庵野秀明監督との初めての仕事である。「コイシイヒト」。誰にもいうことのなかった恋。
自分の中だけでその人を見つめていたキラキラした時間。そんな物語は、切なく暖かい。
ただ、その時間を経て今、それで良かったと思える自分になれている、新しい路を歩み
始めているという松たか子自身の姿勢が、どんな作品になったのだろうか。
今回は、オフィシャルサイト初。プロモーションビデオ、43秒公開です。撮影当日日記
と合わせて楽しんでください。(文/遠藤千香子)
-----------------------------------------------------------
めちゃくちゃ寒いある日。撮影準備を終え、ロケ場所に朝の6時入り。昨日のドラマの撮
影も深夜まで及んだため、かなりの疲労、寝不足に、ポーっとしている松。撮影の段取り
説明を庵野秀明監督から受け始めたところから、目がキリッとし始め、初めての庵野監督
の撮影現場を観察し始める。さぁ、撮影開始!といった頃、チラチーラ、白いものが降っ
てきた。
松:「あれ....ゴミ?!」
私:「......たぶん....」
松:「...いや、これは、ゴミじゃないよ!!」
私:「いや、! ゴミだ!」
松:「....そうだね。ゴミだね...υ」
スケジュール的に今日は雨でも強風でも撮影する事になっていたが、まさか雪が降って
くるとは。松は雪が降っても撮影する事は知っていながらも、あまりの寒さと疲れもあり、
雪を見て少し弱気になりそうなところで葛藤していたが、Shoot開始と同時に弱気どこ
ろか、集中力大発揮!! 朝の通勤ラッシュと重なり、まわりのたくさんの人だかりの中、
集中するのは大変だ...という心配をよそに、1カット1カットいろんな表情を見せてくれ
た。そして胸に抱えた子猫をあやしながら、夕方まで撮影は続いてた。
道ゆく人のいろんな会話が聞こえてきた。ドラマ「HERO」の撮影だと思う人も少なくな
かった。どう見たって、「HERO」の雨宮舞子(*松の演じる役)には見えないはず。春色
のコートだし、髪型だって違うし。私の後ろでは「あれぇ、雨宮、メガネ外してるじゃん。
やっぱりなぁ。俺は初めからそうだと思ってたよ。絶対メガネ外すって。当たったね!」
こんな具合だ。今日の役は違うのになぁと思いつつ、そんな会話を聞いたことを休憩中
にカメラいじりしていた松に伝えると「何!?HEROではまだメガネ掛けてるっつーの。」と
周りをキョロキョロ。と、そばで手を振っていた女の子2人組にカメラを向けて「カシャ
ッ!」。ピースしてニコニコした女の子2人組を中心に5〜6人の人達が松のフィルムには
写ってることだろう。
撮影があと少し、というところで松が「なんか胸のところ、冷たい....」と苦笑い。な
んと子猫が、松に抱かれながらオシッコしてしまったらしい。庵野監督から「着替える?」
といわれたが、「あと少しだからこのままで大丈夫」といった松は、日が暮れる前に撮
りきらなければならないことも気にしつつ、そのままの衣装で最後まで撮影を続け、無事
撮影終了。
その日の夜。松が着ていた衣装を持ち帰ったスタイリストさんよりメールが届いた。
「洗濯しようとしたら、子猫はウンチもしていたよ。松さんは知ってたのかな?」