music of the millennium

コンピレイションというカテゴリー名で分類されるタイプのアルバムが、いま、巷に氾濫している。先日、
ニューヨークに出かけたおり、ある大型店の陳列棚をのぞいて見て、驚いた。コンピレイションと書いた
セクションに並んだ、アルバムの種類と点数のあまりの多さに、圧倒されたのである。この店では、ロッ
ク・フェスティヴァルのライヴ・アルバムも、いま全米で超人気のプロレスリーグの名称を冠したアルバ
ムも、このカテゴリーに分類している。

 コンピレイションというのは、編集、編纂したもの、という意味である。レコードに関して言えば、何
かある一つのテーマに従って、それに関連した、相応しい作品を集め、アルバムとして纒め上げたもので
ある。これまでにアメリカ発売されてきたコンピレイション・アルバムを、音楽業界誌ビルボードの全米
アルバム・チャートに調べてみると、カントリー、ダンス/ディスコ/クラブ、ディスク・ジョッキー、
ジャズ、レーベル、ニュー・エイジ、ラップの7つに大別されている。

 発売点数とそれぞれの売上げからみると、レーベル、つまり、レコード会社別のコンピレイションが圧
倒的に多く、売れたようである。なお、付け加えておくと、ビルボード誌は最近、ヴァリアス・アーティ
スツという新しい名称の下に、コンピレイション・アルバムを分類している。

 コンピレイション・アルバムの全米でのベスト・セラーを調べてみる。60年代から90年代中ごろまでの
30数年間に、全米アルバム・チャートの10位以内、いわゆる全米トップ10アルバムになったものは、皆無。
98年、ユニバーサル・ミュージック・グループが発売した『NOW』が、全米トップ10アルバムとなった、
最初のアルバムのようである。

 続く『NOW』シリーズの発売と成功から、このてのアルバムに、レコード業界関係者、ファンの注目が
集まってくる。決定的な事件となったのは、2000年夏発売された『NOW4』の大成功である。8月第1週、全
米アルバム・チャートに、初登場で第1位。その後連続9週間、トップ10内に留まるベストセラーとなって、
レコード業界にかなりのショックを与えた。このあたりの事情は、既にご存知かもしれない。

 さて、ここへ来て、『ミュージック・オブ・ザ・ミレニアム』が発売され、『NOW』シリーズとは違っ
た意味合いで、注目を集めている。『NOW』の内容は、名称通り、最新のヒット曲から選曲、編集したも
のであるのに対し、こちらは、世界的な人気、知名度、実績を誇る39アーティストの、それぞれの代表的
ヒットの中から厳選したヒット曲選集である。特に70年代、80年代のポップ、ロック史上に残る貴重な大
ヒット曲を数多く集めたところが、なによりも価値がある。これほど魅力的な内容のコンピレイション・
アルバムを知らない。

 いわゆるスーパースター、スーパーグループと呼ばれるアーティストたちは、自分たちの音楽歴を作り
上げたヒット曲に限りない愛着、愛情を抱き、異常なほどの拘りを抱いている。こんな話がある。ザ・ボ
スとして知られる超大物ロック・スターは、ある有名なロック・シンガーが吹き込んだ、自作のヒットの
カヴァーに不満を抱き、発売寸前だったにも拘らず、強硬に主張して、アルバムから削除させてしまった
という。

 こうしたエピソードからも理解出来るように、コンピレイション・アルバムの1曲として、選曲される
ことさえ嫌い、敬遠しがちな大物アーティストは、少なくないと聞いている。そうしたことから考えると、
この「ミレニアム・アルバム」に選ばれたアーティストの顔触れと、それぞれのヒット曲のリストを見て、
正直驚きを隠せない。使用許諾を、よくも与えたもの、そう驚きに近い感慨さえ覚えた作品は何曲もある。

 例えば、エルトン・ジョンの「キャンドル・イン・ザ・ウィンド」である。故ダイアナ妃に捧げ、彼女
の葬儀で歌って以来、エルトンはステージでは決して歌おうとしなかった、レコード史上最大のヒット曲
のオリジナルである。このエピソードは、多分、ご存じであろう。

 エルトン・ジョンだけではない。このアルバムの顔触れ、選曲のリストを見れば、いかなるスーパース
ターであっても、自作の提供に関して、いくら協力的であっても、選曲に関していえば、逡巡したに相違
ない、逡巡して当然と思われる。

 しかも、日本版では数曲、作品を変えている。それというのも、オリジナル・アルバムは、向こうのプ
ロデューサーの意志が選曲に現れており、日本でのヒット状況などから判断すると、同じアーティストの
作品であっても、日本のファンにとって、相応しいものばかりであったかどうか、少々疑問が無いでもな
い。その結果、アーティスト、オリジナルのレコードを発売したレコード会社側との交渉は、一層複雑、
錯綜したものとなり、紆余曲折、難航したに相違ないと理解出来る。アルバムの選曲、編集に携わったプ
ロデューサーたち関係者すべての努力と忍耐に対し、敬意を表するものである。

 お世辞抜きに、このアルバムの内容は、素晴らしい。なによりも、日本のファンに親しまれてきた70年
代、80年代の代表的なヒット曲が数多く選ばれているところを、特に高く評価したい。これらの曲は、間
違いなく、ミレニアム2000年を越え、新しい21世紀に伝えられ、さらに残り続けるに相応しい名曲の数々
である、そう確信するからである。

 最後に個人的なことを書かせて頂く。このコンピレイション・アルバムの発売で、我が3流D.J.は、大
いに救われる。このアルバムだけで、2時間番組が2本、簡単に出来上がる。加えて、ファンからリクエス
トを頂戴する度に、オリジナル・レコードを探し回るという手間、暇からも解放される。正に「ミレニア
ム」発売万歳!!である。

 洋楽ファンだけではなく、ポップ、ロックに少しでも関心をお持ちの方すべてに、座右の名盤、必聴の
名アルバムとして、ご推薦申し上げる。

―――― 福田 一郎(音楽評論家)

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