BIOGRAPHY

2012_hoobastank _press『Fight Or Flight/ファイト・オア・フライト』

フーバスタンク(Hoobastank)の新作『Fight Or Flight/ファイト・オア・フライト』 は、20年近く活動を続けているこの多才なLAバンドにとって、音楽的にも精神的にも濃く激しい本作は極めて重要な新章の幕開けとなること間違いなしのア ルバムだ。フーバスタンクは、これまでモダン・ロック・チャートに君臨してきた彼ら。ジャンルの枠を越え、大ヒットとなった傑作『The Reason』をはじめ、これまでのアルバムで計1,000万枚のセールスを記録してきた。

彼ら一流の力強さと繊細さは、『Fight Or Flight』に収録された10数曲を通じ、どちらも顕著に表われている。だが今回彼らは初めて、パワフルだが同時に胸に沁みる「You Before Me」や「Magnolia」「Incomplete」、そして「No Destination (Fight or Flight)」といった曲で、そういった一見対極にある要素同士を見事に一体化させ、ドラマティックに融合させることに成功したと言えよう。他の曲では 雄弁かつ果敢に、自己を見つめようともがく人間の葛藤を描写。そこに含まれているのは、例えば「Slow Down」や「The Fallen」、そして新作からの第一弾シングル「This Is Gonna Hurt」といった、カタルシス的な曲だ。これらの楽曲から表出される感情は、ベーシストのジェシー・チャーランド(Jesse Charland)とドラマーのクリス・ヘッス(Chris Hesse)が肉付けしたバンド・サウンドで効果的に表現され、ギャヴィン・ブラウン(Gavin Brown:メトリック、ビリー・タレント)のプロデュースにより、息をのむほどの臨場感をもって作品化されている。

「これまでのアルバムと同じように聴こえる作品を、またもう1枚作ったりはしたくなかったんだ」と、ギタリストのダン・エストリン(Dan Estrin)は言う。ダンは1994年に、このバンドをダグと結成したオリジナル・メンバーだ。「前の3作は、ハワード・ベンソンと制作した。彼は素晴 らしいプロデューサーだよ。でも今回は、違うアイディアを持った他の人と制作すべき時がきたと思ったんだ。ギャヴィンには、俺達を惹きつける何かがあった んだよ」。そしてダグラスが言葉を継ぐ。「俺達は、新鮮な視点を持ったプロデューサーを求めていた。スタジオでの安全地帯から俺らを連れ出してくれるよう な人をね。その全ての基準に当てはまっていたのが、ギャヴィンだったんだ」

本作ではまずダンとジェシーが、それぞれの自宅スタジオで音楽的なアイディアを練り、それをレコーディング。それに応えて主にダグラスが手掛け た歌詞は、多元的な意味合いを持った内容となっている。例えば「This Is Goona Hurt」を取り上げてみよう。ナパーム弾の攻撃のように爆発炎上し、アグレッシヴなむき出しのメッセージを放つこの曲は、"長生きし過ぎた/何かが間 違っているという気持ちのままで"という冒頭の一節から、やがて炸裂する荒々しい曲調へと展開していく。

「歌詞は元々、部分的にできていて、その言い回しが自分で気にいってたんだ。でも感情移入はしていなかった」と回想するダグラス。「でも、ある 時バンド内で口論が起きてね。どんな家族でも時々あるようなことなんだけど、その時の経験から生まれた様々な感情が、この曲に吸収されていったんだ。それ でその後は、その言い回しが俺にとって本当の意味を持つようになった。今はこの曲は恋愛関係の終わりを描いているように聴こえるけど、そのエネルギーと怒 りは、メンバーと俺との関係から生じたものだったんだ」

そして、激しく内省的な「The Fallen」という曲。これには「どうすれば誰にも誰にも見つからないくらい遠くへ落ちて行けるのだろう」や「俺の野心は呪い/俺の一番良い所はそこでは隠され、最悪の部分が晒されるからだ」といった、人間心理を抉る一節がある。

「この曲は、自分達がくぐり抜けてきた浮き沈みと向き合うという意味において、俺自身と他のメンバーが経験してきた、ある感情をベースにしてい るんだ」と説明するダグラス。「キャリアの追求で頭がいっぱいになり、自分の私生活を危機に晒すこと。つまり、失ってしまった人間関係とか、逃してしまっ たチャンスとか。この曲には、そういった様々な感情が取り入れられている。特定の状況ではなく、ずっと続いている戦いの一部なんだけどね。俺という人間 は、このキャリアによって定義されるものなのか?っていう問い。その答えはこうさ ?? つまり音楽やキャリアは俺という人間の大きな部分を占めてはいるけど、俺の全てではない、ということ。そしてこの曲の直後に、そのことに気づくんだよ。実 際、俺がこの歌詞を書いたのは、チャーリー・シーンの暴言や暴走が世間で騒がれていた時だった。この曲で具体的に彼を題材にしているわけでは決してないん だけど、身近な例があったおかげで、他人に起きているそういったことを理解することができた。だからその意味では、俺がこの曲を書いていた時、それ (チャーリー・シーン事件)によってテーマが強化されたとは言えるね」

他の曲は、より個人的な当事者としての経験が元になっている。「You Before Me」は、骨太なロック的構造の中に、愛と献身の表現が組み込まれているナンバーだ。「この曲は、うちのカミさんが妊娠していた時に書いたんだ」と説明す るダグラス。「完成形ではよりロマンティックに聴こえるけど、その感情のトーンは、俺が元々念頭に置いていたテーマを表現したものになってる。これは、人 生において伴侶の存在がいかに大切かってことを総括した"声明"なんだ。"君にとって何もかもが確実に順調にいくように、俺は自分のことは二の次にす る"って意味でね。でもこれは、どんな種類の人間関係にも当てはまるよ。人の親になって痛感させられたんだ」

そして「Magnolia」もまた、芯の柔らかい、活気に満ちたアップテンポな曲だ。「これは正に文字通りの曲だよ」とダグラス。「マグノリア というのは、俺の娘の名前なんだ。最初の一節は、"発見する君を、感嘆しながら見守る俺"っていうんだけど、それは、世界を発見する赤ん坊として我が子を 見つめつつ、自分自身を思い出させる何かを彼女の中に見出せたらいいなと思ってる俺の姿なんだ。より一般的に言えば、娘を見守りつつ、その瞬間がどれほど あっと言う間で貴いものかを実感している父親だね」。この曲の冒頭とブリッジで繰り返されるリズミカルなシューシューという音は、マグノリアがまだ母親の お腹の中にいた時に録音した超音波の心音だ。実に感動的な手法である。「曲に合わせるために、テンポを変えたりはしなかった」と、ダグが指摘する。「その ままでピッタリはまったんだ。これは俺がマギーのために奏でている曲のひとつで、冒頭のギターを耳にした瞬間、彼女は踊り始めるんだよ。多分潜在意識下 で、自分が母親のお腹の中にいた時のことを思い出すんじゃないかな」

かつて90年代にそうしていたのと同様に、バンドの運命の手綱を自分達の手で握りながら、一周して元の位置に戻ってきた、ダグラスとダンと仲間 達。あの頃、高校を卒業したばかりの彼らは、同じように向こう見ずな仲間達や、インキュバスやリンキン・パークといった、若く多才ないわゆるハードロッ ク・バンド勢の一角を占めるために、地元ウエストバレーを飛び出したのだった。そして彼らは再び今、自分達との勝負に挑んでいる。そしてフーバスタンクに とって最も完成度の高い、そして最も表現力豊かなアルバムを引っ提げて、その勝負に応じているのだ。

「長いこと、俺達はこの旅路を歩んできたわけだけどさ」とダグラス。「最初にバンドを始めた時に俺達を駆り立てていたもの、それに対する理解が 深まったよ。俺達は音楽を演奏し、仲間と一緒に過ごすことを楽しみ、結果がどうなろうとやってみる。白紙の状態みたいなものさ。でも悪い意味じゃなくて ?? 全くその逆だよ。俺達はもう、他人を満足させようとしたりはしない。潜在意識のレベルでさえもね。あるがままの自分でいることに、俺達は充分満足を感じて る。どんな人間なのかは自分達で分かってるし、自分達が何をやってるのかも分かってる。そこにはある程度の安らぎがあるんだ」

 

 
 
 

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