BIOGRAPHY

KATHERINE JENKINS/キャサリン・ジェンキンス OBE(大英帝国四等勲士)

 ウェールズのスーパースター、メッゾ・ソプラノのキャサリン・ジェンキンスは23歳という若さでユニバーサル クラシックスと契約して以来、10枚のスタジオ・レコーディングによるアルバムをリリースしている、世界でもっとも多作なクラシカル・クロスオーヴァーの歌手である。学校の教師をしていた2003年、ウェストミンスター大聖堂で催されたヨハネ・パウロ2世のローマ教皇就任25年を記念する式典で歌い、突如として音楽シーンに登場し、その後彼女が大好きなウェールズのラグビー・チームのマスコットになり、重要な国際試合の前に国歌を歌い、またシドニー・オペラ・ハウスでデビュー公演を行なった。

 南ウェールズに生まれたキャサリンはニースのセント・デイヴィッド教会の聖歌隊員として声楽を学んだ。彼女の音楽への愛はウェールズの谷で育まれた。ここで彼女はいくつかの合唱団に加わる機会に恵まれ、ランゴレン国際音楽祭をはじめとした音楽イヴェントだけでなく、ウェールズ男声合唱団とも共演した。彼女はいつも率直に自身の性質はウェールズ生まれということ、そして彼女は愛情を込めて“The Taffia”と呼ぶ彼女のすばらしい家族から来ていると語っている。残念ながらキャサリンの父親、セルウィンは彼女が15歳の時にがんのために亡くなったが、それ以来父親の想い出が彼女の人生の推進力となってきた ―― すべてのアルバム、賞は父親に捧げられてきた。

 王立音楽アカデミーを卒業して数か月のうちにキャサリンは“イギリスのクラシック音楽の歴史の中でもっとも多くの録音を行なってきた”会社と契約し、2006年にリリースされたアルバム『プルミエール』はブリット賞の「ベスト・アルバム」をはじめイギリスの7つのクラシックCDナンバー・ワンを獲得した。チケット完売のツアーは続き、プラシド・ドミンゴ、アンドレア・ボチェッリ、ホセ・カレーラス、デイヴィッド・フォスター、デイム・キリ・テ・カナワ、ブリン・ターフェル、ローランド・ビリャソン、フアン・ディエゴ・フローレス、イル・ディーヴォとのコンサート、レコーディングが行なわれた。これまで世界中でコンサートを開いている彼女はロイヤル・ファミリーのお気に入りで、バッキンガム宮殿での女王戴冠コンサートはもちろん、女王戴冠60周年記念式典に招かれ、イギリス国歌《神よ女王を護りたまえ》を歌った。

 心地よい環境の外に出ることを恐れないキャサリンはITVの『ポップスター・トゥ・オペラスター』にメンターとして出演し、BBCの象徴的な番組『ドクター・フー』のクリスマス・スペシャルにアビゲイル役で出演し、『ヴィヴァ・ラ・ディーヴァ』でプリマ・バレリーナのダーシー・バッセルでタップ・ダンスを披露し、とりわけ2012年、アメリカのヒット・テレビ・ショー『ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ』で第2位に入った。

 彼女は“フォーセス・スウィートハート”(イギリス軍[主として空軍]に属するエンターテインメント好きな女性たちに与えられた呼び名)としても知られており、慈善活動は常にキャサリンにとって重要な役割を果たしている。2005年、ヨーロッパ戦勝60周年記念日にデイム・ヴェラ・リンと《ウィール・ミート・アゲイン(また逢いましょう)》を歌ったあと、彼女はイギリス軍財団(の理事となり、イラク、アフガニスタン、コソボ、キプロス、北アイルランドで活動する兵士たちを楽しませるために旅した。彼女はまたマクミランがんサポートの大使になり、2013年にロンドン・マラソンを走り、彼らのために3万ポンドを越えるお金を調達した。

 キャサリンと夫のアーティストで映画製作者のアンドリュー・レヴィスタは2015年に第1子が誕生することを公表した。その後しばらくの間キャサリンは家族と共に過ごし、2016年にはウィンザー城で開かれるエリザベス女王陛下の90歳の誕生日の催しで歌うだけでなく、ランゴレン音楽祭で《カルメン》のタイトル・ロールを歌った。

訳・註:長谷川勝英