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MONA インタビュー+ライヴ・レポート

2011.08.29 LIVE

  Special
Interview 13

米国のロックンロールの黄金時代を現代に蘇らせるナッシュビルの4人組、MONA。
今年7月、セルフタイトルのメジャー第1弾アルバムで日本デビューを飾ったばかりの彼らがサマーソニック2011に出演するため、早くも初来日を実現させた。
大阪、東京で熱演を繰り広げたバンドを代表して、ヴォーカル&ギターのニック・ブラウンにインタビュー。そのビッグマウスが英米のマスコミを賑わせている饒舌なフロントマンがロックンロールの理想主義者を大いに語った。

<インタビュー:山口智男>

今、ロック・シーンはMONAのようなバンドを必要としている!!

――まず確認したいんですけど、バンドがナッシュビルに移る前、まだオハイオ州のデイトンで活動していた頃、現在とは違うラインナップで『Perfect Fit』というアルバムをリリースしているそうですね?

「あぁ、そんなアルバム、リリースしてたかもね(笑)。ちゃんとしたレーベルからリリースしたわけではないけどね。バンドを始めた頃は 何から手をつけていいか自分でもわからなかったから、レーベルと契約できるまで、毎日1曲ずつ曲を作ろうと自分に課題を与えて、8,000曲とか 9,000曲とかレコーディングしたんだ。もちろん、中にはそれほどいいとは言えない曲もあるんだけど、ポール・マッカートニーは1,000曲作ったらそ こから1曲ヒットが出るって言ってたらしい。俺達には、そういう世に出ていない曲がいっぱいあるんだよ」

――その当時はメンバーにピアノがいたそうですね?

「いや、その頃はピアノを弾きながら歌ってたんだ。MONAってバンドはメンバーのラインナップがけっこう変わってるんだけど、メン バー間のケミストリーって大事だよね。俺達はマフィアみたいな存在なんだ。演奏がうまければ、誰でもMONAのメンバーになれるわけじゃない。やっぱり、 そこにケミストリーが感じられて、バンドに真剣に取り組むって誓いを立てなきゃダメなんだよ。『ケンカに負けたことがない』って俺の発言がずいぶん取り上 げられたけど、実際にケンカが強いってことを自慢したかったわけじゃない。何に対してもあきらめないガッツとかバンドの結束の強さとかを言いたかったんだ よ。俺達は金持ちになりたいとか有名になりたいとか思っているわけじゃない。そういうことを目標にしてるんだったら、他の音楽をやってるよ。それにして も、これまで世界中でインタビューを受けてきたけど、『Perfect Fit』のことを聞かれたのは、君を含め2人しかいなかったよ」

――現在のようなサウンドになったのは、今のラインナップが揃ってからなんですか?

「ヴァイブとか雰囲気とかは『Perfect Fit』の頃とそんなに変わってないと思うけどね。ただ、今のラインナップになって、やっと多くの人に聴かせてもいいと思えるものが作れるようになった よ。俺は完璧主義者だから自分が満足していないものを、みんなに聴かせたいとは思わない。そういうところは、とことんこだわるタイプなんだ。この間、リ リースした『MONA』ってアルバムは、誇りに思える作品だよ。アルバムの出来には満足しているから、売上枚数が1,000枚でも100枚でも俺達はどう でもいい。サウンドに関しては、いまだに鍋の中をかき混ぜている状態ではあるけどね。次のアルバムには、どんな要素を加えようか、ちょうど考えてるところ なんだけど、以前のようにピアノを使ってもいいかもね」

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――ピアノですか?つまり、ロックンロールにはこだわっていないってこと?

「おっと、ピアノはロックンロールの楽器だぜ。ジェリー・リー・ルイスやリトル・リチャードはピアノでロックンロールしてたじゃない か。もっとも、彼らのようにプレイできるミュージシャンは、そんなにいないけどね。でも、ロックンロールってアティテュードの問題じゃないかな。エレキギ ターを弾いてりゃロックかって言ったら、そうじゃない。ボブ・ディランはアコースティック・ギターを弾いてた時代からロックだったと俺は思うよ。最近、 ロックの定義って変だよな。全然、ロックンロールじゃないのにロックンロールだって言われてるバンドもいるしね。そんな連中よりもジョニー・キャッシュと か『乱暴者』のマーロン・ブランドのほうが断然、ロックだったと思うね」

――本国であるアメリカよりも先にイギリスで人気に火がついたことについては、どう思っていますか?

「別に何とも思ってないよ。だって、ジミ・ヘンドリックス、キラーズ、ストロークスもそうだっただろ?イギリスって熱しやすくて冷めや すいところがあるから、半年後にはボロクソ言われてるかもね(笑)。人は自分達の国にないものには幻想を抱くものなのさ。でも、何か気に入らないことがあ ると、あいつらどうせイギリス人じゃないしって言うに決まってるさ(笑)。別にどこで受けても俺達はかまわないし、逆に俺達の音楽はどこでだって共感して もらえる自信がある。リスナーと心のつながりが持てるなら、日本でしか受け入れられなくても全然かまわないよ」

――現在のアメリカのロック・シーンについては、どんな意見を持っているんですか?

「ブー」

――(笑)。

「ヒッポホップのほうがよっぽどロックンロール的だし、カニエ・ウェストやジェイ・Zのほうがロックのアティテュードを持ってるよね。 彼らには共感できるよ。さっきも言ったけど、ギターを持ってれば、ロックなのかって話だよ。たとえば、このポテトチップをディナーと言うことはできるけ ど、それでおなかいっぱいにはならないし、栄養も足りない。ロックンロールは現代の音楽のルーツだから、俺達は情熱を持って取り組んでるけど、今はロック のスタイルだけを真似た粗悪なヴァージョンが氾濫している。当然、そこに情熱なんて感じられない。悲しくなるよ。まぁ、だからこそ、そういう状況に中指を 突き立てるアティテュードを持った俺達が必要とされてるわけだけどね」

――じゃあ、共感できるバンドなんていませんか?

「キングス・オブ・レオンは好きだよ。コールドプレイはちょっとメロウすぎるかな。でも、好きだけどね。まぁ、いろいろなバンドと仲良 くしようとは思ってるよ。たいしていいとは思わないバンドでもね(笑)。今のバンドは音楽業界に媚びすぎてるよ。本当は音楽業界のほうが俺達に近づいてこ なきゃダメなんじゃないの。だって、俺達はファンのために音楽を作ってるわけでさ、音楽業界のために作っているわけじゃないんだぜ。確かに、CDのセール スが落ち込んで活動しづらいご時世だとは思うけど、俺はみんなからいろいろ学ぼうとしてるよ。カニエ・ウェストが持っている勇気は、今のロックにはないも のだし、エレクトロ・ミュージックにもおもしろいものがいっぱいある。そういう影響を、俺達なりに取り入れて、新しいものを作っていけたらいいね」

――最後に夢とか野望とかを聞かせてください。

「この間、キングス・オブ・レオンとアイルランドのスレイン城で、8万人の大観衆を相手に演奏したんだ。そういうライヴを、ヘッドライ ナーでやってみたいよ。クラッシュもパンク・バンドからスタートして、スタジアム級のロック・バンドになっただろ。ブリット・アワードとかグラミーとかも 獲ってみたい。世界中をツアーしてみたい。もっとも、アルバムをリリースして3ヶ月で、こうやって日本に来られるなんて恵まれてると思うから、1年後、今 のメンバーと仲良く活動できてたらそれだけで十分って気持ちもあるけどね。成功を求めることも大事だけど、やっぱり友情と自分達がやりたいことをやりつづ けるという信念を持ちつづけることが第一だと思う。それと、いい人間でいつづけることもね。大きな成功を収めても、朝起きたとき、自分の人生を後悔するな んてこと、俺はごめんだからね」

 

MONAライヴ(サマーソニック2011)レポート

けれんに頼らない演奏が真摯なバンドの姿勢をアピール

インタビューでは饒舌なニック・ブラウンもステージでは寡黙になる。この歌と、このサウンドがあれば、多くを語る必要はないということだろう。

おしゃれなビートで踊らせるわけでも、陽気にシンガロングを求めるわけでもないから、白いTシャツおよび黒いタンクトップにジーンズと いう、いかにもワーキング・クラス風のいでたちの彼らは多彩な顔ぶれが揃うフェスでは若干、地味に映ったかもしれない。しかし、30分ほどのセットなが ら、安易にけれんに頼らない演奏は、無口な南部の熱血漢というイメージとともに真摯なバンドの姿勢をしっかりとアピールしたにちがいない。

パンキッシュにたたみかける「リッスン・トゥ・ユア・ラヴ」のような曲ももちろん、いい。しかし、MONAの真骨頂はむしろ、じっくりと歌い上げる「ラインズ・イン・ザ・サンド」「リーン・イントゥ・ザ・フォール」のようなスロー・ナンバーにあるのでは。
4人がギターの轟音とともに、そこに込めた特大のエモーションは、きっと少なくない人の胸を打ったはず。ニックがマイク片手に熱唱した「シューティング・ザ・ムーン」からもじわじわと気迫が伝わってきた。

(山口智男)

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