、何かを放棄するということはなくなった。そういった習慣を身につけるのは悪いことじゃない――クリエイターとしてもそうだし、人としてもね」

「たぶんこれまでの3作の中で一番面白いレコードじゃないかな」とマーカスは言う。「うん、間違いなくそうだ」とテッド。「これまでよりもずっと民主的な手順を踏んだんだ」とマーカスが話を続ける。「僕たちは全員が、他のメンバーが何をやっているかを理解して、踏み込んだ意見を持つようにしようと決めたんだ。それで確かに、痛いところを突かれることも増えたんだけど、みんながより積極的にメンバーの意見を受け入れられるようになった。そうして腰を据えていろんなアイデアを徹底的に議論していった」さらにベンが続けて「それに今回は、スタジオの環境でもずいぶんリラックスしていられた。これを味わうのももう3度目だからね。スタジオ作業がどういうものかっていう僕たちの理解も、以前とは違っていたんだ。8年前の僕たちだったら、『今度はどんな苦労をしなきゃいけないんだ?』ってなってただろうね」

かつてあるインタビューで、もしライブをやらなければ自分たちは決してバンドとは呼べないと語っていた彼らだが、今では、5ヶ月間の休養――そして曲作りのためのイーストコート・スタジオでのセッション――で身につけたより深い視点こそが、バンドが前進するために必要だったものだということを認めている。「ツアー中よりもスタジオに入っているときのほうがずいぶん楽しかったことがいくつかあるんだけど」とウィンストンは振り返る。「その中の一つは、何でも自分が弾いてみたいと思った楽器が弾けるってことだね。これなら『僕はこの楽器を弾かなきゃいけない。さあ、弾くぞ』みたいに考えることもない。僕たちはみんな、自分たちの望むことは何だってやれるっていう気持ちだったし、そのやり方でよりたくさんの成果をあげられたんだ」

ニューアルバムの鍵となる楽曲の一つである"Believe"は、集まって全員でのめり込むというやり方によって恩恵を受けた曲だ。「全員で、テキサスの農場での結婚式に参加したんだ」とマーカスは回想する。「向こうの人が一週間、僕たちに離れを使わせてくれた。そこで曲作りができるようにってことで。それで理由は忘れたんだけど、僕だけ一日早く帰ることになった。その次にイーストコートに集まったとき、僕が遅れてのんびりスタジオ入りしたら、みんながこの曲を形にしていたんだ。僕にとっては、このアルバムの曲を作る上で転機となった瞬間だった。他の人が書いた詞を楽しんで歌うことができた。まるで自分で書いた歌詞みたいに。この曲を歌うのがたまらなく好きになった。それで、この経験と、それから曲が生まれた経緯があったおかげで、アルバムの残りの曲を書くときの基準ができたんだと思う――僕たち全員にとってのね」

マーカスはロサンゼルスのキャピトル・スタジオから戻ってきたばかりだった。そこで彼は、エルヴィス・コステロ、ジム・ジェームズ、リアノン・ギデンズ、テイラー・ゴールドスミスとともに、プロデューサーのT・ボーン・バーネットが立ち上げたバンドの一員として、最近見つかったボブ・ディランによる歌詞に曲を付けて、アルバム『ロスト・オン・ザ・リヴァー:ザ・ニュー・ベースメント・テープス』を制作するというプロジェクトに参加していた。「僕はそのアルバムにヴォーカルとして参加したんだ。高音のやかましいものじゃなくて、繊細で装飾の加わったものだった。すごく楽しかったよ。ただ歌うだけだった――手には楽器を持たず、キックドラムを叩くこともなければ、タンバリンもなかった。そして同じことが"Believe"のときにも起こったんだ。自分は歌手なんだっていうことを感じられた。自分は自由なんだってことも」

歌詞に目を向ければ、このアルバムはスナップ写真を立て続けに見ているような印象がある――日記の記録、ポストカード、内面的な対話、意見の違いについて、心の痛み、献身、欺瞞と喪失。これは夜についてのレコードであり、都市についてのレコードである。陰の暗さと光の明るさの間を絶えず行き来している。こうした騒々しい感情に付けられる音は、途方もないほどの、複雑さと巧妙さ、劇的さと奥深さ、切迫性と気迫からなる音楽だ。まぎれもなく、新たなページをめくるかのようなサウンドであり、しかもそうでありながら、自分たちが伝える情熱と熱意によってこれまで何百万人もの共感を得る曲を生み出したバンドの作品であることに何ら変わりはない。

「こういう感覚があるからこそ、常に僕たちは音楽を作り続けて来れた」とテッドは言う。「ライブをやってステージに立つと、なんて不思議でなんて驚異的なんだろうっていう感覚が湧いてくる。危険なのは、年を取ってくると、そういう感覚が失われ始めるってことだよ。音楽業界に身を置いていると特にそうだ。だから、それを絶対に手放さないことが本当に重要なんだ」

「これだけ長い間バンドをやっていると」マーカスが続ける。「異なるサウンドや音の強弱に敏感になってくる。そうするともはや『地図上のこの位置に自分たちを置かなきゃいけないんだ』なんてことを考える段階じゃなくなる。そういう理由で、僕たちの新しい音楽は、苦悩も少ないし、狂乱も少なくなっていると思う。『急いでコーラスに取りかからないと』ってなる代わりに、自分たちにもっと余白を与えることを覚えるんだ。そうすると、気がついたら『この水準は超えていないけど、一曲全体を通してやってみよう。今のこの状態で構わないから』って言えるようになってるんだ」

あれだけの長い休止期間の後では、再びライブをやりたくてうずうずするのは避けられないことだ。彼らは何といっても、グラミー賞、ブリットアワード、さらにはホワイトハウスでのライブ演奏といった目映いスポットライトを浴びながら、そこを離れて、スコットランドのハイランド地方を回る小規模かつ限定的なツアーに出発したバンドなのだから。さらには2012年と2013年にフェスティバル・ツアー『Gentlemen of the Road Stopover』を主催し、世界各地の辺境を会場に選んで、地元のミュージシャンと産業を後押しした。その過程で、そもそも自分たちがバンドである理由を再び一つにつなげていった。

「色んな場所に立ち寄ってライブをやるんだっていう強い動機が生まれたきっかけは、ハイランド地方をツアーで回って、オークニー諸島やシェトランド諸島にも行った経験だね」とマーカスは言う。「あの辺りではすごく歓迎してもらった。僕たちが来たことをみんなが喜んでくれていたみたいだった。だからツアーをどうしようかってなったときは、全員が同じことを考えたよ。『ああいう形で、もっとやろう』って」

「そういうやり方を続けていると、バンドのちっぽけな核を離れてどんどん遠くに行けるんだ」とベンが言う。「さまざまなアイデアや概念を思いつくようになるし、新しい人たちと協力できるようになる。僕たちには誇らしいことで、それを否定するのは意味がないよ。他にこれを成し遂げたバンドはあまり多くないんじゃないかっていう気がする。一緒にやる人たちに声をかけると、みんなものすごく誇らしそうにしているのがわかる。だからこれは、僕たちの力がっていうよりも、彼らの力があるからやれるんだよ。もちろん『Stopover』フェスは音楽がなくては成り立たない。でもある意味では、ステージに上がって演奏できるような音楽をみんなで作るってことだから」現在、新たな『Stopover』フェスが計画されている。目の前には、開けた道が待っている。

ところが今、ちょっとした課題が浮かび上がっている。それは新譜を実際のライブで演奏できるようにしなければならないということだ――しかも、今年8月のレディング&リーズ・フェスティバルへの出演が発表されたことにより、時間があまりない。彼らは現在、20日間に及ぶリハーサル期間の中の真っ只中で、まるで新人のような緊張感をみなぎらせている。「アルバムの曲は一度もライブでやったことがないからね」とマーカスは言う。「そういう意味でも、このニューアルバムは今までとずいぶん違うんだ」

「でも、ただ演奏できるようになればいいってわけじゃない。パフォーマンスとして完成させないと。やらなきゃいけないことはたくさんあるよ」

やるべきことは多いが、それだけの価値があるはずだ。数々の新曲があり――"Only Love"、"Believe"、"Ditmus"、"The Wolf"、"Wilder Mind"、"Just Smoke"――これらはライブで演奏されれば力強く鳴り響いて、たちまち我々を虜にするだろう。

「昨日こんなことがあったんだ」とベンが言う。「"Tompkins Square Park"に、対になるメロディーが出てくる箇所があって、僕はレコーディングではそれをちゃんと演奏してたと思っていたんだけど、できていなかったことが判明したんだ。だから僕としては『じゃあ、ここのコーラスでは自分は何をやればいいんだろう?』って感じだったんだよ」

爆笑が起こる。マムフォード&サンズにはこうした笑い声がいつでもついて回る。そこでマーカスが付け加える。「僕がやるべきことは、ギターをかき鳴らすことだけだって確信したよ。四小節につき一つのコードを弾く。『自分には全部の曲でこれはできないんじゃないかな?』なんてことも思ったけどね」

マムフォード&サンズは2015年5月4日(註:日本発売5月6日)にGentlemen of the Road/Island Recordsよりアルバム『ワイルダー・マインド』をリリースする。

http://www.mumfordandsons.com/